ユーザーストーリーマッピング発売になりました + 在庫の探し方

監訳をつとめましたジェフパットンの本「ユーザーストーリーマッピング」が発売になりました。

ユーザーストーリーマッピング

ユーザーストーリーマッピング

ありがたいことに、注文可能になった土曜日のうちにAmazon楽天ブックスいずれも在庫がなくなったようです。まだ書店さんには在庫があるところがあるようですので、手元で調べた限りで恐縮ですが、リンクをのせておきますね。

*1:前日の営業終了時の在庫表示だそうです

歩行レーンをあけない、エスカレーターの新しい乗り方

かねてからエスカレーターの片側を歩行レーンとしてあけとくのはスループット悪いしもったいないなー、と思っていたのですが、安全性にも問題があり、かつ、エレベーター装置の耐久性にもよくないということで、ついに片側空けないキャンペーンが行われる模様です。

ということで、私はどんどん右側に立っていきたいのですが、一方で知らない人と横に並ぶのはちょっと嫌だという方は、ぜひ段違いで乗ったらいいんじゃないかと思います。図のようになります。まあ、混んでるときだけでいいと思うんですけど。

モバイルバッテリーを買いました

ベトナム旅行中に永瀬さんから、昨夜の飲み会で和田さんから、それぞれバッテリーを補給していただく事件がありまして、観念してモバイルバッテリーを購入することにしました。

3月にiPhone6を購入してから、ビデオを録画したり、撮った写真を編集したりで、モバイルへの依存度と電源使用量が上がっている一方で、PCへの依存度が下がって、持ち歩かない機会が増えたのが原因かなぁ、と思っております。

XP祭り2015

今年もXP祭りを行います。
基調講演はXP普及のきっかけとなった原典第二版を再翻訳されている角征典さん。

テーマは昨年の「俺の」に引き続いて、巻き込んだり巻き込まれたり、真似したり一緒にやってみたり、という体験談を集めたいという意図を込めて「俺も!!」としました。

現在、セッション募集中です。奮ってご応募くださいませ。
http://kokucheese.com/s/event/index/284379/

◆募集期間:4/11〜7/29 (1次募集6/8〆切、2次募集7/29〆切)

◆募集内容

発表時間:15分、45分、90分のいずれか (ご相談に応じます)
発表者:個人でもグループでもOK
形 式:講演でもワークショップでもパネルディスカッションでも何でもOK
テーマ:直接的にでも間接的にでもITに関与していればOK
Agile系:XP、Scrum、リーン、ペアプロ、TDD、など
Agileに限定しない:ビジネス、マネジメント、テスト品質、UX、DevOps、など
技術系:最新技術、今さら聞けない入門系、など
その他:MindMap、ジャグリング、コミュニケーション、など
検討中の場合、スタッフが相談に応じます。
使用したい設備や備品は、事前にお申し出ください。

楽しさを崩さずにどこまでいけるか

人間関係というものは、楽しくやれてれば、とりあえずそれでいいわけで、仕事というのは、それを崩さずに、どこまで効率的に成果を出せるかの勝負なんだと思っている。そんな自分に気がついたが、それが正解かどうかは全くわからない。

たぶん、大学院の頃に自分達より楽しそうにみえる研究室が成果出してたのが原体験の一つだと思う。もちろん学生の能力や人を集めたり、育てるプロセスも違ったのだろう。ビシビシやる方が育つパターンや状況だってきっとある。

私は一生懸命やってる人たちに「そのやり方じゃダメだ」というのは得意じゃない、というかほとんどできない。だから、とりあえず困っていることってなんなんですかね、という話をする。そこをきっかけにみんなで話してもらう。スキルも状況も様々だから解決法も様々だ。うまいチームもあれば、なかなかうまくまとまらないチームもある。

アジャイルを指導している人たちの中では、「まずふりかえりをやったらいい」という意見は多い。たぶんそうだと思う。でも、なんらかの問題への解決策としてチームで出てきたのでないなら、やっぱりなかなか根付きにくいと思う。

研修で人々を見ていると、みんなで意見を出してまとめる、という進め方のコツがちょっとだけ足りないんじゃないだろうか、という気がすることがある。新しい意見を出す、ということと、まとめる、ということは割と背反する行為なので、自分から意見を出すことに、成功体験を持っている人が意外と少ないのかもしれない。

アジャイルでは、よくカードを使う。トランプのカードというより、もうちょっと大きくて自分で書き込める「インデックスカード(情報カード)」というものだ。日本だと付箋を使うことの方が多いだろう。これは、アリスターコバーン氏によるとXP(エクストリームプログラミング)の人たちが持ち込んだ手法のようだ。

「こんにちは、私は xx です」というやり取りが一周した後、車座に座って、お互いをしばらく凝視した後、誰かが言った。「我々は、アジェンダ(今日話す議題)をどうやって作ればいいんだろう?」すると、誰かがアジェンダ項目をインデックスカードに書くことを提案した。XPの人たちは研修用にインデックスカードを持ち歩いていたのですぐに取り出して書き始め、書き終わったものを中央の床に放り込んだ。

とにかくたくさん書いてもらってから、みんなでまとめていく。進め方にも一定の工夫が必要だ。考えすぎちゃってなかなか書けない人にどうアプローチするかとか、同じことを何度もいう人にどう気持ちよく収まってもらうかとか、シーンとしちゃうと気分が良くないのでどうやってあっためるかとか。一定の時間だけ集中して進めるのも大事な要素だ。

ここでも楽しさは重要で、そうでなければ、問題と向き合ったり、自分が考える正しいことを言う、という行為に不必要なプレッシャーがかかってしまう。恐怖は最大の敵だ。

著者を招いた Fearless Change ワークショップ(通訳付き) を行ないます。

3月11日に Fearless Change の著者を招いたワークショップを行ないます。著者の Mary Lynn Manns 先生と 前書きをいただいている井庭崇先生になぜいまFearless Change が必要なのか、そして、組織変革の実践的なノウハウをお話しいただきます。

Fearless Change 組織に新しいアイデアを広げるためのワークショップ

http://bit.ly/mannsiba

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change とは

本書は企業などの組織に「新しいアイデア」を普及させたいとお考えの方のために、先人のベストプラクティスを集めたものです。

本書が想定している読者は、自ら組織になにかを起こしたいと考えている人々です。現代社会においては、どの組織も絶え間ない変化にさらされています。組織の運営に明示的な責任を持つ経営層は、イノベーションを起こしていかないといけない、と常に考えているでしょう。しかし、実際のイノベーション(新しいアイデアが)組織内に根付いたり、組織文化の一部として活用され、良い結果を生み出していくためには、その他の人々が自発的に動いていく必要があります。

経営陣が「よし!みんな今すぐイノベーションに飛び込め!」と言っても、そのとおりになるとは期待できない。(P.5)

組織の将来を担うに違いない(実際に数年後に振り返ってみるとそうであったといえる)、そんな新しいアイデアに触れた時、あなたならどうしますか。がむしゃらになって勉強するでしょうか、飲み屋で同僚と語り合うでしょうか、プレゼン資料を作って上司に提案するでしょうか、経営陣にメールや懇親会で突撃するでしょうか。様々な戦術が思いつくかもしれませんが、いったん、頭を冷やして、Fearless Change にまとめられたパターンを眺めてみるのもよいかもしれません。まずどのような人々を、どのような方法で、どういう役割を期待して巻き込むか、そこには先人の知恵に基づく戦術があります。

イノベーション決定プロセスを素早く通り抜ける人もいるが、大多数はもっとゆっくりと動き、一部の人々は他の誰かに強要されないと変化を受け入れない。人はいったいどのように変化を受け入れ、または拒絶するのか、そのばらつきを理解しておけば、個々の人々のスタイルを受け止めやすくなるし、それにあわせて戦略を調整することもできるだろう。(P.8)

もちろん相手と話してみなければ相手がどのように考えているかは掴めません。反対してくるような相手と話すとなると気が重くなります。もちろん、すべての人を同時に相手にすることはできませんが、一方で、難しい相手を無視してばかりでは、普及が頭打ちになりがちです。

懐疑的な人々が、イノベーションの課題を発見する機会を提供してくれることがある。多くの人が、衝突とは避けるべき非効率であり時間の浪費だと考えるだろうが、私たちは衝突を機会と捉えることを推奨したい。衝突によって破壊が起こるとは限らない。(P.11)

実は、懐疑的な人々が提供してくれる情報は、極めて正直なものであることが多かったりします。仲間内だと無視してしまうような懸念なども、口にしてくれるのは、懐疑的な人々です。

変化への抵抗のほとんどは、自分自身のおかれた環境や運命を制御したいという欲求から生まれる。 (P.11)

そうした苦言や注文をアドバイスに変え、一歩一歩アイデアを普及させるための作戦に反映しましょう。もちろん手助けしてくれる人への感謝や協力のお願いを忘れずに。あなたのゴールは決して、新しいアイデアのための予算をとることでも、誰かに強制的に使わせることでも、すぐに組織を飛び出すことでも、飲み屋で同僚と愚痴をこぼすことでもないはずです。未来を担うアイデアが実際に組織で活用され、望ましい成果を生み出してれるよう、一歩一歩進みましょう。

新しいアイデアを普及させる道は、ゆるやかに学びながら前進するプロセスだ。その途中には、後退もあれば、小さな成功もあるだろう。私たちは、まずゆっくりと始めることを推奨する。これから長い時間と忍耐が必要になることは、あらかじめ覚悟しておこう。あなた自身、組織文化、そして組織にいる人々を理解しなければ、あなたの旅は成功しない。 (P.11-12)

3年後の未来を変えるには

組織内で最初にイノベーションを理解をした人々が、その先どのように動くことができるのかが重要です。仲間を巻き込み、着実に実験を積み重ね、活かし方を学び、多くの人が気付く前に必要な準備を終えることができるか?多くの人が振り向くまで、自らの情熱を維持し、待ち続けることができるか?

組織がイノベーティブであるかどうかを左右するのは、そういった人々が起こす小さな行動の積み重ねであり、それによって起こる数々の偶然が、どのように活かされていくかに依存していると考えています。

それはとても計測しがたいものですが、だからといって、戦術がないわけでもありません。

3年かかるかもしれません。5年かかるかもしれません。しかし、いま自分の周りでそれができていないのは3年前に動かなかった自分や、他の誰かの行動の結果であるかもしれないのです。3年前の行動は変えられませんが、今の行動を変えることで、3年後を変えることはできるのではないでしょうか。

偶然を活かすには、準備しておくに越したことはありません。少しだけ、意図的に行動してみるのはいかがでしょうか。

隣の達人との出会い

ワークショップには、他にもFearless Change に興味を持たれていたり、すでに活用されている方々が集まります。お互いに情報を交換し、悩みを聞いてもらい、一歩ずつ前に進む糧にしていただければ幸いです。

価格は4万円とちょっと高いかもしれませんが、通訳や渡航費をすべてこちらの収益でまかなうことにさせていただいておりますので、ご協力いただければ幸いです。

ロッシェル・カップ "日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?"

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

日本で仕事されている経営コンサルタントの人の本。日本の人事部門や採用/人事/教育戦略で割と上手くいってないところをくくり出し、また米国を中心として取り組みの事例やメソッドなどを挙げている。

エンゲージメントの低さ

日本企業ではエンゲージメントが低い、という点が第1章、この本最初の指摘だ。

社員のエンゲージメントとは、社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながりを表現するものである。 (P.35)

これは、20世紀の日本企業では当たり前だった会社への忠誠心とかプライドといったものが、多くの会社でなくなってしまっている、ということだと思われる。調査機関などの10のレポートをあげて、欧米やアジアに対して日本企業のエンゲージメントレベル、ないしエンゲージメントの高い社員の比率の低さが報告されている、とする。

それはなぜだろうか、という疑問を中心に本書は進む。
さっと付箋をつけたところを抜き書きしておく。

日本企業では典型的に社員は自分で仕事の内容を選ぶことができない (P.52)

1980年代の過剰が招いた従業員数の肥大化の後始末として、日本企業の人事部はその後20年もの間、コスト管理に焦点をあて、社員のやる気を増大させるポジティブなアプローチには無関心でいる。 (P.54)

日本人マネジャーの多くがマネジメントにあたって「新人のミス」を繰り返し、社員を怒鳴りつけたり間違いを大勢の前で指摘したりといった、他国では疑問視されているアプローチを取っている。 (P.55)

Netflixの人事管理制度

続く第2章では社員のモチベーションをどうやって高めるか、という話に移る。
Netflixのアプローチが紹介されている。

とても有名なスライドセットが公開されているそうだ。これかなぁ。
http://www.slideshare.net/reed2001/culture-1798664

スライドにある「重視している価値」は以下のとおり。本書にも抄訳が掲載されている。

  • Judgement : 賢い判断をする。根本問題分析、ただ症状を治すだけでない判断。現在あなたはなにで、なにでないか、どうしようとしているかを戦略的に考える。今できていることと今後改善できそうなことを分けて考える
  • Communication: すぐ対処するのではなく、よく聞いてより良い理解に。簡潔に端的に書く・話す。他の人の状況の独自性や、あなたと意見の合わない点を尊重する。ストレスのある状況下では、落ち着いて冷静に。
  • Impact: 驚くほど多くの重要な仕事をこなす。一貫して成果をデモすることで同僚はあなたを信頼できる。プロセスではなく結果に集中する。行動重視、分析麻痺を避ける。
  • Curiosity: 素早く積極的に学ぶ。戦略/マーケット/顧客/サプライヤを理解する。ビジネス/技術/エンターテインメントに関する幅広い知識を持つ。専門外のことにも効果的に貢献する
  • Innovation: 課題を捉え直し、難しい問題を実践的に解決する。当たり前だと思われていることがあれば、その仮定を明らかにし、よりよい方法を提案する。使いやすさを実現するアイデアを出す。複雑さを最小限にし、単純化するための時間をとって、スピードを維持する。
  • Courage: ザワッとしそうなことでも、自分の意見を述べる。苦渋することなしに、難しい決断をする。賢くリスクをとる。我々の価値観と矛盾した行動に疑問を持つ。
  • Passion: 卓越したいと強く望み、他の人に刺激を与える。Netflixの成功を真剣に考える。成功を祝う。粘り強く。
  • Honesty: 率直に。他の人と意見が合わない時にも政治的にならない。同僚について話すときは、本人に直接言えることだけを口にする。失敗はすぐに認める。
  • Selflessness: あなたやあなたのグループより、Netflix全体にとってベストなことを探す。エゴなく最良のアイデアを探す。同僚を助けるための時間を作る。オープンに積極的に情報を公開する。


本書に戻ると、このあとNetflixの文化や施策を紹介している。スライドの引き続きの部分が中心なので、日本語訳するかわりに参照するといいかもしれない。

面白い(アメリカ的だなぁ)と思ったのは以下の解雇のくだり。

Netflixはすべての職務で最も優れた人材を望んでおり、そのための採用・能力開発・解雇を「賢明に」実行している。ネットフリックスでマネジャーが使用する「キーパーテスト」とは、「自分の部下が競合会社の類似の職に就くために辞職するといってきたと仮定して、ネットフィリックスに留まるようにその部下を強く説得するかどうか」というテストである。マネジャーが自分自身にこの質問をし、回答が「ノー」、すなわち部下を説得しないと考える場合、その社員は「寛大な解雇手当を渡して即刻解雇すべきである。そうすればその職務をより優れた人材で埋めることができるから」というのがその論理である。(P.77)

社員を信頼してイノベーティブなことをやろうという企業なので、常にできる人を維持して任せないといけないという切迫感を感じる。

責任能力のある人材は自由を与えられることでさらに才能を伸ばし、またその自由に価する」というのがネットフリックスの考え方である。「成功を持続させる革新的な人材を惹きつけ育てる」ためには、会社の成長に合わせて社員の自由を制限するのではなく増加すべきだというのがその方策である。(P.80)

プロセスを増やして安定させようという圧力に徹底的に争う姿勢を持つ。そうしないと、成功は安定するかもしれないが、どんどん時代遅れになっていく。

日本の人事制度や雇用関係の問題

筆者の鋭い指摘を、いくつか抜き書きしておく。

人事異動は当然という固定観念によって、日本企業が多くの問題点を見落としているというのが私の見解だ。 (P.106)

定期的に顧客や同僚との関係がリセットされたり、遠方に異動したり、というのは非効率だという指摘である。

マイクロマネジメントは、アメリカで非常に効果があるとされているアプローチである「エンパワーメント」の対極にあるマネジメントスタイルである。(P.172)

この前後でマイクロマネジメント、ホウレンソウ、プレイングマネージャーの問題について述べている。

日本人がポジティブフィードバックが苦手な理由は様々である。(P.192)

暗黙の了解の文化や、頑張ってあたりまえ、取って付けたような褒め言葉になるんじゃないか、というところから、日本人マネージャーは褒めるのが得意でない、とのことだ。

大切なのは、自分を「X企業で働く社員」として考えることをやめ、自分のスキル、能力、将来性をその企業の中だけで考えないことである。自立した個人として、自分の人的資本を活用するため、自分で選んだ進路を進むことを考える必要がある。
これは、企業に忠実であるのをやめるということではない。また、仕事に力をいれないということでもない。それは、自分と自分の興味・関心を企業と企業の興味・関心から分離して考えることを指している。 (P.283)

このあたりは、じっくりと考えていく必要があるのだろう。

さらっと読んだだけだが、発見の多い本だった。