セクショナリズムを組織改編で廃せるか?

NHKの組織改編のニュースで気になった会長の発言があります。

NHK「最後の良心」に異常事態 「ETV特集」「ハートネットTV」の制作部署が解体の危機

今回の組織改編の目的は、縦割りのセクショナリズムを廃し、効率的で柔軟な人材配置を行うこと。

こういう話よくありそうなんですけど、そもそもセクショナリズムを組織改編や辞令で廃すことはできない感じがします。誰にとってどう問題だったのか、その辺話してきましたかね?

上司の意見を聞かない部署がセクショナリズムに見えてる、みたいな話も想像される発言です。私の経験では、その人たちに任せる方がいい成果が出そうで、いらないのは上司の方だったというパターンもありそうかなと。気に食わないのはわかるのですが、トップともなれば、そこを任せておくくらいの器量が求められる気がします。

有機的に結合した組織を再現するのは大変難しいというか無理なので、簡単にベリベリっと剥がそうとすると壊れちゃうのではないかと思います。ファンクションに対して合目的ではない場合に、まずはどうやったら課題を解決できるのか、メンバーで議論してみるのが大事かなって思いました。マネジメントは人々に対して、誠実であってほしいと願います。その向こう側には顧客がいるのです(トップの後ろではなく)。

この件に関しては十分な情報を持っていないので、本当のところはわかりませんが、こんなことが頭によぎったのでした。

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ふりかえりの成功条件

ふりかえりの成否って成果物では測れないと思っています。事前に固定の目標があって、それを達成しないと気が済まないマインドセットが、しばしば現実を見る眼を曇らせて、みんなをしんどくさせる気がします。目標が間違ってる可能性については考えてますか?やってない人が考えた目標だったりしないですか?(それは単なる呪いっぽい)

現状をちゃんと把握したい

スプリントレトロスペクティブで「意見が出にくい」「改善案がでない」「改善案が実行されてない」「課題が残り続ける」という課題をよく聞く気がするのですが、たぶんこれら全部問題なくて。極論ですが、そういう現状がちゃんと把握できてるということが大事なんじゃないかと。思ったより仕事が進んでないならそれを確認したいし、はじめに思った計画が間違ってただけかもしれないです。っていうかサボってない自覚があるなら、確実に見積り・計画の間違いか、実力の見誤りに過ぎない。

これまで1スプリント以上一緒に仕事してきて、たぶんなんか出来てる上に、ちゃんと話せてるじゃん。

っていうのはその場で確認可能な事実です。チームはそのベースの上に次を考えたいんです。これって次のプランニングの重要なインプットになると思います。

ふりかえりだけを考えすぎない

アジャイルの適用の第一歩として、ふりかえりから始めるパターンは多いと思いますが、ふりかえりだけを取り出して、うまくいったかどうかを考えすぎないほうがいいかなと思います。

目の前の課題・顧客やエンドユーザーへの貢献ができるかどうかが本流なので、その成否はスプリントレビューで確認したいところです。その上で未来を変えられるのはプロダクトバックログの整備です。

雰囲気こそ情報

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写真はデブサミでのFun! Done! Learn! の風景です。二日間のカンファレンスで得た学びと自信を感じます。書かれた付箋より、そういう雰囲気こそが情報って感じがしました。

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雰囲気を、そこにいない誰かに報告するの難しいんですけど、そこにいれば分かるもの。ふりかえりは誰かへの報告のためのミーティングではないので、そこにいる人が分ったなら十分なんだと思います。現地現物とはまさにこのこと。

How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜【委託】 - 達人出版会

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

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マインドセット「やればできる! 」の研究

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作るものの選び方

ずっと直して使えたらいいのに

5年でも10年でも、そこにいる人で直しながら使えるような仕組みをいつも考えています。いらなくなることはあるにせよ。言われることだけやるのは論外。対処療法でよくするだけじゃダメ。目の前の要望にだけ対応してるだけじゃ足りない。

そのためには、最先端だけじゃダメだし、古臭くてもダメだし、儲からなきゃ続かないし、使いやすくなきゃ使ってもらえないし、運用できないような品質じゃあ疲れちゃうし、人づくりもチームづくりも周りとの関係づくりも大事。信頼されるだけでなく、信頼できる相手を選ばなきゃ続きません。

始めるものを選ぶ

いつだって始めるときは短い期間だけど、続くときは数年続きます。辛いままで3年も5年もやるなんて、きっと自分が自分を許せなくて。だから、いつも安定を重視するし、隙作ったらちょっとづつなんか試します。

始める、起こす、ってとっても大変なので、すぐにやめるようなことでは、やらないに限ります。打率はそんな高められないので、ちゃんと実験して、解像度の高い理解に基づく、抽象度の高いゴールに基づいて、前に進んだり悩んだり絶望したり感謝したりしたいです。

プロジェクト開始初期の課題の洗い出し

アジャイルにやりたいプロジェクト立ち上げ(プロダクトの立ち上げともいう)を支援するタイミングがちょくちょくあるんですけど、まあやったことがないので課題がたくさんあるわけです。1時間2時間のミーティングで出るわ出るわ。「あー、こんなにやることあるんですね。今見つかってよかったですね。」「あー、この辺の要素が状況をだいぶ難しくしてますね。とりあえずほっとけないかなー。」「ここはやばいのでまずここやっつけることだけ考えたいっすね」みたいな。

いま悩むべき、必要な混乱か?

「これはいま悩むべき、必要な混乱か?」っていつも考えてる気がします。私が混乱させてるわけではなく、状況が難しいだけなんで、見えるようにしつつ、どっから順に片付けるか決めてくしかない感じ。「問題がたくさんある(に違いない)」から「問題が数えたら32個ある」にして、「うち3個は緊急なのでさっと対処しないと、他は一旦おいといても死なない」に持ってって、「いま解決できてよかった。次のこれとこれどうする?」って感じになれるとよさそうです。んで、ずっとちょっとずつ実験して学んでいく状況に慣れたいところ。

スプリントとかプロダクトバックログとかが、スクラムが用意している仕組みはだいたいそのためにあるんですよね。自分でやってると気づきにくいので、ちょいお手伝いしてあげるとすっきりすることも多いみたいです。

走り出すと先が見えてくる

その辺まででだいたい腹落ちして自分で走れるようになるんですけど、ラディカルに上手くなれるようになるには実験を仕掛ける余裕作りと巧妙さを身につける必要があって、アウトカムやインパクト、平たくいうと儲かるかどうかに目が行くのはその次くらいってことが多そう。「この仕事の周りにはこんないろいろなことがあるんだー」って分ってくると面白くなってきますよね。

順番に解決できるように

よく練られたゲームのチュートリアルは、一個一個課題を解決していくと自然とメンタルモデルが強化されて、慣れて、うまくなるようにできてて、そういう風に仕事も始められたらいいなぁ、なんて思います。

富士山が見えたら

車窓から見えた富士山だと思える山の写真がこれなんですが、状況これと似てて。

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富士山登りたいけど、だいたい山の上が見えてないんで、実際のところ富士山かどうかも分ってない。地図からみるとたぶん富士山。分っている状況はこれこれで、知るべきものはこの辺っぽい。進むのも止まるのも自由。ただ乗ってる新幹線が止まるのは名古屋か新横浜だったり。こだまに乗り換えてここまで来るか、やめとこうか。でもそんなんじゃ憧れは止められねぇんだ... というような感じを受け入れていけるとよさそうです。なんのこっちゃ。

ユーザーストーリーマッピング

ユーザーストーリーマッピング

 

結局富士山登る人はほんのひと握り。

もっと頑張らなくて済むように

RSGTの来年の会場である御茶ノ水ソラシティさんの見学をしました。そのあとスタッフ打ち上げ。

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RSGTのスタッフの合言葉は「頑張らない」です。カンファレンスの運営って、お祭りなので頑張っちゃう、おもてなしなので張り切っちゃう、非日常なので情熱をぶつける...いつも以上にパワーが出てしまうものだったりします。

スタッフが燃え尽きないカンファレンス

ですが、終わった後で「疲れたなー。もういいや」って思った人は、翌年の開催の時にはスタッフをやってくれない可能性が高くなると思うんです。毎回ボランティア集めに奔走したり、業務命令みたいな形でお願いするのは、実行委員の負荷も上がってしまって...。

なので私はどのカンファレンスの運営でも「スタッフが燃え尽きない」ことを第一に目指しています。誰も燃え尽きなかったとは言えませんけど、スタッフの負荷が上がるようなタスクや要件を増やさないこと、あるいはやめてしまうことをまじめに話し合います。

頑張ったら褒められたくなる

頑張っちゃうと、認められたり、褒めてほしくなるんですけど、周りも人間だから、都合よく適時にそんなのは集まらなかったりする(都合よく提供してくれる人の意図は確認した方がいいかも) 。なので、実はあんまし頑張らない方がよくて。頑張った後に、十分褒められないと燃え尽きてしまいがちです。強がりは言えるけど、疲れは蓄積します。

同じ成果を出すなら、より頑張りの少ない方法を考えられれば、燃え尽きる可能性を下げて、継続的に安定した出力ができる可能性が高まるはず。(カイゼンの目指すところは、淡々と普通にやってるのにすごいって言われることだと思うんです。そうすれば、継続的に仕事が来るし、成果も出る。)

報われなかった時のダメージ

やりがいを感じている時って、生理的にはたぶん興奮系の脳内麻薬が出てる状態で、ハイになって頑張りすぎてしまいやすい状態でもあります。そういう効果はほどほどに使う方が体によさそうな感じがします。タイムボックス決めてささっとやっつけるくらいがちょうどいいバランスかなと思います。報われない頑張りが1日分なら一晩寝ればリセットできるけど、1週間頑張ったのは、なかなかのダメージになるんじゃないかと。

不得意なところを頑張るとしんどい

不得意なところをやる時は、すごく頑張る必要があって、気分が乗れば頑張っちゃうんですけど、そもそもスキルや経験(特に成功体験)が不足してるので成果が出にい面も否めません。もちろん続けてやってればだんだん上手くなっていくでしょうけど、どこまで我慢すればスキルが付いてきて得意な状態になれるのか、わからないまま努力するのはしんどいわけです。

しんどいと、他人に対しても厳しくなってしまったり。そうするともっと成果が出なくなっていくので、自発的に休まないと、どんどん状況が悪くなるような時もあります(よね?)。

効果的な休みかたを見つけたい

効果的な休み方は人それぞれ。上手な休み方を実験しながら学んでいくのも、人生では大事な投資なんだろうと思います。上手いこと自分をハックして、できそうなことを燃え尽きない程度にやっていける均衡のとれたポイントを、社会や自分の周りの環境の中で見つけていく作業は、なかなか大変で、知恵がいるものなんでしょう。

というわけで来年はもっと頑張りません!と心を新たに、今年のRSGTを終わります。まだ事務作業が残ってるけど。ありがとうございました。

 

3月の Jim Coplien さんの認定スクラム研修をお手伝いします (東京・大阪)

3月のCopeさんの研修をまたまたお手伝いしまーす。もう長らく一緒にやってきてアウンの呼吸もいいところなんですけど、と言いつついつも改善すべきところが多く学ばせてもらっています。

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今回は久しぶりに大阪でもやりますので、ぜひご検討ください!

 

Copeさんの著書で翻訳されてるのはこちらです!

組織パターン (Object Oriented SELECTION)

組織パターン (Object Oriented SELECTION)

 

 

 

スクラムマスターは保育園の先生に似ている

こんなご相談をいただきまして。

スクラムマスターは支援者だとは思っているんですが言葉が難しく…提案や促し?ではなく「指示」なってしまう場面があり上手く出来なくて

うーん、まあそんなに焦らず、刺激を与えたらその反応を、じっくり観察していきましょう。ってなアドバイスをしまして。

スクラムマスターっていうのは、人を変えるというか、理解を促したり、姿勢を矯正していくような仕事なので、「30m走りなさい」って言えるPOとはちょっと違ってですね。人間という複雑なものを複数束ねたチームというのを扱うので、とにかく刺激->反応を見るを繰り返すしかなかったりすると思います。

 なので、「こうしてほしい」に「はいやります!」っていう変化は単純、もしくはうわべだけなので、もうちょっと本質的な深い変化を観察する必要があるかなと思います。

問題 (ミーティングが長い) -> 対処 (短くしたほうがいい) ... ではなく、どの程度長いとチームにとってちょうどよく/害がある、っていうのを、一個一個実験して、みんなで納得して理解して、それで初めて、生活習慣に組み込まれていくんですよね。

そういう日々の生活に寄り添って、ずっと一緒に走りながら、いっこいっこ促していくのがスクラムマスターの姿勢なんじゃないかなと思います。なので、まずは観察を。
勉強しない子をどうやって机に向かわせるか、みたいな仕事です。保育園の先生 ...

 ここまで書いて。ああ保育園の先生っていってもな、わかりにくいよな、なんかいい教習ビデオないかな ... と検索したら、このビデオが引っかかりまして。


保育の仕事とは

みてみると、まあなんというかスクラムマスターを表しすぎてて、びっくりしました。牧羊犬(Sheep Dog)とか言ったりするんですけど、もっと直接的に誰もが見たことがあるメタファがこんなところに。アジャイルコーチやスクラム経験者のみなさんはとにかく見てみてください。

いくつか気になったところをメモ。いや全般的に全てがスクラムマスターすぎます。

  • 朝会からはじまる
  • 遊びの見守り
  • お昼寝中に保育士が集まって課題確認 (スクラムオブスクラムズ)
  • 「発達を見据えた保育士の援助が必要」
  • 「できなかったことがひとつひとつできるようになるのが、子供にとっての喜びですし、私たち保育士にとっても喜びになっています」
  • 「見ただけではわからないこともたくさんあると思いますので、見学することもお勧めします」

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P.S. もうちょっとスクラムに詳しくない人でもわかるように書けよ...なんですけど、わからない方はトレーニングなどもございます。(宣伝すみません)

www.jp.agilergo.com