Agile Japan 2010 に行ってきました。

今年はワークショップのオファーも頂いたので、樽本さんにひっついてスピーカー待遇で参加させて頂きました。いやー、申し訳ないです。

  • ボランティアスタッフの方々の精力的、献身的なお働きに感動いたしました。
    • 特に、実行委員の小井戸さんはじめ、受付担当のきたむらさん、ナガタさん、あまぴょんさん、ひらたさん、2階担当の斉藤良太さん、などなど、お忙しいところ、遊んで頂いた方に感謝いたします(お邪魔してすみません)。
    • あと、運営会社のピークワンの方々も勤勉に頑張っていらっしゃいました。本当にありがとうございました。おつかれさまでした。
  • 実行委員であり、一緒にAgileUXセッションを作り上げて頂いた、マナスリンク野口さんに2階の入り口という最高の居場所を確保して頂きましたので、存分に EMZero AgileUX特集号を配ることができました。
  • 13年ぶりに野中先生にお会いできましたし(思い起こせば前回も「本読んでますぅ」という感じのミーハーでした)、Alan Shallowayさんにもご挨拶できました。平鍋さん、すばらしいキャスティングありがとうございました。
  • 小井戸さんのおかげで、野中さん、Alanさん、平鍋さんと夢の4ショット写真を野口さんに取って頂きました。なんていう果報者でしょうか。生きててよかった。野口さんに「かわぐちさんやばいですよ。運使いすぎじゃないですか?」といわれ、あやうく厄払いに記事書かされそうになったくらいです(Agile UCD で野口メソッドのバージョンが上がっているので注意!)。
  • あと、いろんな人にはじめてお会いすることができました。そのへんはおいおい。

野中先生のセッションのメモ

  • コンセプト: ナレッジソサエティ, knowledge creation company
  • 2年ほど前になくなったP.F.ドラッカーの妻のドリスはまだ存命
  • 「客観から主観は生まれない」
  • トヨタ(奥田さん、渡辺さん)いわく、トヨタの強みは、暗黙値と形式値のスパイラルアップ
  • SECIモデル
    • 共同化(S)
    • 表出化(E)
    • 連結化(C)
    • 内面化(I)
  • ソフトウェア開発は、まさに knowledge creation「非常に意味がある」
  • SECI の高速化
  • contextual judgement
  • 1.よい目的を作る能力、2.場をタイムリーに作る能力、3.ありのまま現実を直感する能力(現場にいく)、4.直感の本質を観念に変換する能力(現実のただ中で考える)、5.現実を実現する能力(政治力も重要)、6.実践値を共有する能力(共有しよう)
  • 時間がないので 2.場をタイムリーに作る能力 を中心に
  • 「金銭はいつも手段」 絶えず完成(真善美)をめざす職人道。 NHKプロフェッショナル仕事の流儀ではさいごに「プロフェッショナルとは何か?」と聞きますよね。
  • 場というのは、ナレッジを生み出す、創発させる。時空間。場が必要。BaはBarと読まれて、意外と理解された。Social Capital。相互主観性(Inter subjectionability)。主観は人それぞれ、人それぞれであるうちは知は発生しない。
  • 個人とチームが両立する大きな知、これがもっとも創発的な状態。相互の主観性を確立することが究極の目的。しかし簡単ではない。従来のマネジメントの理論は、環境が組織を決める。しかし、組織は見えない。見えるのは属している人。その創造性を触発するのは具体的な場。
  • 組織図も権力構造なので、間接的には人をコントロールすることになるが、常に存在するのは"場"。一人一人のデベロッパは組織に属している。人に組織が内在している。常に顧客のところにいっていれば観察できる。この状態が最も人と組織が両立する状態。しかもefficient
  • 自由と規律の両立が可能な組織は、プロジェクトチーム。具体的にはホンダ。「ワイガヤ」というしくみ。3日間いきいきとした時空間を共有。一人一人がこの殻をやぶって思いを共有し、前人未到のアイデアが出る。
  • ホンダのプロジェクトリーダーはLPL(Large Project Leader)しかし人事権がない。彼の持つビジョンでまとめる
  • オフサイトにいく。温泉、まず飲んでくれと。まず飲むと、メンバーは何かしないと申し訳ないという気になる。そうだプロジェクトがある。一日目は個と個のぶつかり合い。喧嘩が起こる、逃げ場がない。会社でやると都合が悪いと逃げる。全人的に真正面からふれあわなければならない場を作る
  • そのうち上辺の形式知は枯れる。そのうち、なぜこの会社にいるのか、とか生き方の問題になる。すると身体で共振する。飲んで温泉はいる。そのうち仲間意識がでてくる。2日目は考え方の違いを認め合い、3日目に人それぞれの主観を超えて、もっと大きな深みから、共同主観性、もっと大きなコンセプトが生まれる。
  • 論理分析で罵倒し合うのは、相手の真理を認めていない。それでは知性の綜合ができない。寄り高次の次元で、自己をふりかえることなく、無心無我の相互主義が生まれるということを目指す。これがまさにナレッジクリエーションソサエティ。身体が必要。だから温泉が必要。
  • 身体性でのふれあいをしすぎると、セクハラになる。神経科学の共同化、ミラーニューロンの発見。相手が動けば同じように動く。そうすると相手の考えていることがわかる、という発見があった。共同化がすごく重要。
  • サンパトリアーノ。イタリアの麻薬公正施設。4年で構成する。間身体性。麻薬患者はファミリーから孤立してしまっている。我々はコミュニティだ。人間として I - You の関係を作る。
  • 自己超越的、間身体性
  • デッドラインが近づいてるからしょうがねー、刺身だ。スクラム
  • 対象に棲み込む。本田宗一郎。一緒に汗をかく。
    • ハンドルから伝わるエンジンの音を聞いている。
  • 賢慮を伝承する。 ミドルアップダウン。誰もわかんないんだけどね。直感的にはわかるでしょ、実践知リーダーシップ
  • もっと簡単にいえば、みなさんデベロッパー。知的体育会系になろう。同時によく考えよう。Contemporation in action。動きの中で考える。
  • 感想
    • 80年代の new new product development game とかの事例は、強力な創業者からのトップダウンで意思決定者が固定されていたのではないか? と疑っています。それがなかったらどうしたらいいかなぁ。それが現代の課題。ではないかと。

野中先生と Alan Shalloway さんのパネル

  • 平鍋さん(以下、平鍋): 会場からの質問を中心に
  • 野中先生(以下、野中): 本田宗一郎は開発プロジェクトリーダーなんです。彼は現場に入り、対象に棲み込む。全身でその場に立つ。ライダーの内側の視点から世界を見る。手でエンジン音を聞く。相手の視点に立ちながら仮説を作る。これが非常に重要。
  • 野中: 現場に行く意味。現実は2つある。realityとactuality。現場で分析するのがreality。相手の中に入り、一緒に汗をかき、身をもって経験し、そこから仮説を得るのがactuality。分析するだけではダメ。
  • 野中: ニーズは見える化できても、ウォンツは見える化できない。だから、現場に棲み込む。ぱーっといったときにすぐに反応できるか?反応できない人にはもう何も言わない。開発チームが現場に行くことが非常に重要。
  • 野中: 評価制度の話。三井物産はとても元気。以前は100%成績定量評価。いろんな短期決戦型の話がでてきた。部下を育成するとか、はでてこない。現在は定性80%、定量20%に変えてしまった。ビジョンを書く。そうするとトップもそれに対して、オレならこうやると言うアイデアが出る。
  • 野中: どうして売り上げに変わらなかったか、という視点で反省材料に20% 。新しいオリジナルコンセプトなんてそう簡単にはでないので、成績評価は重要。ミドルマネージャの判断で、評価システムに反映することはできる。
  • Alan Shallowayさん(以下、Alan): 個人個人の働きがチームにどうよく影響しているかを測れないか?例えばファシリテータ。彼がいなければチームにならない。だからそのポイントが重要。
  • 野中: 「よい仕事」というコンセプト。重要なプロジェクトをやるときに、それぞれのメンバーが、何に取っていいのかを、車座になって、青臭い議論をする。それがGoodの判断。みんなで価値観を共有する。

大規模アジャイル (途中参加です。すみません)

  • IBM玉川さん(以下、玉川): 日本のサービス部門におけるサービス事例。ユーザー企業からも「アジャイルで」という引き合いが増えている。「変化に対応したい。」
  • 情報システム総研森下さん(以下、森下):「理解して、できると思っている人と、理解していない人の差がどんどん広がっていく。その違いは何か。初期値の違いではないか。大規模アジャイルは総合力=施主力x設計力x施工力。創発的組織」
  • 情報システム総研児玉さん(以下、児玉)「サラリーマンの施主は失敗しなければいい。本当に会社をよくしたいと思っている施主はそうじゃない。施主の教育も重要。設計力を上げても、施主から意味が分からない、といわれてしまう。施主はプロダクトオーナーとはちょっと違う。思いを持っている人。言葉に思い入れが」
  • 児玉:「なぜアジャイルでやったか。安いから。外部にウォーターフォールで発注したら、過去の経験上、設計のバグが開発に持ち込まれるのでリスクを見越して2倍3倍の見積もりになる。逆に、コストの範囲内でやりますよ、というふうにアジャイルをすすめる」
  • 児玉:「内製化したい。人が育つ。とそそのかす。内製化しないとビジネスの変化に追随できない。リスクは施主側が取る必要がある。作り手側もバイネームでエキスパートを集める、くらいのことをする」
  • 児玉:「要求を出した側が間違えたんだから、その責任は施主側にある、とすればいい。そこまで開発側に責任を負わせてはいけない。」
  • 玉川:「重要な機能を先に作る、という点でアジャイルのROIは高いはずだが、大規模になって受託開発になってしまうと、ROIを出しづらいという難しさがある」
  • 児玉:「契約については、ある監査法人とやっているけど、はじめてのケースなのでやりながら考えましょう、と監査側もアジャイルで」
  • 玉川: 「大規模開発と、日本特有の大人数開発はわけたほうがいい」
  • 倉貫さん(会場):「請負の場合は、リスクバッファを金額で積む。景気が良かったころは、ケツを持ってくれるのでそれでよかった。リスクを双方で持てば安くなるのはあたりまえ。アジャイルの場合は準委任しかないとおもう。しかし、準委任にしたら売り上げ規模が下がってしまう。」
  • 児玉:「そこはいいポイント。アジャイルで発注してくれた会社は、大きな会社に発注するつもりがない。大企業は高いと思っている。だからちいさなうちに発注してくれている。」
  • 玉川: 「請負でやりたいひとたちと、準委任でやりたい人たちの間にはホワイトスペースがあり、いまは食い合わないと思っている。大企業はお互いの責任範囲を明確にしなければ行けないので、お互いに無理を言おうとするので、WinWinにならない可能性もあるので難しさもある」
  • 玉川: 「しかし、丸投げしたいお客さんもある。それはそれでいい。それが現状。」 羽生田:「破綻確率が高いプロジェクトは保険として高くなる。それはエンジニアの集団ではなく保険業。SIっていう言い方を辞めてしまって細分化した職分をすれば」
  • 児玉:「SOAはナンセンス。アプリケーションフレームワークと言っているのはアプリケーションに対してAPIを提供しているだけです。情報処理学会の情報システムと社会環境研究会で発表しているので見てください。(あとメモとれず) ファウラーのアカウントパターンでつくっている」
  • 玉川:「チームリーダーのチームは世界中を回って顔を合わせるようにしている。エリックガンマは来週来る」
  • 児玉:「ソフトウェア構成管理やバグ管理がは大変重要になる。統合テストはテスト専門チームで。ツールは何でもいいんだな、という感じがしている」

羽生田さんのクロージング

  • 羽生田さん(以下、羽生田): 身体知、実践値の学習の場としてのアジャイルジャパン。その背景にはソフトウェア工学がある。1970年代 構造化の時代 80年代 管理手法とCASE 90年代オブジェクト指向 00年代プロダクトラインの時代
  • 羽生田: プロダクトとプロセスへの興味が10年ごとに交代してきた。オブジェクト指向はデータ構造と手続きのセットをカプセル化した。同じようにアジャイルはプロセスだけどワークプロダクトにちゃんとフォーカスしようよと。オブジェクト指向アジャイルも2つの波が交差融合する場所
  • 羽生田: Ed yordon "ソフトウェア工学で最も大切な10の考え" 平鍋訳
  • 羽生田: 再発明のコストが高い。特にソフトウェア工学をきちんと勉強せずに業界に入ってしまう人が多い状況では。ほとんどのキーとなるソフトウェア工学のアイデアは新しいものではない。
  • 羽生田: 生田: グラミン銀行ユヌス総裁 バングラディシュ。マイクロクレジット。困った人が困ったときに少額の融資を提供。携帯でそういう仕組みを作って終わりではなく、毎週グラミン銀行に通ってもらって、ビジネスのやり方等、教育をセットで。社会をいい方に。
  • 羽生田: OLPC。100ドルPC。これなんかもアジアアフリカの貧しい国の子供たちに安価にPCを提供。ITが社会に貢献するきっかけを与える。長期的に貧困層の数は30億を超えているので社会/経済を変える力をもっている。
  • 羽生田: NII佐藤一郎教授。排出権をICタグで追跡できるように。ICタグに権利も記述して実態に合わせて売買できるようにしようとしている。画期的なこと。
  • 羽生田: トムデマルコがIEEE Software でソフトウェアメトリクス偏重に懺悔する記事。ソフトウェア開発には2つのタイプ。100万ドルのコストで110万ドルの価値を目指すものと、5000万ドル以上の価値を目指すもの
  • 羽生田: 野中先生の「質的な評価の方が大事」とつながる。
  • 羽生田: ITを取り巻く環境の激変。人間ができることだけをやればよい、というふうになってきた。ITはガスや水道と同じ。我々がどう使いこなして、その先のアイデアにつなげていくかが、テャレンジングな課題
  • 羽生田: 文明論的変化。かなり大きな端境期に生きているのではないか。おもしろい。
  • 羽生田: クラウドコンピューティングへのカプセル化、モバイル/ユビキタス/サービス指向、チーム開発がアジャイルに、チームを超えた組織レベルのアジャイル(コラボ型ワークスタイル) 少しずつ変わっていく
  • 羽生田: 佐藤一郎コンピュータサイエンスは終わった」基盤環境を持ってその上で研究できるような大企業にいない限りは、本格的なクラウドコンピューティングコンピュータサイエンス的に研究することはできない。一方で、このユータサイエンスの成果を社会に適用していく分野は必要
  • 羽生田: ユーザの現場の問題を解決するのにどうやってITを使っていくか。まだまだ無尽蔵にある。
  • 羽生田: よいソフトウェアを作るには?テストレビュー実施、プロセス改善、プロジェクトマネージメント。but アーキテクチャが意識されてない、レビュやテストのしやすさは設計と関係、上流工程での要求・分析・実装が実践されていない
  • 羽生田: 社会の中でのエコシステムとしての妥当性
  • 羽生田: ITエンジニアの活動局面と必要スキル。ユーザに聞き耳を立てる覚悟が開発者に必要。開発者にも...(メモとれす) 両者にスパイラルが必要
  • 羽生田: 富士塚。富士山まで行けない人のための富士山のモデル。実際の地形と似せて、概念的に相似形を保つように作られている。こっから、宮本常一の話。現地現物で民俗学を作っていった人。日本中の全ての村、島に行った。
  • 羽生田: 宮本常一の世間知。山口県の島。大阪にでる子に送った、父からの十か条。これがすごい。
  • 羽生田: 新しいところに行ったら高いところにでなさい、サンプリングで理解しなさい。まさに身体知を表している。
  • 羽生田: ソフトウェア工学の教えを、山に登って考え直してみよう
  • 羽生田: ソフトウェア工学の歴史は、問題解決の歴史としてみることができる。
  • 羽生田: アジャイル開発の源流
  • 羽生田: 上流から下流までの全体感を取り戻せ。組織としての仕組みと戦略が必要。3つの基本原則。「急がBa回せ!」
  • 羽生田: 東野高校のキャンパス。アレグザンダーの仕事。父兄、地元の人、参加の元でパターンを書く
  • 羽生田: ユースケースユースケースマップ。UMLだけじゃなくて、パタンランゲージに対応するような記述方法を確立しなければならない。 アランさんの話のプロダクトポートフォリオ
  • 羽生田: アジャイルプロセスとプロダクトラインエンジニアリングをもっと詰めて研究する必要があるのではないかと思う
  • 羽生田: アーキテクチャとプロセスが融合していく必要がある。とくにスクラムの場合はプロセスのところしかいわれていない。XPだと大規模に適用できるかはまだ。そういうことを通してアジャイルな場、活性化した組織づくりが必要。参加型でプロセスをまわしていく必要がある。
  • 羽生田: エンゲストロームの活動理論。社会の中で人間が道具を使いながら活動するということはどういうことかを表したダイアグラム。今後社会はどうなっていくべきか、を表してみた。
  • 羽生田: 以前の車はボンネットあけて直すことができた。今はできない。利用者が想像力を使って修理できる。アナロジーをつかって理解できるようなソフトウェアを。そういうことをやる1つのプロセスがアジャイル。今後の理想的なITの社会とは?
  • 羽生田: 社内に取っての問題解決をアジャイル的に解決していけるbaをつくる。今後の1つの可能性の1つとして。
  • 生田: IBMミルズ氏。優秀なソフトウェアエンジニアの基本資質。スタミナ/国語能力/ユーモア。よくよく考えると、エンジニアだけでなく、豊かな社会の一般市民はもっているべき資質。
  • 羽生田: アリストテレス。ロゴス(論理性)、パトス(感性)、エートス(信頼)
  • 羽生田: 論語超訳。みんなでわいわい楽しいな。海外の人と交流して。みんなで楽しく進めるのなら、金や役職なんかに興味ないもんね。


以上!!おなかいっぱい!