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Agile 2011 Conference : ジェフ・パットン氏によるアジャイルな要件定義手法「ユーザーストーリーマップ」のチュートリアル

先月、 Agile 2011 Conference の報告のシリーズEnterpriseZine で連載させていただきました。この日記では Agile UX 番外編として2つほど紹介してみます。

UXを用いた製品の要件定義に関するセッションを2つ紹介

アジャイル開発では、顧客や利用者との頻繁なコミュニケーションを重視します。実際に動くソフトウェアやプロトタイプをなるべく早い段階で提供し、手遅れになる前に見当違いを修正し、潜在的なニーズを少しでも汲み取ることを目指します

Agile 2011 Conferenceでは、利用者を観察し彼らとの共同作業を学ぶための場として「User Experience&Interaction Design(ユーザエクスペリエンス&インタラクションデザイン)」と「Working with Customers(顧客との協同作業)」の2つのトラックが用意され、実践的ワークショップが行われました。本記事では「アジャイルUX(ユーザエクスペリエンス)」に関連するセッションを2つ紹介していきます。

注目の要件定義手法「ユーザーストーリーマップ」のチュートリアル

最初に紹介するのは、Jeff Patton氏による「ユーザーストーリーマップ作り」のセッション。毎年人気を博する同氏の講演に対して、運営側は100名以上を収容できる会場を用意しましたが、入り口まで立ち見客があふれる状態となり、相変わらずの関心の高さが伺えました。セッションの概要には以下のように書かれています。

「ユーザーストーリーマップ」は自分たちが構築しているプロダクトに関する自分たちの理解を手助けしてくれる。製品をイテレーティブ(反復的)かつインクリメンタル(漸進的)に開発できるように、小さな部品に分割する。製品の出荷に必要な最小限の機能(MVP: Minimal Viable Product)を効果的に計画することができる。(アジャイルで重要な)機能のスライスについて、全体最適を目指すことができる。このチュートリアルでは、参加者自身のストーリーマップを素早く協調的に作り、それを通じて、ユーザーストーリーマップ作りの基本を学んでいく。さまざまな企業での実例や体験談も紹介していく。事例の企業では、バックログ構築や計画やデリバリー(出荷/リリース)をシンプルに行えるように工夫している。



ユーザーストーリーとは

「この中で、ストーリーを使っている人は?」

そんな質問から切り出したPatton氏。この問いには8割ほどの参加者が挙手しました。

「では、ストーリーを使うにあたって、困ったことがない人は?」

こちらは数人の手が挙がった程度。ユーザーストーリー技法が多くの現場に浸透してはいるものの、その使い方にはそれぞれ悩みや疑問を抱えていることが推測されます。

ユーザーストーリーとは、もともとXP(エクストリーム・プログラミング)として提案された手法のひとつで、利用者の要件を記述するための記述形式を指します。ストーリカードとよばれるインデックスカードに以下の要領で利用者や関係者のニーズを記述します。

○○○として( As ○○○ )
○○○をしたい( I want ○○○ )
その結果、○○○になる。( So that ○○○ )

ポイントは、提供したい機能単位ではなく利用者の求める効用単位で記述しているところ。ユーザエクスペリエンスの視点では、宣言の主体となる「As」の部分に、具体的な利用者を記入すると、より活き活きとしたイメージを認識できるようになります。

システムで実現したいことは逐一、ストーリーカードに書き出します。結果として出来上がったストーリーカードの束は、ひとつのシステムで実現したいアクションを網羅したものになります。つまり、これから構築するシステムの全体像を表す地図になるわけです。

セッションでは、まずストーリーカードを書くという課題が出されました。テーマは「映画館」。それぞれの体験をもとに映画館が実現すべきストーリーを黙々と書き出していきました。

次に、書き出したカードを並べ替えます。縦軸にタスクの粒度、横軸には時間軸を置いてカードを並べ、まとまりごとにラベルを付けます。今回は映画を観に行く体験なので「チケット発券」といったものがラベルになります。作業を進めていくと利用者視点のワークフローが出来上がります。

90分のセッションでは、包括的なストーリーマップを洗い出すには時間が足りないので、料理番組のようにあらかじめ用意したストーリーマップが使われました。

最後に初回リリースの線を引きます。MVP (Minimal Viable Product 最小の出荷可能なプロダクト) を明確にし、製品開発のムダを避けます。

明日から使いたくなる実践テクニック

Jeff Patton 氏のワークショップは、すぐに手を動かしながら実践できる手法を扱っているため、明日からでもすぐ使いたくって「うずうず」してしまいました。今回は自分の体験から思い起こしたユーザーストーリーを、グループで整理することで複数の人間のユーザー体験をまとめていきました。同じように、製品のターゲットとなる人々のユーザー体験を調べていくことで、より効果的な製品設計ができるのだな、ということがわかります。決して独りよがりではなく、無味無臭の大量のアンケート結果だけでもない、きわめて現実的な方法ではないかと思います。


Stories are about the future we're building.
(ストーリーとは、私たちが作ろうとしている未来を表すものだ。)

Jeff Patton氏は10月に来日予定

Jeff Patton氏は10月に来日して、カンファレンスとセミナーに登壇されます。来日に向けて、ビデオメッセージをいただきました。