ポジティブふりかえりマッピング

アジャイルバンクーバー2010で行われた、リンダ・ライジングさんのポジティブレトロスペクティブと、ジェフ・パットンさんのユーザーストーリーマッピングを活用したふりかえりについてのブログエントリの翻訳です(著者のSteve Rogalskyさんの許可をいただきました)。翻訳にあたっては高橋陽太郎(@poohsunny)さんにレビューのご協力をいただきました。ありがとうございました。
 
ポジティブな点を述べることで「行った事実」にフォーカスできることと(課題を言うとwishが増える)、インデックスカードで整理する手法を組み合わせているところがよいなと思いました。
 
原文はこちら
Agile Retrospectives - a Rising Patton Fusion
 

アジャイル・レトロスペクティブ - リンダ・ライジングとジェフ・パットンの融合

 
アジャイルバンクーバー2010の最後のセッションは、リンダ・ライジング(Linda Rising)さんがアジャイルバンクーバーのオーガナイザーたちとカンファレンスのレトロスペクティブ(ふりかえり)をする....ところをみんなで見る...というユニークな機会でした。彼女がどうファシリテートするのかを見るのは面白く、私はいくつかのテクニックを持ち帰って試せるよう、メモしました。翌日のチュートリアルでは、ジェフ・パットン(Jeff Patton)さんが彼のストーリーマッピング手法を組み合わせ、興味深いミニ・レトロスペクティブを指導しました。二人の手法の融合はどんな結果になるでしょう?
 
注意:このレトロスペクティブは、インデックスカードを活用して、机の上でアイデアを簡単に並べ替えたりグループ化します。壁とポストイット使う場合でも、少し工夫すれば大丈夫です。
 

ステップ1 - トーンを設定する:

Norm Kerth*1の最優先指令(prime directive)*2 を思い出します。(リンダはこれを暗誦してました):

どんな道をだどったにせよ、当時の知識・技術・能力・利用可能なリソース・状況の中で、みんなができる限り最高の仕事をしたはずです。それを心から信じます。

これを復唱したら、レトロスペクティブの間、この声明を支持し、非難なし(No Blame)ルールに同意するかどうかを、チームメンバー一人一人に尋ねます。簡単に「はい」と合意を示してもらえばOKです。「口に出して合意する」ことは、ふりかえりのトーンを設定するのに役立つ、簡単で影響力のある戦略、ないしパターンです。
 

ステップ2 - レトロスペクティブのフレーミング

ファシリテーターは、あなたの会社の廊下で同僚に会ったというストーリーを話します。同僚からの「あなたはプロジェクト[X]にいますよね。プロジェクトはどうでしたか?」という質問に対して、それぞれのメンバーが「...という点が素晴らしかったです。」と答えます。大声で応える代わりに、各人に3枚ずつインデックスカードを渡し、黙って答えを書いてもらいます。こうすることで、人々の性格に関係なく各人から意見が出るようになり、回答があなたの影響を受けてしまうのも避けられます。
 
各人がそれぞれ3枚のカードを記入し終えたら、各カードを読み上げながらテーブルに置いていきます。すべてのカードがテーブルに置かれたら、各テーブルで黙って答えをグループ化しました。内容が近いカードは近い場所に動かし、内容が異なるカードは離します。 パットン氏によると、この作業を黙々とやるのは、そのほうが(話しながらやるよりも) 作業が迅速になり、多面的に整理されるからです。私たちの作業でも、その通りになりました。
 
「よいこと」がグループ化されたところで、別の色のインデックスカードを使って、各グループの要約をつけます。例えば、「一緒にうまく作業できた」「ボブが私の仕事に協力してくれた」「チームはストーリーを完成させるために団結した」といったストーリーを「素晴らしいチームワーク」と要約しました。
 

ステップ3 - ほかの方法:

先の声明で、「直近のプロジェクトやイテレーションはよいものだった」と合意しているので、もし全く同じ方法でもう一度やったなら、かならず完璧なプロジェクトになるはずだ、という点をチームに思い起こしてもらいます。でも実際は、他にもやり方があるものです。そこで「ほかの方法」の案を考え、一人3枚以上のインデックスカードを黙って書くようチームに依頼します。非難や間違いの指摘、問題解決の試みなどは書かないようにします。このステップでは、ほかの方法にはどんなものがあるか、見つけたいのです。
 
全員がカードを完成させたら、テーブルに置きます。そしてまた、みんなで黙ってグループ化し、別の色のインデックスカードに要約を記入します。ファシリテーターは、チームがカードを読んだり要約している間、問題解決や非難をしないよう、繰り返し指摘する必要があるかもしれません。
 

ステップ4 - 投票:

次のステップでは、チームが「ほかの方法」リストのどの項目が最も重要かについて合意します。公平で公正な投票のために、各メンバーには、上位3つの項目をインデックスカードに記入してもらい、ファシリテーターに集めます。ファシリテーターは投票結果を集計し、要約カードに投票数を記録します。ドット投票を使用することもできますが、私はドット投票があまりに簡単に「攻略される」ことと、最初の投票が後で投票する人々に影響することを発見しました(グループ思考)。
 

ステップ5 - 実験:

上位一位ないし二位の投票項目について、グループを分けて議論します。1項目につき1つのグループに分かれます。グループごとに、次のイテレーションで試せそうな小さな実験や調整を議論します。頻繁にレトロスペクティブを実施している場合、問題解決や根本原因分析をする必要はありません。目標は、問題の解決に向けた小さな実験について、すばやく同意することです。根本原因分析の専門家には怒られるかもしれませんが、問題解決に深い洞察力を使う代わりに、チームで何ができるかを実験してください。この部分は最大10分または15分のタイムボックスに収めます。
 
次に行う実験を決めたあとで、各テーブルの誰かにアイデアを発表してもらいます。出てきたアイデアイテレーションバックログに入れ、(個人ではなく)チームとしてイテレーション中に実験をし、完了することをコミットします。
 
 

 

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

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ユーザーストーリーマッピング

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Project Retrospectives: A Handbook for Team Reviews (Dorset House eBooks)

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*1:アジャイルのレトロスペクティブの源流になった "Project Retrospectives"という本の著者

*2:もともと第一原則と訳していたのですが、prime directiveはスタートレックの用語ということなので、そちらの訳 "最優先指令" に合わせます。安井力さん情報ありがとうございます。