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エマニュエル ダーマン: 物理学者、ウォール街を往く。—クオンツへの転進

GWに衝動買いした本。

物理学者から金融界に転じた、デリバティブとかの理論で有名な人の自伝です。

じわじわ読み進めてやっと最後まで読みました。面白かったです。

Amazon.co.jp: 物理学者、ウォール街を往く。—クオンツへの転進: 本: エマニュエル ダーマン,Emanuel Derman,森谷 博之,長坂 陽子,船見 侑生


著者の ダーマン さんは、ブラック=ショールズ モデルの Dr. ブラック と ゴールドマンサックスで一緒に働いた人で、Black-Darman-Toy モデルの共同開発者。ということはこの本で知りましたが(^^;)。

70年代に物理学でPh.Dをとって、ポスドクをこなしてから、教授職はあきらめて、AT&Tベル研へ。ここでコンピュータプログラミングと出会い、ゴールドマンサックスで、オプションモデル研究者 兼 ツール/モデル開発者 兼 プログラマ になっていきます。(金融界に入るまでに、半分近くの章が費やされているので、結構やきもきしました。すごく先端の理論物理学でがんばっていたそうで、それはそれでたのしく読めます。アインシュタインとか量子力学とか超ひも理論とか、そんな単語や説明がでてきて。)

中盤から、やっと Dr.ブラック が登場してきます。金融の人はそこまで我慢して読むか、飛ばして、8章から読んでもいいかもしれません。

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コンピュータ系の人には、ギークとスーツのギャップに悩むあたりが共感を呼ぶかもしれません(15章 p.386)。

1994年後半の手痛い金利上昇によって、トレーダー部門からセールス部門へと力関係がシフトした。セールス部門では、新しいモデルとトレーディング・システムへの投資によってさらならビジネスが開花すると考えることは困難である。リサーチはコストとみなされるようになった。セールス部門には道楽と必要性を区別するスキルが不十分であったにもかかわらず、投資案件の決済は、「ビジネス・サイド」である彼らによって、投資のメリットと必要性の観点から決済されるようになっていった。承認には専門知識が必要であるにもかかわらず、セールス部門の人々は、専門知識を学ぶ時間もなかったし興味も持っていなかった。それに代わって、打ち合わせが行われるようになった。

短期的に見れば、それは単なる時間の無駄使いであり、打ち合わせに時間が費やされている間に、投資機会は失われた。

そして次の p.387 で、金じゃねーよ、と独白するあたりがまた共感を呼びそう。

上司の多くが把握できない根本的な事実があった。我々は誰かの承認を得るためにモデルやシステムを構築しているわけではなく、問題が我々を惹き付けるがゆえに、モデルやシステムの構築に取り組んだのである。ある問題が発見されると、そこから必要性を嗅ぎ取り、それを吸収し、それに取り組んだ。全員が夢中になった。(中略) 情熱と誇り、感謝され、認められ、評価される喜びのために一生懸命に働いた。もちろんお金のためにも働いていたのだが、それだけで満足していたわけではなかった。

私も、確かにそのとーり、と共感すること大、ながら、「もっとビジネスライクに働かないと損するし、技術者の地位も上がらないぞ」と大人な意見を言われれば、そうかもな、とも思うのですが・・・。

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追記1: 日本語訳がよくできていて、読みやすいと思います。原著を読んでないので正確性はチェックできませんが、原著は読まなくてもいや、という気になりました。