ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

リーマンショックの少し後に出た本なのですが、当時書店で立ち読みしたままで、なんとなくちょうどいまくらいの時期に読むとよさそうかなということで、読みました。 

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

 

うまくいった企業がなぜ衰退するのか

2009年に原著が出ているのですが、ちょうどリーマンショック後の信用収縮が進行しているあたりのようで、序章からその話が出てきます。この研究は5年ほどやっていたそうなので、2009年になったのは偶然で、サブプライムローン問題で破綻したファニーメイについては付録に記載した、とのこと。

本書では素晴らしい業績をあげた企業が、衰退していく例を詳細に追ったものです。前著のBuilt to LastかGood to Greatで調査した、偉大な企業にまで成長した企業群のうち、その後、衰退して凡庸になった企業が対象で、基本的には株価でスクリーニングしているようです。付録に詳細な条件が書いてあります。条件にあった企業と時期は以下の通り(付録1より引用)。

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スクリーニングののち、各企業のニュースなどの資料を時系列に追っていく手法で調査したそうです。「後で語る」系のものは後知恵バイアスがかかるので除外し、衰退前に出ている情報やインタビューを調査したようです。

ちなみに本書は(Wikipediaによると)、Built to Last、Good to Great、公共セクター版 に続く本ということになるみたいです。日本語訳は、ビジョナリーカンパニー、2、3という名前になってます。

見えてきた衰退の5段階

第二章で説明されるのが、分析によってわかってきた、衰退企業に共通する5段階です。

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発売当初、私の目に刺さってきたのは「第4段階: 一発逆転策の追求」です。業績がやばくなると、むしろ大きな勝負に出がちなんだろうなぁ、と思ったのを覚えています。衰退時期に行われる一発逆転策の例として、カリスマ性のある経営者を呼んできたり、大きな買収などで新規事業に進出したり、ということがあげられています。本業が十分に儲からなくなった時に、本業に集中するのではなく、違うことをやろうとする。しかし、顧客から信頼を集めている本業がそんなに急に悪くなることはなく、むしろその逆転の博打の失敗によって、衰退していく例が多いようです。

実は第2段階で、大きな差が生まれる

まだ業績が伸びている第1-2段階が、非常に重要な部分とのことです。これは後で効いてきます。第1段階では、企業が成功することによって、判断が少しだけ傲慢になる、というところから始まります。ここではまだ大きな問題ではないものの、「成功して当然」というマインドが育ち、偶然を軽視し、自分たちの成功の理由を自分たちで信じるようになります。

■ 主要な弾み車に残っている可能性を無視するのは傲慢である。それ以上に悪いのは、主要な弾み車は退屈だと考えて無視し、成功はほぼ間違いとの思い上がりから、つぎの大事業に関心を移す傲慢である。中核事業が近く没落する事態になったとしても、この事業を惰性に任せる理由にはならない。完全に撤退するか、執念を持って若返りをはかるべきであり、主要な弾み車を無視してはいけない。

■ ここでの要点は、「変革しなかったから衰退した」というような単純なもののではない。衰退の後の段階でみていくように、一貫した根拠がないままたえず変革を続けた企業も、全く変革しなかった企業と変わらぬほど確実に衰退している。具体的な慣行と戦略を遵守すること自体は、本質的に間違っているわけではない(偉大な企業は時代を超えて、驚くほどの一貫性を維持しているのだから)。しかし、これらの慣行の背後にある理由を理解し、維持すべき時期と変えるべき時期を判断できなければならない。

そして第2段階で、内部で十分に人が育つよりも速く、事業を拡大してしまうのです。

だが、第二段階にある企業は悪循環に陥りうる。パッカードの法則を無視して、不適切な人を主要なポストにつけるようになると不適切な人の欠陥を補うために、官僚的な手続きを確立するようになる。その結果、適切な人材を追いやる(官僚機構のもとでは苛立ちが募るか、能力が低い人々と共に働くのが耐えられなくなるか、両者が重なる)。こうなると、不適切な人が増えたのに対応して、官僚制をさらに強化することになり、適切な人材がさらに逃げ出す。こうして、官僚制の凡庸な文化が規律ある卓越性の文化に徐々に取って代わっていく。官僚的な規則が幅をきかせて、基本的価値観と厳しい基準の枠組みの中で自由と責任を重視する精神が侵食されていくとき、凡庸さの病に感染しているのである。

創業者の後継者不足の問題もここで発生します。いずれも、表面上は事業が成長しているので、なかなか判断は難しいところかなと思いますが、この調査は外部から入手可能な記事などでのみ進めているので、後から見ればサインが見て取れたということでしょう。

章末のチェックリストが素晴らしいです。タイトルだけ引用します。

第3章 = 第1段階 成功から生まれる傲慢

  • 成功は当然だとする傲慢
  • 主要な弾み車の無視
  • 何からなぜへの移行
  • 学習意欲の低下
  • 運の役割の軽視

第4章 = 第2段階 規律なき拡大路線

  • 持続不可能な成長の追求と、大きさと偉大さの混同
  • 関連しない分野への規律なき飛躍
  • 主要なポストのうち、適切な人材が配置されているものの低下
  • 容易に利益を得られることによるコスト面の規律の緩み
  • 官僚制による規律の破壊
  • 問題のある権力継承
  • 組織の利害より個人の利害を優先

この時点で本業がどうして顧客に期待されているのかを再認識して、本業に集中していれば、また堅実な成長路線に戻ることができたかもしれない、という指摘です。

第3段階で間違え、第4段階でトドメが刺される

続く第3段階では、経営陣に届くデータが悪化し、経営陣の議論も立ち行かず、完全な合意型か独裁型になるそうです。また、判断の原因を外部に押し付けるようになったり、組織再編を繰り返すようになるとのこと。

■ 組織再編とリストラを行うと、何か生産的なことをしているとの錯覚が生まれかねない。企業はいつでも組織を動かしており、組織の進化ではこれが当然である。しかし、悪いデータや警戒信号に対応する時に組織再編を主要な戦略として使うようになると、否認の段階に入っている可能性がある。深刻な心臓疾患やガンの診断を受けたときに、リビング・ルームの家具を並べ替えて対応するようなものである

理想的な組織などというものはない。どのような組織構造にも利点と欠点があり、どのような種類の組織にも非効率的な面がある。我々の調査では、あらゆる状況で理想的だといえる組織構造は見つかっておらず、どのような組織構造をとってもリスクや危険が消えることはない。

だいぶ辛辣です。ここが最後のチャンスです。

第四段階は、具体的に業績の低下が明らかになっているので、博打をうつような施策が出てきます。カリスマ経営者、新技術、大型買収など。第6章の表を引用します。

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しかし希望はある

経営資源を使い尽くす前に本業に回帰して、経営規律を回復すれば、復活した例もあるとのこと。第8章はこの点を論じていて、一文一文が檄文のようです。

■ 真に偉大な組織がそこそこ成功を収めているにすぎない組織と違う点は、困難にぶつからないことではない。一時は後退しても、壊滅的な破局にぶつかった時ですら、回復して以前より強くなる能力をもっていることである。偉大な国は後退しても回復しうる。偉大な企業は後退しても回復しうる。社会セクターの偉大な組織は後退しても回復しうる。そして偉大な人物は後退しても回復しうる。完全に打ちのめされて退場するのでないかぎり、つねに希望がある。

少しだけ感想

ということで、ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階のメモでした。
衰退する原因は様々な経営環境の変化なのでしょうが、拡大期の失策によって、衰退が加速されるというのは納得でした。景気の雲行きが怪しいいま、読むべき本だった気がします。

books.rakuten.co.jp

 

Joy, Inc.のメンローイノベーションズにもう一回行ってきた

ご縁がありまして、もう一回メンローに行ってきました。二回目というのはとても有益で、一回目はいろいろ驚きがある一方で観察って難しいのですが、二回目は落ち着いて気になるところを見てこれた気がします。

kawaguti.hateblo.jp

 

以下はメモです。

 

計画おりがみがほんとに折り紙になっていた(前はプリントアウトした用紙だったと思う)。ストーリーカードを、8hはそのまま置く、4hは半分に折る。2hはもう半分。ペアが一日の中で何にどれくらい時間を使うかを顧客と調整するための物理装置。

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要員アサイン表。誰がいつどのプロジェクトの作業をするかの表。毎朝見る。

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ペアごとのタスクボード。これは前回と変わってないと思う。オレンジのシール(QA待ち)は引き続き活躍していた。このステータスはJoy, inc.で出てくる話。社長も知らないところで改善が進んでいた話。

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ペア作業する人たち。今回はメンローベイビーもいましたよ。この写真は17時前ですが、この後17時過ぎにさーっと帰っちゃいました。

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重さを再現した端末ペーパープロトの説明。意外とずっしり重い端末だった。工場でつかっていたものらしい。

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メンローのしごとの進め方は、基調講演の書き起こしにも詳しいです。

kawaguti.hateblo.jp


詳しく書かれている本はこちらです。2000年代初頭からの、IDEOの進め方(デザイン思考の源流)と、アジャイル(XP)を取り入れた受託開発企業の軌跡。

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

 

 

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クリエーションライン安田さんのリポートが公開されました

念願のJoy,Inc (Menlo Innovations,Inc)に行ってきた話 #Joyinc #creationline #menloinnovation - クリエーションライン株式会社

“Joy,Incは何度も読んでいるので、やっていることは理解できていたのですが、やはり現地に行って、その空気感を感じることができたことが最高に良い経験でした。
彼らにとっては、当たり前ですがそこが仕事場であり生活の一部なんだということがよく伝わってきました。”

Agile Japan 応援メッセージをお送りします

シアトル近郊のレッドモンドに来ております。マイクロソフト本社にふらりと遊びに来ました。明日は移動して2年ぶりに Menlo Innovations にも行くつもりです。この5-7月で、2017年に訪問して刺激を受けた三社(Microsoft, Menlo Innovations, Hunter Industries)に訪問して、ここ2年で考え、やってきたことの答え合わせをするような旅になったらいいなと思っております。戻ったらまた何かの折に共有できればと思います。 

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牛尾さんの応援メッセージ(5分20秒)

あまりにもふらっと来てしまいまして、アジャイルジャパンを欠席することになってしまいました。それを決めた場所に実行委員の小坂さんがいまして「リモートでつないで」などとご要望をいただいたのですが、それならば、ということで米国にいる牛尾さんと応援メッセージを収録することにしました。私たちが今どんなことを考えていて、日本のアジャイルコミュニティの皆さんに伝えたいことはなんだろうか、と考えた結果、「はげちゃびん」について話すことになりました。ナンノコッチャですが、内容はビデオをご覧いただければ幸いです。


Agile Japan 2019 応援メッセージ

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Sam Guckenheimerさんの応援メッセージ(40秒)

Agile 2014のキーノートスピーカーで、Azure DevOps という アジャイル&DevOpsツールを長年リードしてきて、今はさらに社内向けの One Delivery System という共通プラットフォームも手がけている Sam Guckenheimerさんの応援メッセージもいただきました。字幕も付けました。


Agile Japan 2019 応援メッセージ by Sam Guckenheimer

牛尾さんのメッセージの未編集版(9分)

ちょっと尺が長くなってしまったので、多少切って作ったのが上のバージョンです。未編集版はこちらです。牛尾さんがなぜ米国に渡ったのか、についても語られています。9分なので、長いと言っても電車とかで聞くにはちょうどいいサイズな気がします。


Agile Japan 2019 応援メッセージ 未編集版

 

アジャイルジャパンでは、Fun! Done! Learn! もあります

私は欠席させていただくことになってしまったのですが、仲間たちによる「Fun! Done! Learn!」のふりかえりセッションがあります。Fun! Done! Learn! は特に奥ゆかしい日本のチームにとてもあっているふりかえりプラクティスだと思っております。未体験の方も、アジャイルジャパンのふりかえりをしたい方も、ぜひご参加ください。楽しく前向きに学びを捉えてアジャイルジャパンを締めくくりましょう!

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https://www.agilejapan.org/session.html

 

(おまけ) Microsoft キャンパスにいた野良うさぎさんです。

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上司ガチャ - 組織の体制変更がチームを壊す日

大きめの企業でスクラムで回し始めて、ビジネスもうまくいくようになってきたところで、急に訪れがちなのが「体制変更」です。これまで陰に日向に支援してくれた上司や役員の方がいなくなって、新しい方がいらっしゃるという。ここで苦労したり、諦めてしまう例が多いと感じます。

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答えはないのですが、雑多な考えをここに記録しておこうと思います。まとまってもいないので、無駄に長くてごめんなさい。

うまくいく確率は論理的に50%を下回る

「新しい人とうまくいく可能性もあるので、50:50じゃないの」という意見もあるかもしれません。しかし、なにかを始めるときはだいたいうまくいきそうな上司や役員を選んで相談するわけです。しかし、人事異動で次に来る人は選べません。ですから、うまくいっていたことがうまく行かなくなったり、説明を求められたり、基本、いままでよりは手間が増えることは確実ですし、その結果、フラストレーションが溜まりがちです。

良さそうな上司が来たけど、最初だけだった、というケースも聞きます。外面がよいので上司の上司受けは良かったんでしょうけど、意外とチームの要望に対応できなかったり、(酷ですが) 十分な人生経験が不足していて器が小さかったり。付き合ってみると人間そう都合よくはできていなかったりするのでしょうね。成長には時間が必要ですが、本人や周りが待ってくれるとも限りません。まだ対象領域の業務知識があれば、議論ができるところなのですが。

kawaguti.hateblo.jp

上司ガチャ

最近はソーシャルゲームの用語から、上司ガチャというようです。組織変更に関していえば上司になる人も被害者なんじゃないかと思います。お互いがガチャ。

sayonara-shachiku.com

博士の教え: くそったれ上司には近づくな

スタンフォード大学経営学の権威ロバートサットン教授はこの本で、エネルギーを奪い、惨めな思いになるようなクソったれ上司には近づくなと言っています。身もふたもないですがそれくらい強力だということでしょう。話が通じない人は変わりようもないですしね。また、誰にでもくそったれの素養があるとも言ってます。

あなたの職場のイヤな奴

あなたの職場のイヤな奴

 

アメリカのいくつかの企業では360度評価を使って、問題のあるマネージャーを見つけ出せるようにしているようです。

kawaguti.hateblo.jp

日本の場合はメテオフォール感ありますよね。ご神託が降ってくる。上司の文句言うのは他人のことを悪くいうみたいで嫌だし、自分が悪いような気がしてしまう。我慢する方がいいというアドバイスをもらうことも多いです。

eiki.hatenablog.jp

マネージャーの仕事はチームの能力を最大化すること

マネージャーという役割は優れたチームの成果を最大化することです。マネージャーが生産の中心に来ることはありませんので、あくまで手助けするのが役割なのです。いなくても回るけど、それでいて、いることで価値を出す宿命があります。

皆さん知らないかもしれないが、この世界は実は、売上とそれを支える進捗が救いなんだ。進捗の源泉はアーキテクチャでありドメインモデリングでありシステム設計者だ。マネージャではない。

medium.com

Microsoftデベロッパーの河野さんもこう言ってました。

そういうデベロッパーがバラバラにやっているのに対して、「今はこっちじゃない。今フォーカスすべきはこっちだよ」とちゃんと指導してくれる、ディレクションをしてくれる。船のキャプテンと同じですよね。そこをしてくれる人がいないと、チームとして発散しちゃいます。

ポイントとして、常にマネジメント側から「なにがゴールか」というのをメッセージとして出し続ける必要があります。「我々がこうやるのはどうして必要なのか?」あるいは「これをやることでお客さんに喜んでもらえる。だからやろう」と。これって最初に言うだけじゃなくて、毎日のように言うんですね。

そこへ向かうためのマインドシフトが必要なのだそうです。

というのは、やっぱり日本的な考えだと、上司が指示して自分は「へへー」みたいなイメージがあったので。でも、そこで「上司とは自分のパフォーマンスを最大化してくれるための良きパートナー」だと(考えた)。そこってマインドシフトがすごく大事でした。

logmi.jp

一方、Amazon創業者のジェフ・ベソズはこんなスタイルだそうです。謙虚でやりやすいリーダーが来てくれるといいですね。

「『多くの場合、正しい』を実践できているリーダーを観察すると、そこにはいくつかのパターンがあった。そうしたリーダーは他人の話をよく聞く。そして考えを頻繁に変える。政治家が頻繁に考えを変えるのは問題だが、リーダーにとっては必要なことだ。単に新しいデータを得たから考えを変えるだけではない。多くの場合、正しい判断ができるリーダーは、新しいデータがないときでさえも考えを変える」(ベゾス氏)

tech.nikkeibp.co.jp

頭が硬くて、必要な知識を持っていないリーダーが上司に来た時には、緊急停止スイッチを押さないといけないのかもしれません。人を変えるのは、難しいか、とても時間がかかります。

enterprisezine.jp

これは最近になってスクラムが普及して云々とか、シリコンバレーがどうこうではなく、私が知る限り昔からできるマネージャーはチーム若手をそそのかすのが上手くて、報いるのも上手です。

うまくいっているのを壊さなければいいのでは

歯車が噛み合っている上司とチームのセットは貴重な存在ですので、なるべくなら変えないほうがよい、と思います。逆にいうと、そういうことを見る目を持たず、壊してしまう上司や経営陣の判断に注意すべきかなと思います。「見る目」くらいは期待したいですよね。

岩田 基本的には、その会社が
「得意なことをする集団であろう」
ということを目指すとしても、
人と人がいっしょに仕事をするためには、
最低限、苦手だろうがなんだろうが、
やってもらわないと困るということを
決めないといっしょに働けないんですね。
というときに、その「最低限のこと」を
なるべく小さくすることが、
経営者として正しいんじゃないかなと
わたしは思うんです。

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN - 1101.com

 

文化のシャボン玉を守るにはリーダーの力がいる

マイケル・サホタ氏は、企業の中でアジャイルなどの新しい文化を普及させるには、Culture Bubble (文化のシャボン玉) を維持するべきだと主張しています。新しいことを行っている組織は、うまくいくと外部との衝突を起こしやすくなります。その際にリーダー(図上で一番上にいる人)は、とても重要とのこと。

ほかにも外部とのつなぎ役(Adapters)になる人たちがうまくふるまう必要があるとのことです。急速に膨らんだり、外からつつかれると、しゃぼん玉は弾けて、また小さなシャボン玉(組織関係なくいやりたい人たち)に戻ります。

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アジャイル系のカンファレンスで常に参照される、社内政治といえばこの本です。

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

 

 こちらの本は新規プロダクト開発の本なのですが、意外と社内説得の話が多くて、おもしろかったです。アダプターにお勧めかもしれません。

SHIFT:イノベーションの作法

SHIFT:イノベーションの作法

 

今日はアジャイルリーダーシップサミット

こうした組織運営についても、みんなでどんどんとうまくなっていけたらいいですね。今日行われるアジャイルリーダーシップサミットでも、こうした議論が行えるといいなと思っています。

Home | Agile Leadership Summit 2019

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OSTでの議論の内容

当日の議論の内容を森雄哉さんがまとめてくれました。

二年後に来る上司ガチャの悪い影響を止める方法
 - チームにとって上司にしてほしいことを書く(ディスクリプション
 - 自分のチームの状態を話す(自分達ができることと、上司にやってもらいたいことを話す
 - チーム側がマネジメントを受けているだけになっていないかをふりかえる
 - 実はチームがクレクレ君になってない?
 - 上司の上司と関わりを持って対応出来るようにしておく
 - チームを鍛えまくる
 - チームFA

scrapbox.io

 

ソシャゲに詳しい人の説明もあります。ありがとうございます!

上司ガチャ問題の対策をソーシャルゲームのガチャから考える - ミッションたぶんPossible

 

 

The Phoenix Project をアジャイルコーチがやると....

以前見学させていただいた The Phoenix Project のワークショップ。継続的デリバリーの先のバリューストリームを体験するカードゲームとして面白いなと思っていたら「こんどアジャイルコーチスペシャル体験会やるんで、誘いますね」とITプレナーズの岡本さんよりお誘いいただきまして。

kawaguti.hateblo.jp

ということで昨日体験してきました。講師はクリエーションラインの笹健太さんと荒井裕貴さん。DevOpsDaysTokyo実行委員でもあります。

先に中村知成(@ikikko)さんのレポートがありますのでこちらもどうぞ。

ikikko.hatenablog.com

雰囲気のレポート

詳しい内容はネタバレになるので書きにくいので、雰囲気だけお伝えします。

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ロゴにかぶってしまう講師。

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必死の採点。

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午前中はこんな感じ。ルールを理解する人と自由な人。

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午後はフローが見える化される。環境を変える人たち。 イノベーションの発生と普及。考えながら手を動かしながら歩きながら会話する人たち。問題を中心として有機的な組織が形成され、全員が考え、全員が動く。

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昼休みにご飯食べながら問題を解析して組まれるワークプレイス。緊急イベントへの対応すら考慮されている。残り3分でも焦らずチャレンジする人たち。「それってどういうこと?」「ここなにやってんのー?」「はーい質問があります。」「ちょっとみんな聞いてー」f:id:wayaguchi:20190706093241j:image

結果発表。惜しくも目標を達成できませんでしたが、売上は単調増加して株価も回復。V字回復とはまさにこのこと。このまま次期ももっと良くなることが間違いないです。CFO役としては文句ございません。 

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遊びに来たわけではありません。真面目に仕事しております。休憩中や懇親会でも、闊達に意見が出る場を作るための心理的安全性について、人数が多くても議論が建設的効率的にできる条件や振る舞い、一時的に余った人はどう動くか、情報共有と手分けのバランス、セットベース開発とWIP制限、などの話題で盛り上がりました。

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楽しかったでーす。(語彙力

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ピンぼけ! 

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inedo.co.jp

なぜアジャイルの方が成功しやすいのか?

スクラムギャザリングというカンファレンスの実行委員会がありました。実行委員会といっても、会議をやってるというより、淡々と決めて作業を進める会です。このカンファレンスは2011年からやっていて、来年でちょうど10年になります。紆余曲折ありながらも、ここ数年は実行委員業も枯れてきて、ああうまくいくアジャイルチームってこういう特性あるのかもな、と気づくところもありまして。今日はそのあたりを記してみます。

今日は趣意書の公開まで

今日は 4-5時間ほどで、趣意書(スポンサー向け資料含む)と、スポンサー受付のサイト作成までが終わりました。ちなみにWebサイトまでは終わらなかったので基盤まで整えたところで、次回の作業になりました。

趣意書はこちらです。

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うまくいってることは変えないでおく

やりながら考えたことは、

  • うまくいっていることは変えないでおく
  • というか問題なければ変えない
  • なので問題だけ議論して決めて
  • なる早でなるべく細かい単位でデプロイする

ということです。

趣意書は去年のものをベースに、昨年実績の追加記載と会場が変わるのでそれに伴う変更を入れてます。逆にいうとそれ以外は変えてません。

チームの中で作業を進めているので、面倒くさいところや、議論は盛り上がるけど前に進まなさそうな点は「あとで必要になったら話そう」と一旦話を切って進めました。今日中にある程度アウトプットしたいからです。

議論と作業のバランス

分業をしていないので、議論も作業も同じ人たちがやります。決定や作業計画だけ詰めたところで、作業ができなければアウトプットが出ません。一方で議論や決定が必要な部分ももちろんあるので、適宜、必要なタイミングで議論をやっていきます。

これが、多重請負のウォーターフォールだったとしたらどうなるでしょう。「私たちの責務は意思決定。今日は議論と意思決定に集中して、実作業は全体工程が決まった後でやりましょう。作業はそれぞれの担当や、その道のプロにお願いしましょう」ということになりがちかなと思います。たぶんそれ自体は「そういうもの」なのだと思いますので、悪い話ではないと思うのですが、問題は「いつ結果がわかるか?」です。もし今日、方針やスケジュールだけ決めたのだとすると、間違いがわかるのは実装後になります。来月か、もっと先か。

一方、趣意書の実装と即日公開で得られたものは以下です。

  • 会場見取り図でスポンサー受け入れ可能数を見積もる
  • 収益見込みを確認し、キャッシュフローとリスクのある変数について見当をつける
  • 公開後、すぐにスポンサーの応募を数件いただく。それによって趣意書が機能しているという認識を持つ
  • スポンサー申し込みフォームも機能していることがわかる。いくつか細かな改善を行いつつ今後のオペレーションの見当がつく

このようにいくつかのアウトプットと、その結果のアウトカム(成果)がありました。最大のアウトカムはスポンサーのお申し込みをすぐもらえたことです。嬉しい誤算。本当にありがたいご支援でした。

イムリーなアウトプットがアジャイル成功のヒント

ほとんどが去年と同じことをしているにもかかわらず、「マンネリ」「つまらない」と感じることがない点も特筆すべきかもしれません。それどころか一年ぶりの作業なので、むしろ多くの発見や学びがありました。使っているサービスの機能が進化していたり、逆にうまく動かなくなってて直したり。ConfEngineというサービスの開発者に「前回のイベントからのコピーで新しいイベントを作る」という要望を出していたのですが、なんとそれが実装されていて、喝采が上がりました。

これももし多重請負のウォーターフォールだったら、企画会議で「昨年と同じではつまらないのではないか?」という話になって、アイデアが足された挙句に、実施部隊に情報が渡るのが遅れ、実施部隊は膨らんだ企画と変わった状況の狭間で右往左往しながらギリギリでリリースにこぎつけた後に問題が発覚して予定外かつ緊急の作業に追われる未来が見えます(知らないけど)。

アジャイルでは、というか別にアジャイルと呼ばなくても良いのですが、私たちが重視していたのは、ローコストで、タイムリーに、アウトプットしながら、結果を得て、それを通じて学びを得て、時間内で手仕舞いする。...ということです。私たちはアジャイルの実践を通じて、この「あたり前」のことを学んできたに過ぎないのかもしれません。

イノベーションは安定したチームから

あらゆる企業活動にこれが通じるなんて思いませんが、多くの作業はこうして日々回っていくような気もします。その結果、本人たちすら気づかないうちに「簡単には真似できないチームのノウハウ」が溜まってるような気もしなくもないです。小さなイノベーションの積み重ねは安定したチームから。...そんな気もしました。

きっとそんなことはみんなわかってるけど、意外とそこまで我慢できずに新しいアイデア投入をやってしまったり、人を入れ替えてみたり、売り上げが立たずに予算が尽きたり、ステークホルダーや偉い人お客さんに振り回されたりするものなのかもなー、とも思います。頑張っていきましょう。

アジャイルを始める時の成功のヒントは、今いる人で今できるアウトプットを最速で目指してみる。...そんなところにあるんじゃないかと思ったのでした。

 

...というわけで、今日も作業が進んで満足でした。早速のスポンサーのお申し込みもありがとうございます。「ほんとこのカンファレンスは愛されてるね(私たちではなく)」ということで、またちょっとやる気も補充できました。フィードバック大事ですね。次回作業日を決めて今日は終了しました。

 

P.S. 4-5時間作業して3時間飲んでたみたい。ワークライフバランス。まあ仕事じゃないですけど。

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実行委員のてやまぐさんの資料もいいですね。こんな話をいつもしてる。XP祭りの実行委員も2010年くらいからやってました。

Conference Organize Tips at 2019/06/22 #devlove #devlovex

Electron + Angular でマルチウインドウタイマー

前回の続きの作業記録です。

kawaguti.hateblo.jp

 

Electronでのマルチウインドウ化

マルチウィンドウを積み残しにしたのでその点を進めました。

Electron ではウインドウを起動するために、new BrowserWindow する、という記述があり、これを使うことを考えました。

BrowserWindow | Electron
... が、このウインドウはネイティブのウインドウでした。今回欲しいのは JavaScript 上で起動し、JavaScript で通信できる別ウインドウなので、ちょっと用途が違いました。

今回、ここの理屈を理解するまでに多くの試行をしました。最終的に、イベントでモブをしまして、よた(@y0t4) さんの手助けもあって、筋違いに気がついた次第です。モブすごい。

ayumi-hsz.hatenablog.com

 

ほんとうに必要だったものは window.open

結局のところ、必要なコードは window.open でした。あ、それもう20年ぐらい使ってるわ。どうってことのないこの一行のために費やした時間は数日(のちょっとした時間)。学びが多いです。

window open · kawaguti/tiimer@8618f42 · GitHub

ということで、二枚目をウインドウを起動できるようになりました。普通にJavaScriptなので、複数ウインドウ間のメッセージングについても、前回と同じく npx-multi-windowが使えそうです。

Angular 7 でカウントダウンタイマー - kawaguti’s diary

ということで、組み込みました。

普通にメッセージのやり取りができるようになったので、引き続き、メッセージにコマンドを仕込んで、時計のセットをできるようにして、アプリ完成です。

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Mac用にパッケージ

Mac OSX 用にパッケージしたものをこちらにおいておきます。セキュリティ上、App Store以外のものは動かないと思いますので、実行する場合は、詳細設定-セキュリティ から許可をしてあげる必要があります。

https://www.tiimer.net/tiimer-darwin-x64/tiimer.app.zip

Windows用も動作したのですが、うまく配布用のZipが作れていないので、また調べまーす。