Target Dojo に行ってきた - 受入型研修施設のエッセンス

Agile 2019 に行ったついでに、ミネアポリスに寄りまして、Target さんの Dojo という研修施設にお邪魔しました。

kawaguti.hateblo.jp

今年のDevOpsDays Tokyo でも来日してプレゼンしてくれています。

confengine.com

昨年のAgile2018で知り合いまして、Dojo遊びにきなよー、って言っていただいたんですけど、機会が作れず、今回は予めワシントンDCからの帰りをミネアポリス(デルタ航空ハブ空港で羽田に直行便があります)経由にして寄ってきました。つまり羽田から直行でいつでも行けるわけですね。空港からもライトレールで市内アクセスできるので、とても便利でした。

 

Target DOJO について

エンジニアの Mig さんが Dojo の仕組みについて、プレゼンしてくれました。(DevOpsDays のあとに日本企業さんの来訪があったそうで、スライドも日本語!)

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dojo.target.com

Target 社は全世界に200ほどの店舗があって、38000人の従業員がいるそうなのですが、その全体へのデジタル教育を担っているのが、Target DOJO なんだそうです。エンジニアだけでなく、店舗で働く人や配送系の人も全部含めて対象、と言ってました。

きっかけは、DevOpsで小さな問題解決をしたことで、サーバーの調達を早くしたり、開発からデプロイまでを超絶短くしてみたりという実績があって、そういう取り組みを常に行える施設として Dojo が生まれたようです。今は30人ちょっとのコーチがいて、技術だったりアジャイルだったり (ペアを組むそうです) のコーチや、受入型のトレーニングをしているそうです。

2日間、5日間、6週間までのコースが

 2日コースが「フラッシュビルド」で、プロジェクトチームや、同じ場所で働いている人たちが研修施設に二日間籠もって、何らかの改善をするそうです。コーチがついて、問題の出し方や、コミュニケーション、進め方、モブプログラミング、実装技術そのものに至るまで手助けするそうです。施設も集中できるように工夫しているとのこと。

期間も5日間のものや、最大で6週間までの枠組みがあるそうです。

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通常型のスペースはこれで、中心にモブや会議用の机、左右に個人作業用のブースがあります。ホワイトボードは潤沢。付箋やペンも無限に出てくるそうです。

最近は複数チームでの利用も増えたということで、2チーム連結型のブースを作ってみたとのこと。合宿のような会議にも使われている感じですね。ちなみに場所はミネアポリス中心部の「ミネアポリスセンタービル」がここで、それ以外にもDojoがあるようです。

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壁にはさまざまなアジャイル関係のモットーなどが貼ってあって、Fearless Change の場所重要のパターンのようでした。

 

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プロジェクトを始めるときのチャーターが整理されてていい図だなと思ったやつ。

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Target DOJO が重視するアジャイルの価値、原則。

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手書きのスキル表。

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プロダクト開発のプレイブック。

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個人の集中デスクは昇降可能なやつです。

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以上、想像以上にちゃんと投資して、工夫を凝らして運用されていることが感じられました。すごい。

小売業もデジタルトランスフォーメーションが必要な時代

量販店のデジタルトランスフォーメーションなんて、どうせ大したお金使ってないんでしょ?と思った方もいると思いますが、これだけの設備を常設・内製で作っていることが伝われば幸いです。

Target社は業績すこぶる順調なようで、ディズニーのショップを展開するというニュースが流れてました。

www.inc.com

案内してくれたミケルさんとミグさん

今回案内してくれたミケルさんとミグさん。ありがとうございました!

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Regional Scrum Gathering 2020 にも早速プロポーザルを出してくれまして、このお話を聞くことができます。9月までにVotingしてますので、ぜひ見てみてください。

confengine.com

井の中の蛙大海を知らず」から始まるスライドが素敵です。

 

ライブラリのバージョンが古くなっていたのでアップデート

週末の作業記録です。

タイマーアプリのライブラリのバージョンが古くなっていたのでアップデートしました

http://tiimer.net


npm outedated でライブラリのバージョンをチェックします。あらあら真っ赤。

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そもそもAngularの推奨バージョンが上がってしまったっぽいですね。

深く考えず npm update コマンドでアップデートします。

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どががが、っとインストールされ、267個もの脆弱性が発見されます。脆弱すぎます。

npm audit fix を叩いてfixします。

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ngx-multi-window の警告は、angularがより新しいバージョンなので一旦無視しておきます。本家が上がってくれると嬉しいです。

electron もコンパイルして、動作確認の上、コミットしました。

github.com

 

Angularを8.2にする

ついでに、Angularのメインバージョンが8.0から8.2に上がっているようなので、あげてしまいます。

ng update @angular/cli @angular/core

 

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動作確認してコミット。

github.com

 

残った古いライブラリに対応する

この時点で npm outdated をすると、2つほどアップデートが必要とでました。

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npm update @types/jasmine

npm update karma-coverage-istanbul-reporter

 順に叩いてアップデートしました。

もう一度 npm outdated を叩くと、赤い文字はなくなりました。

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更に最新版があるようですが、一旦このままにしておきます。

github.com

 

Azure DevOpsで本番サイトに反映

pushするごとに Azure DevOps が動いて本番サイトにも反映してます。

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Electronのバイナリは反映してないので面倒です。そのうち解消したい。

 

Agile 2019 に行ってきた

ワシントンDC近郊のNational Harborで行われている Agile 2019 に参加しています。今日は4日目の夕方で、今夜のパーティと明日午前のキーノートを残して90%くらいの日程を終了しました。

www.agilealliance.org

Lightning Talks で話してきた。

今回は5分のライトニングトークに応募したら、なんと通過しまして(多くのLikeありがとうございました)、比較的小さな部屋でしたが満員の中でトークするという機会がありました。全然受けなかったらどうしようと思っていたんですけど、結構笑いが取れました。すれ違いざまに「LTよかったよ」と何人かに言っていただいて、褒め合う文化大事!と思いました。陶山さんも見事笑いをとってました。

ちなみに、日本と違ってLT独特の文化はないので、ただ5分のトークをする人が多く、笑いを取ることが正解だったかどうかは今もって謎です。でも聞いてもらえたということだから、少なくとも爆死ではないと思いますし、よしでしょう。

まじ英語練習しないとだめだなーというモチベーションは高まりました。3-5分くらいの英語発表は楽天時代にちょくちょくあったのですが、とりあえず笑いをとって逃げるパターンで、それも今回は変わってません。なんとかしないとなーと思いました。

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資料はこちらです。 

 

 

いろんな人に会いました

人に会いに行くのがカンファレンス、ということで、今回もいろんな人に会えました。同料金なのですが、広い部屋にあたったので、よなよな部屋飲みできたのも楽しかったです。ありがとうございました。

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ではまた!

スクラム現場ガイドの Mitch Lacey来日!認定スクラムマスター研修、認定スクラムプロダクトオーナー研修があります。

以前、教育心理学概論で得たジグソー法を使ってスクラム現場ガイドを読みました。
本書は、1年目にスクラムアジャイルで『どんなことが起きるか』についての本です。筆者が、1年目のアジャイルにまつわる物語を集め、難しいポイントと、それに対するソリューションをまとめています。
 
 
 
この本の著者の Mitch Lacey が日本で認定スクラムマスター研修をやってくれるということで、大変期待しております。
 

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現場ガイドの元の単語、フィールドガイドというのはいわゆる木や虫などの図鑑のことで、自然豊かな国立公園みたいなところに行って見つけた草花を見分けたり、するためのものです。たとえばこんな。
表紙がまさにそんな感じですね。スクラムの山の中に入って、そこで起こっている様々な事象について、この本と照合し、ふむふむなるほどと、現状を把握したり、次の手を探したりするための本になっています。 
スクラム現場ガイド -スクラムを始めてみたけどうまくいかない時に読む本-

スクラム現場ガイド -スクラムを始めてみたけどうまくいかない時に読む本-

 

(以下、著者による「まえがき」より抜粋)

スクラムアジャイルを始めようと思っていたり、まさに始めたところだったり、1年くらいやってきて道に迷ったように感じているなら、本書はあなたのためにある。僕は公式には、新たにプロジェクトを始めて6ヶ月から18ヶ月の12ヶ月の間にいる企業が対象だとしている。

本書は実践主義者のためにある。あなたが理論や難解な議論に興味があるなら、他の本を選んだほうがいい―そうしたスクラムアジャイルの素晴らしい本はたくさんある。そうでなく、実践的なアドバイスや現実のデータ、僕が実際にマイクロソフトのプロジェクトに参加したり、他の会社でチームをコーチしたり、フォーチュン100企業でコンサルティングしたりしてきた経験に興味があるなら、本書をおすすめする。

アジャイルに向けた旅をする中で、旅程のどのあたりであろうと、いま経験しているのは普通のことだと優しく教えてもらえれば有り難いものだ。いまの状況に対処するためのアイデアや、成功の鍵まで聞ければ、さらに助かる。本書はそうしたすべてを提供しており、必要な章だけ読めばいいように構成している。もちろん、パートを通して読んでも、全体を読んでもいい。現実的な状況なのであなたにとっても理解しやすく、紹介しているソリューションはどんなチームでも使える。

ページをめくって物語を読んでほしい。本書を頼れる仲間として、あなたはスクラムエクストリームプログラミングのいいところも悪いところも一緒に経験することになるだろう。

本書はどの章からでも、どんな順番でも、いつでも読めるようになっている。それぞれの章は物語か始まる。物語はすべて僕が参加したりコーチしたチーム、企業、プロジェクトからとったものだ。ご想像の通り、何の罪もない人びとのため、名前は変えている(罪がないとは言い切れない連中もいるけれど)。

物語を読んだら、次はモデルを紹介するが、こちらも同じくらい聞き覚えがあると思う。紹介するモデルは僕が現場で、物語で現れたような問題を解決するのに使うものだ。中には不快に感じたり、あなたの会社ではうまくいくと思えないものもあるだろう。

僕としては、アドバイスを無視したいという感情や、モデルを変えてしまう衝動とは何としても戦ってほしい。少なくとも3回はそのままで試してみて、結果を見てほしい。驚くような結果になるかもしれない。各章の終わりには成功の鍵をまとめており、あなたが実現に成功するか失敗するか、その鍵となる要因を説明している。

本書は4つのパートに分かれている。

第1部「準備」ではスクラムを始めるに当たってのアドバイスと、成功に向けた準備について書いている。スクラムの導入を検討しているか、始めたばかりならばここから読むのがいい。

第2部「現場の基本」では、アジャイルのやり方を始めるとチームや組織が出会うことになる初期の障害物を、乗り越える助けとなるいくつかの項目について議論している。スクラムを実践していて、問題を抱えているなら、ここから始めるといい。

第3部「救急処置」は会社が抱える、より大きく深い問題に対応する方法をまとめている。プロジェクトへ要員追加するやり方や、機能不全になったデイリースタンドアップの直し方などだ。ここで紹介する状況は、あなたが最初の1年間のどこかのタイミングで遭遇するものになる。このパートではトリアージと治療によって、あなたのチームを健康に戻す方法を紹介している。

最後のパート「上級サバイバルテクニック」で取り上げる事項は、人びとがタイミングに関係なくよく悩まされているものだ。アジャイルスクラムでのプロジェクトのコスト算出、契約の作り方、ドキュメントの書き方などだ。

あなたがまったく新たにスクラムを始めるところならば、末尾の付録で簡単に説明してる。基礎知識がないのであれば、ここで用語を学ぶといい。本書の前に、他の本でスクラムを勉強するのもいいだろう。

 

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

リーマンショックの少し後に出た本なのですが、当時書店で立ち読みしたままで、なんとなくちょうどいまくらいの時期に読むとよさそうかなということで、読みました。 

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

 

うまくいった企業がなぜ衰退するのか

2009年に原著が出ているのですが、ちょうどリーマンショック後の信用収縮が進行しているあたりのようで、序章からその話が出てきます。この研究は5年ほどやっていたそうなので、2009年になったのは偶然で、サブプライムローン問題で破綻したファニーメイについては付録に記載した、とのこと。

本書では素晴らしい業績をあげた企業が、衰退していく例を詳細に追ったものです。前著のBuilt to LastかGood to Greatで調査した、偉大な企業にまで成長した企業群のうち、その後、衰退して凡庸になった企業が対象で、基本的には株価でスクリーニングしているようです。付録に詳細な条件が書いてあります。条件にあった企業と時期は以下の通り(付録1より引用)。

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スクリーニングののち、各企業のニュースなどの資料を時系列に追っていく手法で調査したそうです。「後で語る」系のものは後知恵バイアスがかかるので除外し、衰退前に出ている情報やインタビューを調査したようです。

ちなみに本書は(Wikipediaによると)、Built to Last、Good to Great、公共セクター版 に続く本ということになるみたいです。日本語訳は、ビジョナリーカンパニー、2、3という名前になってます。

見えてきた衰退の5段階

第二章で説明されるのが、分析によってわかってきた、衰退企業に共通する5段階です。

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発売当初、私の目に刺さってきたのは「第4段階: 一発逆転策の追求」です。業績がやばくなると、むしろ大きな勝負に出がちなんだろうなぁ、と思ったのを覚えています。衰退時期に行われる一発逆転策の例として、カリスマ性のある経営者を呼んできたり、大きな買収などで新規事業に進出したり、ということがあげられています。本業が十分に儲からなくなった時に、本業に集中するのではなく、違うことをやろうとする。しかし、顧客から信頼を集めている本業がそんなに急に悪くなることはなく、むしろその逆転の博打の失敗によって、衰退していく例が多いようです。

実は第2段階で、大きな差が生まれる

まだ業績が伸びている第1-2段階が、非常に重要な部分とのことです。これは後で効いてきます。第1段階では、企業が成功することによって、判断が少しだけ傲慢になる、というところから始まります。ここではまだ大きな問題ではないものの、「成功して当然」というマインドが育ち、偶然を軽視し、自分たちの成功の理由を自分たちで信じるようになります。

■ 主要な弾み車に残っている可能性を無視するのは傲慢である。それ以上に悪いのは、主要な弾み車は退屈だと考えて無視し、成功はほぼ間違いとの思い上がりから、つぎの大事業に関心を移す傲慢である。中核事業が近く没落する事態になったとしても、この事業を惰性に任せる理由にはならない。完全に撤退するか、執念を持って若返りをはかるべきであり、主要な弾み車を無視してはいけない。

■ ここでの要点は、「変革しなかったから衰退した」というような単純なもののではない。衰退の後の段階でみていくように、一貫した根拠がないままたえず変革を続けた企業も、全く変革しなかった企業と変わらぬほど確実に衰退している。具体的な慣行と戦略を遵守すること自体は、本質的に間違っているわけではない(偉大な企業は時代を超えて、驚くほどの一貫性を維持しているのだから)。しかし、これらの慣行の背後にある理由を理解し、維持すべき時期と変えるべき時期を判断できなければならない。

そして第2段階で、内部で十分に人が育つよりも速く、事業を拡大してしまうのです。

だが、第二段階にある企業は悪循環に陥りうる。パッカードの法則を無視して、不適切な人を主要なポストにつけるようになると不適切な人の欠陥を補うために、官僚的な手続きを確立するようになる。その結果、適切な人材を追いやる(官僚機構のもとでは苛立ちが募るか、能力が低い人々と共に働くのが耐えられなくなるか、両者が重なる)。こうなると、不適切な人が増えたのに対応して、官僚制をさらに強化することになり、適切な人材がさらに逃げ出す。こうして、官僚制の凡庸な文化が規律ある卓越性の文化に徐々に取って代わっていく。官僚的な規則が幅をきかせて、基本的価値観と厳しい基準の枠組みの中で自由と責任を重視する精神が侵食されていくとき、凡庸さの病に感染しているのである。

創業者の後継者不足の問題もここで発生します。いずれも、表面上は事業が成長しているので、なかなか判断は難しいところかなと思いますが、この調査は外部から入手可能な記事などでのみ進めているので、後から見ればサインが見て取れたということでしょう。

章末のチェックリストが素晴らしいです。タイトルだけ引用します。

第3章 = 第1段階 成功から生まれる傲慢

  • 成功は当然だとする傲慢
  • 主要な弾み車の無視
  • 何からなぜへの移行
  • 学習意欲の低下
  • 運の役割の軽視

第4章 = 第2段階 規律なき拡大路線

  • 持続不可能な成長の追求と、大きさと偉大さの混同
  • 関連しない分野への規律なき飛躍
  • 主要なポストのうち、適切な人材が配置されているものの低下
  • 容易に利益を得られることによるコスト面の規律の緩み
  • 官僚制による規律の破壊
  • 問題のある権力継承
  • 組織の利害より個人の利害を優先

この時点で本業がどうして顧客に期待されているのかを再認識して、本業に集中していれば、また堅実な成長路線に戻ることができたかもしれない、という指摘です。

第3段階で間違え、第4段階でトドメが刺される

続く第3段階では、経営陣に届くデータが悪化し、経営陣の議論も立ち行かず、完全な合意型か独裁型になるそうです。また、判断の原因を外部に押し付けるようになったり、組織再編を繰り返すようになるとのこと。

■ 組織再編とリストラを行うと、何か生産的なことをしているとの錯覚が生まれかねない。企業はいつでも組織を動かしており、組織の進化ではこれが当然である。しかし、悪いデータや警戒信号に対応する時に組織再編を主要な戦略として使うようになると、否認の段階に入っている可能性がある。深刻な心臓疾患やガンの診断を受けたときに、リビング・ルームの家具を並べ替えて対応するようなものである

理想的な組織などというものはない。どのような組織構造にも利点と欠点があり、どのような種類の組織にも非効率的な面がある。我々の調査では、あらゆる状況で理想的だといえる組織構造は見つかっておらず、どのような組織構造をとってもリスクや危険が消えることはない。

だいぶ辛辣です。ここが最後のチャンスです。

第四段階は、具体的に業績の低下が明らかになっているので、博打をうつような施策が出てきます。カリスマ経営者、新技術、大型買収など。第6章の表を引用します。

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しかし希望はある

経営資源を使い尽くす前に本業に回帰して、経営規律を回復すれば、復活した例もあるとのこと。第8章はこの点を論じていて、一文一文が檄文のようです。

■ 真に偉大な組織がそこそこ成功を収めているにすぎない組織と違う点は、困難にぶつからないことではない。一時は後退しても、壊滅的な破局にぶつかった時ですら、回復して以前より強くなる能力をもっていることである。偉大な国は後退しても回復しうる。偉大な企業は後退しても回復しうる。社会セクターの偉大な組織は後退しても回復しうる。そして偉大な人物は後退しても回復しうる。完全に打ちのめされて退場するのでないかぎり、つねに希望がある。

少しだけ感想

ということで、ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階のメモでした。
衰退する原因は様々な経営環境の変化なのでしょうが、拡大期の失策によって、衰退が加速されるというのは納得でした。景気の雲行きが怪しいいま、読むべき本だった気がします。

books.rakuten.co.jp

 

Joy, Inc.のメンローイノベーションズにもう一回行ってきた

ご縁がありまして、もう一回メンローに行ってきました。二回目というのはとても有益で、一回目はいろいろ驚きがある一方で観察って難しいのですが、二回目は落ち着いて気になるところを見てこれた気がします。

kawaguti.hateblo.jp

 

以下はメモです。

 

計画おりがみがほんとに折り紙になっていた(前はプリントアウトした用紙だったと思う)。ストーリーカードを、8hはそのまま置く、4hは半分に折る。2hはもう半分。ペアが一日の中で何にどれくらい時間を使うかを顧客と調整するための物理装置。

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要員アサイン表。誰がいつどのプロジェクトの作業をするかの表。毎朝見る。

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ペアごとのタスクボード。これは前回と変わってないと思う。オレンジのシール(QA待ち)は引き続き活躍していた。このステータスはJoy, inc.で出てくる話。社長も知らないところで改善が進んでいた話。

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ペア作業する人たち。今回はメンローベイビーもいましたよ。この写真は17時前ですが、この後17時過ぎにさーっと帰っちゃいました。

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重さを再現した端末ペーパープロトの説明。意外とずっしり重い端末だった。工場でつかっていたものらしい。

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メンローのしごとの進め方は、基調講演の書き起こしにも詳しいです。

kawaguti.hateblo.jp


詳しく書かれている本はこちらです。2000年代初頭からの、IDEOの進め方(デザイン思考の源流)と、アジャイル(XP)を取り入れた受託開発企業の軌跡。

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

 

 

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クリエーションライン安田さんのリポートが公開されました

念願のJoy,Inc (Menlo Innovations,Inc)に行ってきた話 #Joyinc #creationline #menloinnovation - クリエーションライン株式会社

“Joy,Incは何度も読んでいるので、やっていることは理解できていたのですが、やはり現地に行って、その空気感を感じることができたことが最高に良い経験でした。
彼らにとっては、当たり前ですがそこが仕事場であり生活の一部なんだということがよく伝わってきました。”

Agile Japan 応援メッセージをお送りします

シアトル近郊のレッドモンドに来ております。マイクロソフト本社にふらりと遊びに来ました。明日は移動して2年ぶりに Menlo Innovations にも行くつもりです。この5-7月で、2017年に訪問して刺激を受けた三社(Microsoft, Menlo Innovations, Hunter Industries)に訪問して、ここ2年で考え、やってきたことの答え合わせをするような旅になったらいいなと思っております。戻ったらまた何かの折に共有できればと思います。 

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牛尾さんの応援メッセージ(5分20秒)

あまりにもふらっと来てしまいまして、アジャイルジャパンを欠席することになってしまいました。それを決めた場所に実行委員の小坂さんがいまして「リモートでつないで」などとご要望をいただいたのですが、それならば、ということで米国にいる牛尾さんと応援メッセージを収録することにしました。私たちが今どんなことを考えていて、日本のアジャイルコミュニティの皆さんに伝えたいことはなんだろうか、と考えた結果、「はげちゃびん」について話すことになりました。ナンノコッチャですが、内容はビデオをご覧いただければ幸いです。


Agile Japan 2019 応援メッセージ

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Sam Guckenheimerさんの応援メッセージ(40秒)

Agile 2014のキーノートスピーカーで、Azure DevOps という アジャイル&DevOpsツールを長年リードしてきて、今はさらに社内向けの One Delivery System という共通プラットフォームも手がけている Sam Guckenheimerさんの応援メッセージもいただきました。字幕も付けました。


Agile Japan 2019 応援メッセージ by Sam Guckenheimer

牛尾さんのメッセージの未編集版(9分)

ちょっと尺が長くなってしまったので、多少切って作ったのが上のバージョンです。未編集版はこちらです。牛尾さんがなぜ米国に渡ったのか、についても語られています。9分なので、長いと言っても電車とかで聞くにはちょうどいいサイズな気がします。


Agile Japan 2019 応援メッセージ 未編集版

 

アジャイルジャパンでは、Fun! Done! Learn! もあります

私は欠席させていただくことになってしまったのですが、仲間たちによる「Fun! Done! Learn!」のふりかえりセッションがあります。Fun! Done! Learn! は特に奥ゆかしい日本のチームにとてもあっているふりかえりプラクティスだと思っております。未体験の方も、アジャイルジャパンのふりかえりをしたい方も、ぜひご参加ください。楽しく前向きに学びを捉えてアジャイルジャパンを締めくくりましょう!

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https://www.agilejapan.org/session.html

 

(おまけ) Microsoft キャンパスにいた野良うさぎさんです。

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