「社員一人ひとりがアイデアを持つイノベーティブな職場とは?」 ... をきっかけに思い出した自分語り。
この記事を読みながら、いろいろ思い出したことを書きます。
社員一人ひとりがアイデアを持つイノベーティブな職場とは?[山崎亮]
http://www.worksight.jp/issues/person/000133.html
ところが、仮にもし、「今の勤め先がダメになっても、別のところから収入が得られる」と社員が考えられたならば、どうでしょう。全く違うことが起きます。
思い切ったこと、少し適当なこと、ラフなことも口にできるし、自由なアイデアが出てくる。社長の発言に対しても、「今からの時代、それでは売れませんよ」と面と向かって反論できる。「なんだ、お前は意見が違うから辞めろ」と言われたり、もしくは左遷されて希望しない部署に行かされたら、「じゃあ、辞めます」と言える。ビジネスに変化をもたらすようなクリティカルな働き方は、「この会社を辞めてもなんとかなる」という生き方から生まれてくると思うのです。
今の会社がつぶれても食いっぱぐれない
就職した頃、そこそこ悩んだ中で1年目くらいに同じ事を考えて、目標は「今の会社が急につぶれても食いっぱぐれない」になりました。なので最初は技術的な実現力を持っていることがレアスキルだという事を意識したので、一人でも何か生み出せる、という状態を維持して、社内の人に使ってもらえて、かつ他の人の仕事を改善できるツールを作っていました。その後は毎年一つずつ実現する事を決めて、いろいろやってました。
自分はなんでその組織にいられるのか?他の人にできない事をやる必要があるからです。
「今年実現する事」を上司の持っているコンセプトをもらうとかではなくて、もっと大きな社会的な技術の流れとかを見据えて、こっちから提案する。形式的になりがちな毎年の目標設定をそこそこまじめなプレゼンの場に変える。ということをやっていって。
いつでもやめる権利がある
10年めくらいで、一回、辞表をだしました。辞めて会社の中ではトライできない新しい分野に行こう思って。そのときはいろいろあって、辞表を取り下げたんですが、そこで思考の枠が拡がりました。「辞める」権利だけは持っている事に気付いたのです。自分の意志だけでは異動はできないかもしれないし、予算もつかないかもしれないけど、ダメだったら1〜2ヶ月とかで辞められる。じゃあ、もうちょっとできるところまで、やってみようかと。
そのへんからはもう、社内に勝手には落ちていないことをやる、と決めているし、それが義務だと思えるようになったので、自分がやろうとしている事をあらゆる社内の人に会うたびに説明するようになりました。一回じゃ覚えてくれない。理解してくれない。なんどでも同じ事を言う事でやっと信頼してもらえる。理解はできないかもしれないけど、何か勘違いしたりもあるんだろうけど、とにかくやらせてもらえたりする。
ドラッカーの著述を再編集したまとめ本「プロフェッショナルの条件」がすごく参考になりました。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
- 作者: P・F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2000/07
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スクラムとの出会い。組織のイメージが変わった。
そこでスクラムに出会います。ちょうどいい機会をもらって、技術的な挑戦じゃなくて、小さなプロジェクトを始めてみる事になりました。依頼も上司経由じゃなくて直接で、全部自分で直接根回ししつつ上司にお願いするという感じで。もちろん全部自分でやったわけじゃなくて、いろいろな人との関係のなかで、なんですけど、少なくとも上司に全ての調整を押し付ける事はしませんでした。
スクラムのリーダーシップモデルは眼から鱗でした。後に出会うJim CoplienさんもScrumに出会ったときに、「Jeff Sutherlandは、(分かっているけど言い表せなかったことを) 見事に言ってくれた」というようなことを言っているのですが、まさにそんな感じで。学生の頃、野中郁次郎先生の本を読んで、トップダウンじゃない組織の話を「そうだそうだ」と思っていたんですが、日本の組織がなかなかそうじゃない事は学んでいた。でもスクラムだとできるんです。ボトムアップの組織。上司が一歩下がって支援するチーム。実は、そこまでに出会ったうまい上司はみんなそうやっていたんですけどね。個人スキルとして。そういうのを「フレームワーク」として、再現できるようになった。説明できるようになった。
伝統的なトップダウン組織のイメージ -- 社長が考えた会社全体のプランを、本部長や部長が分割し、次長や課長が実行計画して、社員がやる、というモデルは通用しないってことを学びました。だって変化の激しい業界では、社員が一番詳しいんですもん。先が読めるのは社員。情報共有をレポートラインに依存してしまうと、お客さんや技術的に学んだ結果得られた「兆し」が、他の部署の人達に伝わらなくなる。一方でコミュニティだとダイレクトに伝わるし、みんなでアイデアだしできる。

- 作者: 野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 単行本
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一人称からの組織変化
じゃあどうやったら、そういうチームが作れるのかと。そこでチェンジエージェントのやりかた勉強になります。アジャイルのコミュニティに顔を出していると、すでに会社を変えちゃったチェンジエージェントが何人もいて。あるとき、「Fearless Change」という本を紹介してもらいました。その本の読書会が始まって、読むようになって、だんだんと引き込まれました。
[rakuten:rakutenkobo-ebooks:10159069:detail]
組織論って、あまり一人称、とくにふつうの社員の視点からどうしたらいいかはあまり書いてないんですけど、「Fearless Change」は完全に一人称。普通の自分がなにかをはじめちゃうときの指南書なんです。最初はただ情熱だけで、権限も予算も仲間もない。でも、「情熱こそが重要」と力強く、やさしく背中を押してくれます。アジャイルですから、失敗を許容しながら学習し、だんだんとうまくなって行ったり、続ける事で信頼してもらえるようになる。徐々に他の人もそんな気になる。さらに社内や社外の出会いが重なっていきました。
他人に何かを理解してもらうには、自分が理解したのと同じくらいの時間ときっかけをあげなければいけない。
チェンジマネジメント3.0という本を訳しました。
人が、そうなるには、きっとそれぞれに理由がある
チェンジエージェントになった人は、なにかすごい屈辱とか、残念な事を体験しているケースが多いなぁ、と気付きました。そういうお話を聞くのがとても勉強になります。NHKのプロフェッショナル仕事の流儀、とか見ていると、かならず過去に体験した、きっかけになった体験を紹介するじゃないですか。
きっかけを頂いて今の会社でアジャイルの適用を支援することになったのですが、背中を押してくれたのは、あるチェンジエージェントの書いた一冊の本でした。プロフェッショナル仕事の流儀でも紹介された、瀬谷ルミ子さんの本です。

- 作者: 瀬谷ルミ子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/09/20
- メディア: 単行本
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その経緯はこの辺で書きました。今年の楽天テクノロジーカンファレンスで、瀬谷さんにお話しいただけそうです。すごく楽しみ。全然コンピュータ技術の話じゃないんですけど、チェンジエージェントの話として、組織や回りをいい方向に変えていくにはどうしていったらいいのか。目の前のコンフリクトをどうするか。8月中には募集が始まると思いますので、ぜひ皆さんご来場ください。 @rakuten_tech をフォローしていただければ告知されると思います!