実行委員、Women in Agile、品川アジャイル、アギレルゴコンサルティング
このエントリは、Reginal Scrum Gathering Tokyo 2022(以下RSGT2022)に向けたアドベントカレンダーの記事として書かれたものです。
それなりに年を取ってきて、自分は何をしている人だろうか?という問いがどんどんあいまいになっていくことに、どんどん慣れていく人生を過ごしています。そういう人も多いんじゃないかと思います。「この人、名前は知られてるけど、何ができる人なんだろう?」という痛い視線を感じることもなくはないです。実際、私も、わからん。
ということで、Regional Scrum Gathering Tokyo 2022 では、実行委員業のほか、ご採択いただいた講演を一つ、それからWomen in Agile としてナイトセッションで話題を一つ、あと、品川アジャイルとして配信周りを担当していきます。アギレルゴコンサルティング株式会社としては、2011年から10年以上にわたって Scrum Alliance 認定スクラム研修をずっと提供させていただいている恩返しの意味を込めまして、スポンサーをしています。なんかいろいろありますね。準備ちゃんとできるんでしょうかね。
自分としては、だいたい以下のルールでやることを選んでいます。
- 独自性 = すなわち、自分しか興味持たない部分に戦力を投入する
- シンプルさ = すなわち、あまり複雑な技術を使わない。作りこまない
- 協調作業 = すなわち、必ず誰かとやる。相手にとってメリットのあることを
あと、選択ではなく実施に際しての重要なこととして、ローコストで実行する道が考えられないことは「今はやらない」ということもあります。またそのうちできるかもしれないので無理しない。
実行委員業2022
- 独自性: 誰かがやっとけばほかの人は楽しめる
- シンプルさ: 継続的にできることを積み重ねる。ムダを落としていく
- 協調作業: 実行委員、スタッフ、講演者、スポンサー、参加者の皆さんと
今回の実行委員業は具体的にはたぶん6月くらいから始動しています。本当は10か月前である3月くらいには基調講演を確定させたいなと思っているんですけど、ちょっと遅れてしまいました。できれば日本に来日してくれる人を、と思っていたんですけど、コロナの状況は先がよめないので、オンラインだとしても問題ない形ですすめてきまして、今回は3名とも北米からのオンライン講演となりました。事前録画収録ではなく、英語セッションは当日通訳付きで提供する予定です。
チケットはオンサイトとオンラインをいつでも選択可能な通常チケットと、オンサイトを選択できないオンライン専用チケットを用意しました。食品ロスを軽減するため、事前のアンケートはさせていただくと思いますが、基本的にはいつでも、オンラインとオンサイトを選択できます。前回と同様の対応ですが、コロナの状況が読めない状況では、これが最善と考えています。ありがたいことに、本年も順調に通常チケットは完売いたしました。会場の収容人数は、昨年同様、最大でも定員の50%としています。
実行委員はすべてボランティアで活動していますので、議論や作業の効率性を重視しています。基本的に、なるべく前回実績を活用するべく、「明示的に議論していないことは昨年と同じ仕様にする」という方針です。定員50%も今回は特に議論していないので、前年同様ということになっています。会場の御茶ノ水ソラシティさんも3年目になりますね。昨年はコロナ対策のためのリモートカンファレンス対応ということで、新たに回線の増強などをしていただき助かりました。
昨年、スタッフ作業中に発明された「尊敬してまーす」とインカムで伝える風習があるのですが、本年も運営のFacebookのコメントで飛び交っています。誰かが何か作業を自発的にしてくれたら、感謝を込めて「尊敬してまーす」というのを表明します。半分、冗談のように使っていて、常に微笑みを巻き起こしていますが、尊敬に嘘はないと考えています。日本人はなかなか「あたりまえのこと」を表現することを省略しがちなので、改めて尊敬を表明する風習は、とても心地よいものだな、と感じています。スクラムマスターの皆様、パクっていいですよ。
講演 - スクラム the ORIGIN : Jeff Sutherland - Roots of Scrum (2005) を語るナラティブ
- 独自性: 案外これまでだれもやってない
- シンプルさ: 過去の講演に沿って話すだけ
- 協調作業: 過去のジェフ・サザーランドさんと。壁打ちも繰り返す
今回は、2005年に行われたスクラムの共同発明者ジェフ・サザーランド博士による、スクラムの源流についての講演について、できる限り原典に忠実に伝える試みをする予定です。同タイトルの講演を、2011年の初来日で、Innovation Sprint 2011 の基調講演として行っていただいたのですが、残念ながらビデオを録画できなかったため、それ以前の講演から同内容を探っていきます。
スクラムを着想するにあたって、どういったものを参考にしたのか?最初のスクラムはどういったものだったのか。スクラムガイドには記載されていない、源流を探る内容になっています。それを知ったからと言って、スクラムをうまく適用できるようになるというものではないでしょうけれど。生物学の世界では「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉があるそうです。ある生物が生まれる過程は、その進化の過程で経てきた様々な生物をトレースするように行われるということです。ジェフさんがスクラムを着想してやってみた、という情報の中には、ソフトウェアやものづくりの進化そのものも織り込まれているのではないかと思います。その知識を深めることで、さらに皆さんのチームのスクラムの進化にも役立つかもしれません。
個人的には、スクラムフェス大阪でスクラムの源流となる「The New New Product Development Game (新しい新製品開発のゲーム)」(竹内・野中論文)をみんなで読みました。スクラムフェス三河とXP祭りでは、認知科学の領域で協調作業を研究した論文「Constructive interaction and the Iterative Process of Understanding(建設的相互作用と理解の反復的プロセス)」(三宅なほみ「ボビンの論文」)をみんなで読みました。偶然にも同じ1986年に発表されたこの二本の論文は、当時の組織論と、認知科学におけるコラボレーションの研究の代表例と考えています。35年前の論文ではありますが、ほとんど色褪せず、現代の私たちのスクラム実践に示唆を与えてくれるものだったと思います。
スクラムの最初の実践は1993年で、この野中竹内論文を参考にしたと、ジェフさんは語っています。また、主体的なチームメンバーによる協調的なコミュニケーションを活用する点は、強いリーダーによる専制的な組織運営とは、真逆の文化を感じさせます。また、トヨタ自動車の文化を参照している点で、日本人にとっては理解しやすい内容になっていると思います。
実は、こうした過去の資料や講演をとりあげるようになったのは、昨今の機械学習や音声認識技術の向上が背景にあります。このセッションの準備においても、そうした技術を活用しています。10年前にも同じ元資料は存在してたのですが、そうした原典に、容易にアクセスできるようになったことは、現代の我々にとって、日本語と英語の垣根を超えるための、非常によい機会になっていると感じます。
以前は「自分の運営するカンファレンスでは講演しない」というルールを自分に課していたのですが、最近はスタッフ業もこなれてきたので、講演もできるようになってきました。今回もプロポーザルを出しまして、ありがたいことに多くのLikeをいただきまして、採択されました。(実行委員なんだから自分で採択されるようにできるだろう、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、このトークに関しては完全にLikeの数で採択されていて、忖度も関与もしていません。)
ナイトセッション: Women in Agile
- 独自性: 案外これまでだれもやってない
- シンプルさ: アジェンダなしで話すだけ
- 協調作業: WiAメンバー4人で
初日(1月5日)の夕方には、通常のセッションのあと、懇親会の代わりにナイトセッションという枠を用意しています。特にアジェンダを用意していませんが、あらかじめ提案された内容について、Open Space Technology のように、カジュアルな雑談をしよう、というセッションです。
https://confengine.com/conferences/regional-scrum-gathering-tokyo-2022/proposal/16210/night-sessions
Women in Agile は、職場や社会における女性や多様性についての課題に取り組むコミュニティ活動として、世界中で行われているものです。Women Developers Summit で日本の有志のセッションを行いました。引き続き Women in Agile を立ち上げていくべく、カジュアルな議論を行っていきます。女性はもちろん、それ以外の方の参加も歓迎です。ぜひ、立ち寄ってみてください。
そのほかに、オンライン配信について語り合うセッション、地方コミュニティについてのセッション、新しく参加した方向けの知り合いを作るセッションなどが行われます。他にもセッションのテーマを追加することもできますので、興味あるテーマを見つけて、参加してみてください。
品川アジャイルによる配信 - よりシンプルに
- 独自性: 手間も機材費用もかかるのでボランティアでやる人がいない
- シンプルさ: 放送機材ではなくパソコン技術を活用
- 協調作業: 品川アジャイルの皆さんと
すでにばやしさんがブログに書いてくれている通り、今年も品川アジャイルとして、ハイブリッドカンファレンスを支えるリモート配信を行います。昨年の反省を活かしながら、さらに新しく発表された機材を活用して、よりシンプルでスリムな配信体制を実験してきました。これがうまくいくと、多くの勉強会のハイブリッド開催に活用できるのではないかと思います。機材も含め、ぜひ参考にしていただければと考えています。
アギレルゴコンサルティング株式会社スポンサーセッション
- 独自性: アギレルゴはそもそも人が少ない
- シンプルさ: 今回は松元さんにおまかせ(丸投げ)するだけ
- 協調作業: 松元さん、松浦さんと
アギレルゴのスポンサーセッションとしては、松元さんに話していただくことになりました。
https://confengine.com/conferences/regional-scrum-gathering-tokyo-2022/proposal/16242
本年も大変盛況な、認定アジャイルリーダーシップ研修に関連して、リーダーシップ論の最新の話をしてくれるようです。チームとしてスクラムを行うだけでなく、組織に新しい仕組みを導入するリーダーとして、どのようにふるまうと良さそうなのか、大企業でアジャイル適用から経営企画までこなしてきた、松元さんなりの視点で整理してくれそうですね。
ゲーム業界の大規模カンファレンス「CEDEC2021」で、松元さん、松浦さんと、リーダーシップについてのセッションを提供しました。こちらも大変盛況で、多くの好意的なフィードバックをいただきました。
ということで、RSGT2022でお会いしましょう!
- 独自性: ハイブリッドカンファレンスとして二年目の実績
- シンプルさ: チケットを買うだけで参加できる
- 協調作業: 実行委員、スタッフ、講演者、スポンサー、参加者の皆さんと
ということで、今回のRSGT2022で私が担当する予定のことや、その関連のお話をまとめました。会場で、Discordで、みなさまのご参加をお待ちしております。
ちなみにこのブログの草稿は、「閃光のハサウェイ」という映画を一本聞き流しながら書きました。約100分の集中時間確保に使っています。「ハサウェイタイマー」と呼んでいるんですが、他の人におすすめしたところ、「やってみたけど、全然集中できない」というフィードバックをいただいております。あれ、おかしいな。
全然関係ないですけど、閃光のハサウェイについて、プロデューサーの小形さんがどういう考え方で進めているかを話しているインタビューです。