OKRが徐々に浸透していますが、その本質は従来型の目標設定と大きく違うため、なかなか理解や着実な実行が難しいのかなと想像しています。トップダウンの組織目標と、実際に作業を進めるチームの目標をどのようにすり合わせるか(アラインメント)や、透明性を用いて協力を生み出す、給与評価と切り離す、といった重要な側面は、従来の目標管理システムの運用とは真逆になるため、十分に検討しないと混乱を呼ぶのかもしれません。OKRの形式(目標と結果指標)はシンプルなのですが、ではいくつくらいの目標をどれくらいの期間で、チーム目標なのか個人目標なのか、などを十分に説明した資料が広く読まれていない可能性も感じます。

そこで今回は、OKRの原典ともいえるドーア著『Measure What Matters』と、YouTubeで無料視聴できる2つの一次ソースを手がかりに、OKRの本質を掘り下げてみたいと思います。
「実行こそが最も重要だ」― OKRの誕生
1975年、若きエンジニアのドーアはIntelでグローブにこう言われました。「何を知っているかはほとんど問題ではない。最も重要なのは実行だ」。グローブが編み出したOKR(Objectives and Key Results)は、目標(Objective)と主要な結果(Key Result)を対にしたシンプルな目標設定システムです。目標は方向性を示し、KRは測定可能でなければなりません。やったのか、やらなかったのか。イエスかノーか。シンプルです。
1999年、ドーアはこのシステムをGoogleに持ち込みました。当時のGoogleは社員40人のスタートアップです。それ以来、四半期ごとに全社員がOKRを書き出し、評価し、公開しています。Google社内ディレクトリ「MoMA」では、各社員の電話番号やメールアドレスの横にOKRへのリンクが表示され、今四半期だけでなく過去の四半期のOKRと評点も誰でも閲覧できるそうです。

OKRの三層構造:Why → What → How
ドーアはOKRを「透明な器(transparent vessels)」に例えています。WhatとHowで器の形を作り、そこにWhyを注ぐ。「本当に大切なのは、その器に注ぐ'なぜ'だ」と。
TED TalkではNunaのCEOジニ・キム(Jini Kim)の物語が紹介されています。9歳で弟をメディケイドに登録した原体験がミッションとなり、それが会社となり、連邦政府のメディケイドDBプロジェクトを勝ち取る原動力となりました。個人的なWhyが組織の目標の発射台になるのです。リーダーは「何を」だけでなく「なぜ」も伝えなければなりません。社員はやりがいを求め、自分の目標が会社のミッションとどう結びつくのかを理解したいと思っています。
▶ Objectiveは「曖昧な思考に対するワクチン」
良いObjectiveの条件は「重要・具体的・行動志向・鼓舞する」の4つです。ボノのONE組織は「世界最貧国の債務免除」「HIV治療薬への普遍的アクセス」を掲げました。ボノは「OKRは狂気を育て、リスクと信頼の環境を与えてくれる。そういう構造があれば、魔法はすぐそこにある」と語っています。書籍ではスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の言葉が引用されています。
スティーブ・ジョブズは「イノベーションとは1000個の提案に対してノーと言いつづけることだ」と語っていた。通常、四半期OKRは3~5項目であるのが理想的だ。もっと多くの目標を盛り込みたくなるかもしれないが、それはたいていうまくいかない。目標が多すぎると、本当に重要な項目へのフォーカスが弱まったり、他のおもしろそうな課題に注意が向いてしまうリスクがある。 (『Measure What Matters』 第4章 )
▶ Key Result ― 数値目標と品質目標を「対」にする
KRは「具体的・期限付き・測定可能・検証可能」であるべきです。メリッサ・マイヤー(Marissa Mayer)の言葉を借りれば「数字がなければKRではない」。Chromeを率いたサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)は「ユーザー数」という1つのKRに3年間こだわり、2000万→5000万→1億と引き上げ続けて1.11億を達成しました。
しかし書籍は「フォード・ピント」の悲劇も警告しています。一面的な数値目標(重量2000ポンド以下・価格2000ドル以下)を追求した結果、安全性が犠牲となり大規模リコールに至りました。ウェルズ・ファーゴの不正口座スキャンダルも同様です。グローブは「数値目標と対になるKRは、仕事の品質を示すものでなければならない」と説いています。例えば「新機能3つ」には「各機能あたりバグ5件以下」を対にする、といった形です。
OKR実例① Intel「クラッシュ作戦」(1980年Q2)
ドーアがIntelで経験した全社OKRの実例です。モトローラとのマイクロプロセッサ競争において、8086の性能優位を証明するためのOKRでした。採点結果は平均0.625――まずまずの評価です。Intelでは100%達成がありえない水準で目標設定するのがルールでした。
OBJECTIVE|全社目標 「8086」を業界最高性能の16ビット・マイクロプロセッサ・ファミリーにする
KEY RESULTS
「8086」の性能優位性を示すベンチマークを5つ開発し、公表する(0.6)
「8086」ファミリーの全製品をリリースし直す(1.0)
8MHz版の製造を開始する(0)
演算コプロセッサのサンプルを6月15日までに製作(0.9)
平均スコア: 0.625(まずまずの評価)― 書籍『Measure What Matters』第4章より

OKR実例② クラウ / Blogger PM(Google)
クラウはGoogle Venturesのワークショップで、自身のBlogger PM時代のOKRを公開しています。Bloggerは世界第8位のWebプロパティでありながら、社内では忘れられた存在でした。クラウは「収益成長を加速させる」を毎四半期の第一目標に置いていました。
OBJECTIVE 1 Bloggerの収益成長を加速させる
KEY RESULTS
収益化タブをローンチし、AdSense導入をワンクリックにする(1.0)
AdSenseホストチャネルターゲティングを実装し、RPMをX%向上(0.3)
収益に関する実験を3つ実施し、成長ドライバーを特定(0.7)
クラウのコメント: KR2は実装したがRPMへの影響が小さく失敗。KR3は3実験中2つしか有用な学びを得られなかったとのことです。

OBJECTIVE 2 Bloggerのレピュテーションを改善する
KEY RESULTS 1. 業界イベントで3回講演する 2. Blogger初期からのトップユーザーに個人的に連絡し、関係を構築 3. Blogger 10周年記念のPR施策を統括・実行する 4. DMCA対応プロセスを改善し、誤ったブログ全体削除を解消
YouTube動画 [2] (47:32付近) で詳細と採点が解説されています

OKR実例③ ドーアの会議OKR(1999年)
ドーアがGoogle初のプレゼンを行ったとき、彼自身がその会議に対してOKRを設定して臨みました。これ自体がOKRの好例です。
OBJECTIVE|ドーアの Google 初プレゼン(1999年) 計画のための実用的なモデルを構築する
KEY RESULTS
プレゼンテーションを時間通りに完了する
3カ月分のサンプルOKRセットを完成させる
経営陣に3カ月の試験運用への同意を得る
クラウの講演でドーアのオリジナルスライドとして紹介されています。YouTube動画 [2] (7:43付近)

グローブが示したOKRの要諦 ― 7つの原則
書籍の中でドーアは、Intel時代にグローブから学んだOKRの要諦を7つにまとめています。健全なOKR文化の本質――徹底的な知的誠実さ、利己心の排除、チームへの完全な忠誠――はグローブの人格そのものだとドーアは書いています。以下、その7つの原則をご紹介します。
▶ ① 絞り込む(Focus)
「ひとにぎりの目標を厳選することで、何にイエスと言うべきか、何にノーと言うべきかが明確に伝わる」とグローブは書いています。1サイクルあたりの目標は3〜5個、各目標のKRは5個以下です。クラウは「ある四半期に7つの目標を持ったことがあるが、あれほど消耗したことはない。明らかに広げすぎだった」と振り返っています。OKRがしっかり機能している組織では、上司は指示の代わりに問いかけます。「一番重要なことはなんだ?」と。
▶ ② 目標はボトムアップで
組織と個人の意欲を引き出すには、上司と相談しながらOKRのほぼ半分を自分で決めさせるとよいとされています。すべての目標をトップダウンで設定すると、意欲は削がれてしまいます。ドーアのオリジナルデッキでは60%がボトムアップとされ、クラウも「半分以上が個人から上がってくる必要がある」と強調しています。グローブは「最前線の人々は最も価値のあるイノベーションにいち早く接する」と語りました。
▶ ③ 押しつけない(No dictating)
OKRは優先事項を設定し、その進捗をどのように測るかを決めるための協力的な社会契約です。会社全体の目標についての議論がまとまっても、それに付随するKRについてはまだ議論する必要があります。ドーアのデッキでも「全員が合意しなければならない。命令ではない」と明記されています。目標達成を最大限促進するには、協力的な合意形成が不可欠です。
▶ ④ 常に柔軟な姿勢で
事業環境が変化し、現在の目標が現実的ではない、あるいは妥当性を失ったと思われるときには、サイクルの途中でもKRを修正したり、場合によっては捨てたりしてもよいとされています。クラウも「年間OKRは石に刻まれたものではない。方向を示す援助であり、目隠しではない」と述べています。ただし、性急に放棄したOKRからは何も学べません。打ち切る場合は必ず振り返りを行うことが大切です。
▶ ⑤ 失敗を恐れない(Dare to fail)
「全員がすべては手の届かないような目標に向かって努力するとき、アウトプットは伸びる傾向がある」とグローブは書いています。野心的なストレッチ目標は、困難ではあるが達成可能なものにすべきです。Googleでの採点のスイートスポットは0.6〜0.7。クラウは「常に1.0を取っているなら、それは破壊的にやっているのではなくサンドバッギングしているのだ」と明確に述べています。ボノの言葉を借りれば「OKRは狂気を育て、リスクと信頼の環境を与えてくれる」のです。
▶ ⑥ 手段であって、武器ではない
OKRは個人の仕事のペースを管理するためのものであり、勤務評定の根拠となる正式文書ではないとグローブは書いています。GoogleでもOKRはボーナスや昇進の評価基準ではありません。クラウは「Googleでの5年間の年次評価で、OKRが評価の標準要素になったことは一度もない」と証言しています。報酬と結びつけるとサンドバッギングが起き、ストレッチゴールの文化が損なわれます。また「フォード・ピント」の悲劇が示すように、数値KRには必ず品質KRを対にすることが重要です。
▶ ⑦ 辛抱づよく、決然と
どんなプロセスにも試行錯誤はつきものです。グローブが講義で語ったように、「Intelは何度も躓いた。その基本的目的が何なのか、十分理解していなかったからだ。時間の経過とともに、少しずつうまくできるようになってきた」。システムが軌道に乗るまでに4〜5四半期のサイクルを繰り返す必要があるかもしれません。目標設定の筋肉を十分身につけるには、さらに多くの時間がかかるでしょう。クラウも「たとえ5人の会社でも、できるだけ早く始めるべきだ。その規律がもたらす価値は計り知れない」と語っています。
ボトムアップ ― 最前線からの目標設定
かつて産業界では、目標はシナイ山の石碑に刻まれた十戒のように、組織図の上から下へと伝えられていました。しかし純粋なトップダウンには4つの弊害があります。機敏性の欠如――中規模企業でも6〜7階層あり、全員が上からの指示を待っていたら目標設定サイクルに何週間もかかります。柔軟性の欠如――カスケードの手間がかかりすぎて、サイクル途中での見直しを躊躇してしまいます。コントリビューターの軽視――最前線の声が届きません。組織連携の一面化――垂直方向のみで水平連携が生まれません。
Googleのラズロ・ボック(Laszlo Bock)は「目標はパフォーマンスを高める。しかし上から下への目標伝達に膨大な時間をかけるのは逆効果だ」と著書『ワーク・ルールズ!』に書いています。
健全な組織は目標の一部をボトムアップで設定します。トップダウンとボトムアップの比率はたいてい半々だとドーアは言っています。クラウも「半分以上が個人から上がってくる必要がある。トップダウンの指示が多すぎると、人々のインスピレーションが損なわれる」と語っています。

▶ ポール・ブックハイト(Paul Buchheit)とGmail ― ボトムアップの好例
GoogleのエンジニアブックハイトはLinuxのメールクライアントに不満を持ち、「メールを検索可能にできないか」という個人的な問題意識から開発を始めました。やがてそれはGmailとなり、Googleの核心的な戦略目標の一つになりました。個人のボトムアップから会社レベルのOKRへと成長した好例です。
上意下達の逆は、グーグルの実践する「20%ルール」かもしれない。これは技術者に週1日、本業以外のプロジェクトに自由に取り組むことを認める制度だ。とびきり優秀な社員たちをくびきから解放することで、グーグルは世界を一変させた。2001年にはポール・ブックハイトが20%ルールに基づき「カリブー」というコードネームのプロジェクトをスタートさせた。それは今、世界最大のウェブベースのメールサービス「Gメール」となっている。 ( 『Measure What Matters』第7章「意識を合わせる――北極星に向けてのアライメント」)
アライメント ― 目標の透明性が協力を生む
会社全体の目標が定まったら、そこからが本番です。OKRは計画段階から実行段階へ移行し、管理職もコントリビューターも日々の活動を組織のビジョンと結びつけます。これが「アライメント」です。HBRによると、戦略にアラインした企業は同業他社の目標に入る確率が2倍だそうです。しかし「会社の戦略と自分に期待されていることを理解している」と答えた従業員はわずか7%にとどまっています。
透明性は協力の出発点になります。社員Aが目標達成に苦労していれば、公開された進捗を見た周囲がサポートを申し出ます。複数の人が同じ仕事に取り組む重複も解消されます。
クラウは自身の体験をこう語っています。「YouTubeホームページのPMだったとき、他チームから『ホームページでプロモしたい』と依頼が来る。相手が私のOKRを見れば、会話前に私の答えが予測できる。依頼が私の目標と合致していれば、協力は容易。そうでなければ、その四半期では難しいとわかる」。OKRの公開性が自然な調整メカニズムとなるわけです。
▶ 部門横断と「暗黙の依存関係」
書籍ではアンダーアーマー傘下のMyFitnessPalの事例が紹介されています。買収後の幹部OKRミーティングで、eコマース、メディア営業、その他のチームがそれぞれ特定の成果を期待していましたが、他チームが何を求めているかはまるでわかっていませんでした。どこを見ても「暗黙の依存関係」があったのです。アライメント実現まで18カ月かかりましたが、OKRがなければもっとかかっただろうとされています。
▶ クラウ と YouTubeログイン目標
クラウはYouTube PMとして、サイトにログインするユーザーの割合が低いという問題に取り組みました。CEOラリー・ペイジに相談したところ、期限9カ月ではなく3カ月とされました。全社の最上位OKRになったことで「会社のあらゆる目が僕らのチームに注がれるようになった」そうです。別の四半期では「会社の5〜6つのOKRのうち2つを自分が担当した。それは素晴らしいが、3万人の会社では少し怖い」とも振り返っています。ボトムアップの問題提起がトップのコミットメントと結びつき、全社アライメントが実現した好例です。
期中のトラッキングと振り返り
OKRは設定したら終わりではありません。目標からずれるのを防ぐには定期的なチェックが不可欠です。ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)は「行動計画がなければ、経営者はただ事象の囚われ人にされてしまう」と書いています。トラッキング時の対応には4つの選択肢があります。「継続」(計画どおり)、「更新」(環境変化に応じて修正)、「開始」(新OKR追加)、「停止」(有用性を失った目標の廃止)です。OKRはガードレールであり、束縛の鎖ではありません。目標が非現実的になったら打ち切りますが、必ず振り返りを行います。
▶ 採点と自己評価 ― 数字だけでは不十分
Googleは0から1.0の尺度で採点します。0.7〜1.0が青(完了)、0.4〜0.6が黄(進捗あり)、0〜0.3が赤(実のある進捗なし)です。ただし客観的スコアだけでは不十分です。書籍では「新規顧客を10件獲得」という同じKRに対し、進捗が70%でも「市場が低迷した中での努力の結果」なら0.9、一方「100%達成だが8週間で目標が低すぎた」なら0.7といった例が示されています。OKRをそのまま評価ランクに使うのではなく、状況に応じたフィードバックとチームでの議論のほうが重要です。
▶ ふりかえりの重要性
「われわれは経験からは学習しない。経験を振り返ることで学習するのだ」とジョン・デューイ(John Dewey)は言いました。サイクルの締めくくりでは、「どのような障害があったか」「成功要因は何か」「次にどう生かすか」を振り返ります。クラウは「四半期末にOKRを振り返ると、その年に何をしたかを数分で把握でき、会社へのインパクトを要約するのが非常に簡単になる」とも述べています。そして足を止め、チームの進歩をかみしめ、成果を祝いましょう。みんな頑張ったのですから。
補足 ― OKR導入時に陥りやすい落とし穴
▶ 補足1:カスケード(上意下達型目標展開)の危険性
OKRを導入するとき、多くの組織が最初に試みるのが「カスケード(cascading)」です。CEOのOKRを部門長のOKRに分解し、それをさらにチーム・個人へと滝のように降ろしていきます。一見合理的に見えますが、ドーアは書籍の中で「すべての目標がカスケードされると、プロセスは機械的な塗り絵のような作業になる」と明確に警告しています。
純粋なカスケードには4つの弊害があります。第一に機敏性の欠如――中規模企業でも6〜7階層あり、全員が上からの指示を待っていたら目標設定サイクルに何週間もかかります。第二に柔軟性の欠如――カスケードの手間がかかりすぎて、サイクル途中での見直しを躊躇してしまいます。少しの修正でも下流の人々に負担を強います。第三にコントリビューターの軽視――厳格なトップダウンでは最前線の声が届きません。第四に一面的な連携――垂直方向のアライメントは得られますが、部門横断の水平連携が生まれません。
Googleのラズロ・ボックは著書『ワーク・ルールズ!』で「目標はパフォーマンスを高める。しかし企業の上から下へ目標を伝達するのに膨大な時間をかけるのは、むしろ逆効果だ」と書いています。クラウも後年の振り返りで2017年に「個人OKRはスキップすべきだ。特に若く小さな会社では冗長だ。会社レベルとチームレベルのOKRに集中すべき」と訂正しました。また、フェリペ・カストロ(Felipe Castro)は2012年のクラウの動画が「純粋なトップダウンのカスケードを示してしまった」ことを指摘し、動画の引退を提案したほどです。
ではどうすればよいのでしょうか。ドーア自身が書籍で推奨するのは、カスケードとラダリング(ボトムアップ)の両方を組み合わせることです。「健全なOKR環境では、アライメントと自律、共通の目標と独創の自由のバランスが取れている」と書籍にあります。組織のOKRの約半分をトップダウンで、残り半分をボトムアップで設定し、それを透明性のある公開を通じて水平方向にも接続します。これが書籍の描く「ネットワーク型」のアライメントです。
▶ 補足2:OKRは長期計画ではない ― 四半期サイクルが基本
OKRとドラッカーのMBOの根本的な違いの一つがサイクルの長さです。MBOは年次ですが、OKRは四半期または月次でまわします。グローブはこう指摘しています。「フィードバックに実効性を持たせるには、評価対象となる活動が終わった直後に行う必要がある。したがってOKRシステムは、事業計画が年単位であれば、それに対応するOKRは少なくとも四半期単位でまわすべきだ」。
ドーアは「3カ月先に締め切りが見えていれば、仕事を先延ばしにする気持ちにはなれまい」とも書いています。また「ルールは絶対的なものではなく、あらゆる組織が採用すべき単一のパターンはない」とも述べており、技術チームなら6週間サイクル、アーリーステージの会社なら月次サイクルも有効としています。要は「あなたの会社の事業環境と文化に適したサイクル」を見つけることです。
ただし例外もあります。TED Talkで紹介されたピチャイのChromeの例では、「最高のブラウザを作る」というObjectiveは3年間維持されました。しかしKR(ユーザー数)は毎年更新され、2000万→5000万→1億と引き上げられています。つまり「長期的な方向性を示すObjectiveの下に、四半期ごとにKRを刷新する」という二層構造は許容されます。クラウも「年間OKRは石に刻まれたものではない。方向を示す援助であり、目隠しではない」と述べています。 [f:id:wayaguchi:20260403094644p:plain]
重要なのは、OKRを「Q1はこれ、Q2はこれ、Q3はこれ」という年間ロードマップのように使わないことです。OKRはその四半期に最も重要なことに集中するためのツールであり、プロジェクト管理や中期計画の代替ではありません。
YouTube 参照ソースガイド
今回の記事は、以下の3つのソースを中心に構成しています。いずれも無料で視聴・閲覧でき、OKRの一次情報に触れることができます。
[1] ドーアTED Talk "Why the secret to success is setting the right goals" (約11分) https://www.youtube.com/watch?v=L4N1q4RNi9I OKRのWhy/What/HowをNuna・ボノ・Chromeの実例で凝縮した動画です。OKR入門に最適です。
[2] クラウ / Google Ventures "How Google sets goals: OKRs" (約82分) https://www.youtube.com/watch?v=mJB83EZtAjc ドーアのオリジナルデッキ(1999年)を基にGoogleでのOKR運用を詳解しています。クラウのBlogger OKR実例と採点、四半期サイクルの実務が具体的に語られています。※2017年にクラウ自身が個人OKR非推奨等を訂正しています。
[3] WhatMatters.com ― Google OKR Playbook (ドーア公式サイト) https://www.whatmatters.com/ 書籍の補足資料、OKRテンプレート、企業事例集、OKR Explainedオンラインコースを無料公開しています。
新しい決算期が始まり、新たな目標設定を行なっている会社さんも多いかと思います。制度をまるっと変えるのは現実的ではないでしょうが、OKRの運用は制度の整備以上に、目的と文化を理解することが大事なのではないかと感じています。トップダウンで人を動かすには、世の中が複雑すぎるのです。
Do you have the right metrics?
時間を取って、あなたの価値観、目標、そして主要な結果を書き出してください。今日やりましょう。 ― ドーア



























