大きめの企業でスクラムで回し始めて、ビジネスもうまくいくようになってきたところで、急に訪れがちなのが「体制変更」です。これまで陰に日向に支援してくれた上司や役員の方がいなくなって、新しい方がいらっしゃるという。ここで苦労したり、諦めてしまう例が多いと感じます。
答えはないのですが、雑多な考えをここに記録しておこうと思います。まとまってもいないので、無駄に長くてごめんなさい。
うまくいく確率は論理的に50%を下回る
「新しい人とうまくいく可能性もあるので、50:50じゃないの」という意見もあるかもしれません。しかし、なにかを始めるときはだいたいうまくいきそうな上司や役員を選んで相談するわけです。しかし、人事異動で次に来る人は選べません。ですから、うまくいっていたことがうまく行かなくなったり、説明を求められたり、基本、いままでよりは手間が増えることは確実ですし、その結果、フラストレーションが溜まりがちです。
良さそうな上司が来たけど、最初だけだった、というケースも聞きます。外面がよいので上司の上司受けは良かったんでしょうけど、意外とチームの要望に対応できなかったり、(酷ですが) 十分な人生経験が不足していて器が小さかったり。付き合ってみると人間そう都合よくはできていなかったりするのでしょうね。成長には時間が必要ですが、本人や周りが待ってくれるとも限りません。まだ対象領域の業務知識があれば、議論ができるところなのですが。
上司ガチャ
最近はソーシャルゲームの用語から、上司ガチャというようです。組織変更に関していえば上司になる人も被害者なんじゃないかと思います。お互いがガチャ。
博士の教え: くそったれ上司には近づくな
スタンフォード大学の経営学の権威ロバートサットン教授はこの本で、エネルギーを奪い、惨めな思いになるようなクソったれ上司には近づくなと言っています。身もふたもないですがそれくらい強力だということでしょう。話が通じない人は変わりようもないですしね。また、誰にでもくそったれの素養があるとも言ってます。
アメリカのいくつかの企業では360度評価を使って、問題のあるマネージャーを見つけ出せるようにしているようです。
日本の場合はメテオフォール感ありますよね。ご神託が降ってくる。上司の文句言うのは他人のことを悪くいうみたいで嫌だし、自分が悪いような気がしてしまう。我慢する方がいいというアドバイスをもらうことも多いです。
マネージャーの仕事はチームの能力を最大化すること
マネージャーという役割は優れたチームの成果を最大化することです。マネージャーが生産の中心に来ることはありませんので、あくまで手助けするのが役割なのです。いなくても回るけど、それでいて、いることで価値を出す宿命があります。
皆さん知らないかもしれないが、この世界は実は、売上とそれを支える進捗が救いなんだ。進捗の源泉はアーキテクチャでありドメインモデリングでありシステム設計者だ。マネージャではない。
Microsoftのデベロッパーの河野さんもこう言ってました。
そういうデベロッパーがバラバラにやっているのに対して、「今はこっちじゃない。今フォーカスすべきはこっちだよ」とちゃんと指導してくれる、ディレクションをしてくれる。船のキャプテンと同じですよね。そこをしてくれる人がいないと、チームとして発散しちゃいます。
ポイントとして、常にマネジメント側から「なにがゴールか」というのをメッセージとして出し続ける必要があります。「我々がこうやるのはどうして必要なのか?」あるいは「これをやることでお客さんに喜んでもらえる。だからやろう」と。これって最初に言うだけじゃなくて、毎日のように言うんですね。
そこへ向かうためのマインドシフトが必要なのだそうです。
というのは、やっぱり日本的な考えだと、上司が指示して自分は「へへー」みたいなイメージがあったので。でも、そこで「上司とは自分のパフォーマンスを最大化してくれるための良きパートナー」だと(考えた)。そこってマインドシフトがすごく大事でした。
一方、Amazon創業者のジェフ・ベソズはこんなスタイルだそうです。謙虚でやりやすいリーダーが来てくれるといいですね。
「『多くの場合、正しい』を実践できているリーダーを観察すると、そこにはいくつかのパターンがあった。そうしたリーダーは他人の話をよく聞く。そして考えを頻繁に変える。政治家が頻繁に考えを変えるのは問題だが、リーダーにとっては必要なことだ。単に新しいデータを得たから考えを変えるだけではない。多くの場合、正しい判断ができるリーダーは、新しいデータがないときでさえも考えを変える」(ベゾス氏)
頭が硬くて、必要な知識を持っていないリーダーが上司に来た時には、緊急停止スイッチを押さないといけないのかもしれません。人を変えるのは、難しいか、とても時間がかかります。
これは最近になってスクラムが普及して云々とか、シリコンバレーがどうこうではなく、私が知る限り昔からできるマネージャーはチーム若手をそそのかすのが上手くて、報いるのも上手です。
うまくいっているのを壊さなければいいのでは
歯車が噛み合っている上司とチームのセットは貴重な存在ですので、なるべくなら変えないほうがよい、と思います。逆にいうと、そういうことを見る目を持たず、壊してしまう上司や経営陣の判断に注意すべきかなと思います。「見る目」くらいは期待したいですよね。
岩田 基本的には、その会社が
「得意なことをする集団であろう」
ということを目指すとしても、
人と人がいっしょに仕事をするためには、
最低限、苦手だろうがなんだろうが、
やってもらわないと困るということを
決めないといっしょに働けないんですね。
というときに、その「最低限のこと」を
なるべく小さくすることが、
経営者として正しいんじゃないかなと
わたしは思うんです。
HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN - 1101.com
文化のシャボン玉を守るにはリーダーの力がいる
マイケル・サホタ氏は、企業の中でアジャイルなどの新しい文化を普及させるには、Culture Bubble (文化のシャボン玉) を維持するべきだと主張しています。新しいことを行っている組織は、うまくいくと外部との衝突を起こしやすくなります。その際にリーダー(図上で一番上にいる人)は、とても重要とのこと。
ほかにも外部とのつなぎ役(Adapters)になる人たちがうまくふるまう必要があるとのことです。急速に膨らんだり、外からつつかれると、しゃぼん玉は弾けて、また小さなシャボン玉(組織関係なくいやりたい人たち)に戻ります。
アジャイル系のカンファレンスで常に参照される、社内政治といえばこの本です。
Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン
- 作者: Mary Lynn Manns,Linda Rising,川口恭伸,木村卓央,高江洲睦,高橋一貴,中込大祐,安井力,山口鉄平,角征典
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こちらの本は新規プロダクト開発の本なのですが、意外と社内説得の話が多くて、おもしろかったです。アダプターにお勧めかもしれません。
今日はアジャイルリーダーシップサミット
こうした組織運営についても、みんなでどんどんとうまくなっていけたらいいですね。今日行われるアジャイルリーダーシップサミットでも、こうした議論が行えるといいなと思っています。
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OSTでの議論の内容
当日の議論の内容を森雄哉さんがまとめてくれました。
二年後に来る上司ガチャの悪い影響を止める方法
- チームにとって上司にしてほしいことを書く(ディスクリプション
- 自分のチームの状態を話す(自分達ができることと、上司にやってもらいたいことを話す
- チーム側がマネジメントを受けているだけになっていないかをふりかえる
- 実はチームがクレクレ君になってない?
- 上司の上司と関わりを持って対応出来るようにしておく
- チームを鍛えまくる
- チームFA
ソシャゲに詳しい人の説明もあります。ありがとうございます!
上司ガチャ問題の対策をソーシャルゲームのガチャから考える - ミッションたぶんPossible