慶応大学SFCで行われた掲題のセッションにお邪魔してきました。
SFC始めてだったのですが、割と迷わずに行けました。
τ(タウ)という建物なのですが、館内マップのグラフィックスは数字で書かれており、学内の方のご苦労がしのばれました。
殴り書きなので数字など、細かいところはかなり怪しいですが、メモを置いておきます。ですます調すら混在してますがご容赦ください。
(以下、長: 長谷川さん、井: 井庭さん)
複雑系から認知科学、デザインへ
井: 今日の話はデザインと方法論。
長谷川さんとは10数年前に複雑系の学会で出会った。
この授業はパターンランゲージという実践知を書く方法を学びながら、
パターンランゲージを書いている
その中にはビジュアルデザインとかエクスペリエンスデザインの
チームもある
日々考えて、まとめて、デザインしている、アプローチとして
刺激になるのではないか。
長: 株式会社コンセントという会社をやっております。
Powers of Ten という映画がある。
寝ているシーンから一気に宇宙までいって、細胞までいく
10のn乗。イームズ夫妻が作った。
物理学に興味を持った。そのままずーっと、哲学と物理を学んでいた。
大学に入ったときに、物理をやりながら哲学をやる事は可能だろうという
事でそうした。
スーパーカミオカンデでニュートリノの衝突のシミュレーションを
作っていた。
光子一個から観測できるセンサーで、ニュートリノを観測する。
学部と院の6年間。
その後、認知科学に移り、人間の知能システムを解析する分野へ。
小さなアルゴリズムの組み合わせで脳の作用を作っているということを。
アルゴリズムであるエージェントを組み合わせて、全体のシステムとして
どうなっていくのか
ミクロのインタラクションを作っていく事で、社会を構成していく、
ということに気付いた。
それまで、社会には興味がなかった。モノの本質に興味があった。
しかし、感情や不完全情報での判断、いまは行動経済学と
いわれるような分野に興味があり、
ドン・ノーマン「誰のためのデザイン」、
リチャード・ワーマン「理解の秘密」に出会った。
リチャードはTEDを作った人。編集者。職業別電話帳の2重構造の
インデックスを発明した人。IAの概念を提唱した。
それを実際のデザインに適用すること。
約10年くらい前に、デザインの世界に飛び込んだ。
誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
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理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)
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情報アーキテクチャとの出会い
井: 非常に面白いですね。物理学から認知科学、デザインへ。
長: 僕としては一貫したストーリーなんですけども。
パソコンから、通信でネットワークされ ... という場にいたので、
僕がちょうど大学に入った頃にMacを買ったんですけども。
GUIというものが、認知科学という課題から、
どういう問題があるかとか、
背景的にそれをささえる問題があったと思います。
問題解決プロセス。
Observations, Frameworks, Imperatives, Solutions
こういうアプローチで解決されている事はあまりなくて、
建築の世界では、比較的このような方法を使われていて。
人間の話だと、バウハウスでは参考になる話があった。
グラフィックの世界では、こういった話がなくて。
当時アレグザンダーの本には出会っているんだけど、
パターン集という認識を持っていた。
組み合わせるためのパターンのライブラリという認識。
そのあと、リチャード・ワーマンの Information Architect
に出会った。
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そういう人が情報建築家なんだよ、という事を唱えた。
僕もなりたいなと。
Nathan Shedroff 「データ -> 情報 -> 知識 -> 知恵」
Data Information Knowledge Wisdom
なにかをしたいわけではなく、これを押し上げるということを
やりたい。
iPhone 4S の Siri。アメリカではこれまで最も満足度が高い。
日本では日本語でSiriが使えないのでわからないけど、
ちゃんと考えて必要な情報を出してくれる Siri のために
多くの人が 4 から 4S に買い替えている。
Webサイトを作るよりも、情報をデザインする事の方が大事に。
井: 情報の関係性の方が大事だよと。
ウェブ情報アーキテクチャ、HCD、デザイン思考
長: Webの情報アーキテクチャと言っても、この4階層しかなくて。
(画面に表示: エコシステム/エンタープライズ情報アーキテクチャ/
サイトストラクチャ/グラフィックデザイン)
グラフィックデザイン - サイトストラクチャがある。
その上にエンタープライズ情報アーキテクチャがある。
井庭研の上に慶応のWebサイトがある。各製品のブランディングの
上に企業のブランディングのレイヤーがある。
また、さらに現在のWebサイト作りでは、Google に検索される事を
前提に設計される。どう活かされるか、ということも含めて全体を
設計する。ウェブエコシステム。
まさに Powers of Ten 的な世界でもありますけど。
ウェブサイトのナビゲーションをどうするとか、ラベルをどうするとか
サイトの内容が予想できるようなラベルの設計が必要だとか。
作ったり適用しながらやっています。
How Buildings Learn スチュワードブラント
How Buildings Learn: What Happens After They're Built
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変わりにくいものから変わるものまでレイヤーを分けて。
ウェブサイトのドメインネームは変えにくいけど、ページのデザインは
変えやすい。最近では適応型といって、いくつものパターンを作って
一番生き残るものを残していくという、遺伝的アルゴリズムのようなもの
もウェブの世界では使われている。
ユーザー体験デザインというものをやっている。
これまでは、モノをデザインしていたのを、利用者はどう使うのか、
利用文脈はどうなのか、ハッピーにしたいのか、急いでいるのか、
系全体を設計するという。
考え方としてコレがどうあるか、というよりはどう使っていくか、
デザインするか、ということ。
ISO9241-210 という形で標準化されている。
「HCD (Human Centered Design)」デザイナーのエゴを押し付ける
のではなく。利用者の観察をして...
井: 長谷川さんは実際にHCDをやっている。
長: デザイン思考というのはIDEOが提唱していて、
デザイナーは多かれ少なかれ、HCDをやっている。
ビジネスマンがデザインの思考をやらなきゃいけないよ、ということで
提唱している。
企業としてもこういう事をレクチャーしながらデザインをやっていく
井: プロセスとしてより抽象化、一般化している...
長: ビジネスでも使おうよというのがデザイン思考ですね。
多かれ少なかれデザインの分野ではやっていた。
プロトタイプをして見えるようにしないと善し悪し判断できないよ
というのはやってなかった。
井: 相見積もり3つとれ、というのはやってるけど、
3つプロトタイプ作れ、というのはやってなかった。
長: そのときに、設計によるアウトプットは、
画面デザインとかはわかりやすいんだけど、
評価は評価レポートでわかりやすいんだけど、
利用者の観察はその場に行かないとわからなかったり、
案が3案あってもその経緯が共有できなかったりして。
デザイン会社がこういう風にできましたと3案だすのではなくて、
ワークショップで一緒に考えるとか、フィールド調査に一緒に
行ってもらって、抽象化する作業をいっしょにやってもらうと、
工程を共有することでわかってもらえるという教育効果も
狙える。
デザインとしては現在では難しい問題で、
向こう(発注者)もインプットを簡単に出せない状況になっている。
単純にRFPで要求を厳密に記述できない。
発注側だけがリスクをとる形にしてもあまり幸せにならない。
前提とする要因がリニアに与えられるものではなく、絡まっている
ことなので、そうしないと、品質をあげられない。
ワークショップ型の例としては、
情報設計の中でサイトストラクチャーを作っていくのですが、
ツリー構造をかいていくんだけど、正直これを見せられても
なんとなくおさまってるんだね、ということはわかっても、
通常我々が目にしているイメージからは引いて見ているので、
私はこの世界で10年やっていますが、それでもこれを読み取るのは
難しくって。普通の人が見るのは至難の業。
その場では、いいじゃん、となるが、あとあとこうじゃなかったという
話になる。
この段階で決めうる事はやっておきたいのだけど、
なかなかそうはいかない。
Webサイトのページをだいたい3種類に分類した。
ポータル型、リスト型(テキスト/テキスト+サムネイル/サムネイル)、
コンテンツ型
これをぺたぺたはってサイトストラクチャのワークショップが
できるようになった。
白紙のポストイットをつかっていたのだけど、それまでは、
白紙の中のものの想像にぶれがあって。このカードにはタイトルだけは
書けるようになっていて。
あと白紙だと、いろいろ書き込めるので、細かい事まで書いてしまう
人もいて。今は構造の議論をしたいのに。なので、これ以上は書くな、
という制約も入れている。
一緒にワークショップすると、ビジネスサイドとしても、
別のページに分けたいとか、そういう主体性を持った意見が出てくる。
「半分出来上がったものに口を出されるのがいかにつらいかわかっているので」
井: 設計図もらっても素人だとわかんないですよね。
設計段階ってとても重要で、そこで細かい事がきまっていく。
長: 実際に自分の家を設計するときにもやりたくなっちゃって。
cooperative house というアプローチがあって、
内装とかは自由に変えられて、建築家のアプローチを見ながら
決めていく事ができる。
建築家というのも、最初かなり抽象度が高くて、施主のひとは
ディテールの事しかわからないから、この段階で提案しても
わからない。なのである程度詳細になってから持っていくと、
施主が口を出す。この段階で口を出しても調和を乱す事にしか
ならなくって。大きな方針に口を出すべきで、小さな事は
プロに調整を任せた方がいいんだけど。
こういう仕事をしているので、半分出来上がったものに口を
出されるのがいかにつらいかわかっているのでw。
何を目的にするかわかっていない段階でやってみようということ
がWebの場合が多くって。
その場合は、デザインの方にビジネスの人を引っ張ってくるという
ことをしないと。議論のためのツールをつくっていかないとと。
井: プロセスはある。そこを支えるツールを安く手に入るものを
つかってやっているんだけど。
長: ラーニングパターン等のアプローチをみてもわかるように、
このカードにあるようなパターンを抽出するやりかたも
合宿していろいろと。
意味的なもので分けるパターンとかも作ってみたんだけど、
結局、表現型のパターンになったんです。
井: 具体的に使った例はありますか?
長: うちのスタッフはいまこれをみんな持ち歩いているので、
いまのサイトはこう使ってますよね、ということを
ぺたぺたと貼りながらできる
プレゼンテーションパターンはプロでない学生が書いた事に意味がある
井: 最近プレゼンテーションパターンを作るプロセスで、
僕らは最初ブレインストーミングをしながらやっていて、
KJ法をしながらやっていく。
KJ法って日本的だなと。
近さの定義が曖昧なままでも近さを議論していく。
海外ではブレインストーミングをやったあとも、
そのまま案をまとめるのは各人がまとめる。
集約思考を間主観的にやっていくというのは
日本的だなと。
全体像を作ったというのがとても重要で。
なぜかというと、そのメンバーが感じている
いいプレゼンテーションの全体像はこういうものだ
ということが見られる。
一度全部あげるというのがとても大切で。
今後改訂するとしても、10個20個足すということは
ないと思う。それは全体像が変わってしまうから。
プレゼンテーションのプロで作ってもいいと思うのだけど、
学部生、つまりユーザーが自分たちの言葉で作っていくのが
だいじという。それが Kent Beck がユーザーをプロジェクトに
巻き込むという事を行っているんだけど、パターンランゲージを
作るときに学部生で作る、ということにこそ意味があると
思っている。プロが作ってしまうと受け入れられない。
井庭研に入ったから作り手に偶然回った人が作るということに
意味があって。
長: パワポマジックという問題が合って。論旨は通っていないんだけど、
パワポで作って時間をかけてやっているから、そういうものかな、
と思うという。
昔接続詞を使わないように文章を書いていったら県の代表まで
なってしまって...
それまでの経験の中でなにが気持ちのいいコミュニケーションか
ということを持っていれば、プレゼンテーションのテクニックでは
なくて、産み出せるのではないかと。
井: プレゼンテーションパターンの中には、プレゼンテーションしたことが
ない人もいて。なのでプレゼンテーションを広い意味でとらえて、
自分のこだわりを出す、ということを徹底した。
僕は授業のプレゼンテーションのテクニックを全開で出すんだけど、
いろいろなものに通じる表現の話が入っていると思う
7人にインタビューする、7人で洗い出す
長: パターンランゲージを直接作るということはやらないんだけど、
同じようなプロセスを適用する事はあって、
デザインをする事ではなく、なにをデザインするべきか、という
所から入る事が多い。お宅訪問をして、どういう風にインターネット
を使うかということで、エスノグラフィ調査とか価値観を抽出する。
パターンランゲージはアクティビティを抽象化するんだけど、
僕らは現状を抽出する。何を見るかは違うんだけど。
僕らはコアにするひとをピックアップするんだけど、
普通のひとを数人と、エクストリームユーザーを入れておくと、
系全体を抽出できる。正規表現のはしにくるような人。
全部で7人。
(注: コアの人3-4人 + エクストリームを2人x2だそうです)
ファクトをKJ法のようなカードソーティングでやっていく。
そのグループがどういう人かというのを名前を付けなければ行けない
のがKJ法のポイントなんだけど。
井: ラーニングパターンを書くときには最初7人でやったんだけど、
その先に入ってくる人はペアにして14人にした。
7人というのはほんとにそうだとおもう。
長: 2時間くらいのインタビューで、実際の環境にお邪魔をするという
のが大事で。家とか、職場のその環境を見せてもらう。
机にポストイット貼っている人なのか、とか。
インタビューの手法は、contextual inqueryという手法があって、
こちらから教えてください、という手法。
普段どういう風に見始めるんですか、
なんでいまブックマークしたんですか、
などを聞いていく。ファクトカードを作っていく。ここに価値観が
ある。7人くらいにインタビューすると500枚くらいのカードになる。
そうすると系全体の価値観がだいたい抽出できる。
井: 現場大事ですよね。具体的から抽象的な事がわかる。
その人になることはできないけど、話を聞いたときにびびっとわかる。
子育てのパターンランゲージを作って発表した人がいるんですけど、
こういうパターンをどうやって作ったかというのが重要。
専業主婦のお宅に行って、育児における問題発見と問題解決を
初期パターンを書いていく、次回はそれを持ってさらにインタビューに
いくと、さらに派生パターンがとれる。
語りとパターン作成の往復をやった。
こうすると、自分で語ったときには気付かないことや、語ったときに
嘘になってしまう事がもう一回あぶり出せる。
ワーキングマザーと専業主婦でそれぞれやったんですけど、
ワーキングマザーで作ったパターンを専業主婦に見せるって
ことをすると、
「私もそうだよ」というものもあれば「これ私全然ない」ということに
なって、1人からの語りでは得られないものを得られるようになる。
パターンを書いていく事で、語りを引き出す事ができる。
リアルタイムに形式知にする試み
長: いままさにそれをやったプロジェクトのドキュメントがあって。
価値観を調査する話。抽象度の高いものをあぶり出すときに、
イメージを絵に描いてもらうようなことをやっている。
いろいろ書く人がいるんだけど、書く事で一回自分の認識を
洗い出す。状況の依存関係が複雑なときは、フローの依存関係を
その場でリアルタイムで一回見せるという事もやってしまう事もある。
パターンを整理していないという事は、整理していないという事が
重要で、整理してしまうことで学習が働いてしまって、その人の
現在の姿を切り出せなくなってしまうのだけど。学習で使う
ということはできるような気がする。
井: 竹中平蔵先生に来てもらって、聞いたそばからインタラクティブに
書き出して行く事をやってみた。
インタビューしてどんどん書き出していく。
市川力先生のインタビューでもやった。
こだわりはなんですか、伝えたい事は何ですか、
ソリューションの種を、それをしないとどうなりますか、ということで
聞き出す。
なんでこうなっちゃうんですかね、ということでフォースの部分が
明らかになっていく。
朝10時から夜10時まで12時間インタビューしてパターンを
14個洗い出していた。
自分でまとめているんだけど、フォースの話とかで聞いていくと、
新しい理解ができて、それまでは問題-解決だったんだけど、
フォースを認識するようになったり。
長: はこだて未来大であったデザイン学会の試み。
発言の要素を切り出すということを裏方としてやった。
でっかいプロジェクタにその場で相関図をつくる、ということをやった。
パネルディスカッションで。
1人の講演だとストラクチャは決まっているが、パネルディスカッション
で準備していなかったことが出てきて、むしろそこの方が
重要なんじゃないかと。
そのビジュアルの抽出をリアルタイムでやっていくことはすごくスキルが
必要で。2人作業でやっと、抽出と視覚化ができるようになった。
井: 生成、言語化、全体像の可視化(地図化) の3つは井庭研のテーマ。
プレゼンテーションパターンのイラストを複数人で書いた。
見ながらパターン名の絵と全体像みたいな絵を。
イラストボード。こういうものを作っていかないと行けない。
長: リアルタイムでやると、フィードバックかけながらやっていく事ができる。
他の人がわかるように抽象化をするときに、いまやっていることの
目的がなにかによって、結果は変わっていく。何を軸にして
まとめていくか、というところには決まった方法はまだなくて。
エスノグラフィで抽象化するときにも、一回全取っ替えしたほうが
よくなることがあって。
ウェブデザインの世界では、方法論にもとづくやり方として
ヒューリスティックスというものがあって。
モノを作るときには、問題発見解決だけではない価値観が必要
井: 問題発見解決のためにパターンランゲージを書くのだけど、
モノを作るときには問題発見解決だけではなく、
「これは美しい」とか。そこはクリエイティブランゲージ
というんだけど。
長: 3つというのが4つでもいいんだけど、15個ではだめで。
ぱっと見て概要がつかめるかどうかというのがあって。
井: それを言語化できない訳ではないと思っていて。
長: それはデザインも同じで。
井: デザインの分野での問題発見解決ではない部分、アーティストっぽい
ところを言語化できないかなと。全てを言語化する事は
できないとおもうんですけど、議論できるようになればいいかと。
デザインという言葉がビジネスの分野でも重要視されていて、
その分野について皆さんと議論していきたいと思っています。