技術評論社の傳さんからご恵贈いただきました。中小企業で内製化やIT投資のためにはじめてエンジニアを採用する方を主に想定して書かれたエンジニア採用についての本です。「2万名近いエンジニアの職務経歴書を読み、エンジニア採用の責任者として年間700人以上の社員雇用の最終決裁を判断し、約500社の経営陣と面接してきた著者が...」と帯にある通り、豊富な実例(主に失敗例)を持つ著者の方が、ズバっとえぐってくる感じの内容になっています。知らなかったことがたくさん書いてある、という意味では HARD FACTS レベルでした。
その「エンジニア採用」が不幸を生む 〜良い人材を見つけ、活躍してもらうには何が必要か?【電子書籍】[ 正道寺雅信 ]
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > ビジネス・経済・就職 > マネジメント・人材管理 > 人材管理
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ということで、各章の気になった部分を抜書きしたり、雑に補足してみます。
第1章 経営課題をエンジニア採用で解決しようとする落とし穴
この章はまず企業の経営サイドで起こりがちな問題を列挙していきます。あるあるすぎてびっくりです。「ITリテラシーすらないのに、ITビジネスを始めるためにITエンジニアを採用してしまう」「際限ない変更でコストだけがかさんでいく状況」...あるあるですね。特にソフトウェア開発を専門としない一般企業で、ソフトウェア開発の経験者とそうでない方の間で軋轢や意識の違いがあってなかなか続かない(辞めちゃう)、というのはよく聞いた気がします。ソフトウェア開発者といっても、一人でどの程度まわりを巻き込んでできるかというのはかなりその人に依存しますし、もちろん技術力にも様々な側面がありますので、うまく見抜く目利き力とか、アドバイスを受ける力も大事になってくるかなと思います。
この章でびっくりしたのは外資ファンドからのアドバイスで、IT分野への投資額を高める...ためにエンジニアの数を揃える企業の例でした。さすがに大きな企業で、一般例でもないんじゃないかと思いますが...。世の中、すごいことが起こるものです。
第2章 エンジニアの募集要項が書けない人事
この章の最初の事例はなかなか衝撃的で、現場部門が書いたJD(募集要項)にある必要要件(Javaがどうとかそういうやつ)のうち、人事部門にとってわかりにくいものを勝手に削除して公開したという話でした。この例だと「LAMP」「Web・サービス系」という文字。うーん、そこ外しちゃまずいでしょ。
他に、とにかく現場で人が足りないので数を追ってしまうダメな採用担当の話、人材紹介会社に依存しすぎる危険性について語られています。こないだスタートアップの採用の話をを聞いてきたんですけど、「採用のコツは、なるべく採用しないこと」と言い切っていてすごいなと思いました。それほど人は重要だし、フィットする人を探すのは大変なので、きちんとやっていかないといけないなと思います。
第3章 不幸になる原因はエンジニアサイドにもある
まず就職より就社したいエンジニア、つまり、ある会社に入りたい、業務はエンジニアならなんでもいい、というのが一般的な傾向だと指摘しています。確かに会社に入ってから何をするのか、という点が雑なケースって多いと思います。その会社のイメージや環境、同僚のスキルなんかに憧れて、入りたいと思うことって多いと思うんですよね。特に現在の職場であまりうまくいっていないというか、自分のイメージにあっていないと特に。
どうしてエンジニアとして就職/転職したいのか?という話が出てきます。このあたりはぼちぼちエンジニアが人あまりの状態になってきそうで、向いてない人がやっていくには厳しい業界になりつつある、ということを反映しているような気がします。技術の進歩が速い業界って大変ですね。
第4章 「どんなエンジニアが必要なのか?」「そもそも、エンジニアは必要なのか?」を判断する
ここの章の図は面白いなと思いました。エンジニアを2つに分けて考えます。
- タイプA: 自由な開発環境
- タイプB: ガバナンス最優先の開発環境
ここでタイプBの、ガバナンス優先の企業で育ったエンジニアは、プロジェクトマネージャーに向いている(そのための基本素養を身に着けている)可能性が高いそうです。そうかもしれませんね。逆に、失敗するかもしれない新規のビジネスを起こすような案件には向いていないかもしれません。
ここではアウトソースするための「発注力」を大きく取り上げています。内製システム部門を整備できるか、外注するのかについても触れられています。
同業他社との競争戦略上コストカットが重要であり、同業他社の追随を許さないシステムを導入できる企業であれば、システム部門を整備して、部門として独立させ、エンジニアが中長期に渡ってキャリアプランを描ける体制を作るべきでしょう。
コストカットのために外注に振れて結局失敗するケースを何度も聞いた気がしますので、このあたりは本当に根深い問題だなぁ、と思います。
第5章 よいエンジニアをみつけ、採用する方法
キャリア採用については、優れたエンジニアを取るための状況が変化しているそうです。経営者やCTOが採用の前面にたって、SNSなどを利用して情報を発信して、採用の最初のタッチポイントがエンジニア同士になるような時代ですよ、という話です。
SNSについては、「自社の採用向け公式SNSを開設する」という話ではありません。情報発信力のあるCTO、もしくはリーダークラスのエンジニアのSNSで情報発信し、興味のありそうなエンジニアとつながっていくのです。すぐに転職の話しにはなりませんが、エンジニア同士の人間関係を構築していくことで、信頼関係ができれば、転職の相談を受けることになります。
第6章 エンジニアを惹きつけ、働いてもらえる仕組みを作る
最後の章は根幹の部分、いかに人が来てくれる職場を作るかという話です。給与体系の見直し、残業など職場環境、評価システム、教育研修の見直しなどを幅広く取り扱っています。
様々なアイデアが語られていて、刺さる部分も多いのですが、ちょっとまとめるのにむいてないので、書籍を眺めていただければと思います。超重要なところですし。
社内で読書会したい
というわけで、なかなか得るものの多い本でしたし、社内のエンジニア採用担当の人も興味持ってくれているので、社内で読書会してみようと思います。そういうきっかけに成るとすれば、相当素晴らしい本なのではないかと思います。よかったらそのうちパブリックに勉強会しませんか?
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その「エンジニア採用」が不幸を生む ~良い人材を見つけ、活躍してもらうには何が必要か?
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