ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング 〜 よりよいデザインを生み出すストーリーの作り方と伝え方

ストーリーテリング」の本が出版されました。この本は昨年の夏あたりにアメリカではブレークしていました。アジャイルとUXを考えてる人はだいたい読んでいるっぽいです(私調べ)。

Agile2010で、共著者のホイットニーさんのセッションに参加した事もあるのですが、英語の練度が高く、ハードル高かったので、これが日本語で読めるのはとてもうれしいです。

ムーブメントの源流は、マネジメントやマーケティングの方面でのストーリーテリング(エレベータピッチ・ステートメントとかTEDとか)なのですが、そっちの本があまり訳されてないっぽいので、そういう意味でもこの本は貴重だし、UX以外の、要件定義やビジネス方面の方にもオススメしたいなー、と思っています。

たぶん、UX Tokyoの人たちが読書会やってくれると思います(無茶ぶり)。

ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング -よりよいデザインを生み出すストーリーの作り方と伝え方 -

ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング -よりよいデザインを生み出すストーリーの作り方と伝え方 -

1章:なぜストーリーなのか?
2章:UXストーリーの効果
3章:ストーリーは聞くこと、そして観察することから始まる
4章:ストーリーの倫理
5章:UXプロセスにおけるストーリー
6章:ストーリーを集める
7章:ストーリーを選択する
8章:アイデアを生むストーリーの使い方
9章:ストーリーで評価する
10章:ストーリーを共有する
11章:ストーリーをクラフトする
12章:オーディエンスに配慮する
13章:ストーリーの構成要素を組み合わせる
14章:構造とプロットを作る
15章:ストーリーの伝え方
16章:新しいことに挑戦する

序章: ストーリーテリングはなぜ重要か

2章はストーリーの概論で、スティーブ・デニングの話が参照されます。スティーブ・デニングはマーケティングナレッジマネジメント方面の方です。ユーザビリティのカンファレンスで話をしていて、このあたりが、UXの方でストーリーテリングが盛り上がってきたきっかけのようです。

3章はストーリーは「聞く+観察」から作られる、という本書の最も重要な知見が述べられます。この点は、UX/UCDとしてもっとも重要な概念です。本書では「リアリーリスニング」(ほんとに聞く) という名前でこの手法を紹介しています。

インタビューの弱点は、利用者にとっての「あたりまえ」の話はわざわざ言葉にならないという事です。ですから、直接現場に行って観察を行う事で、そういう「あたりまえ」の状況を知る事ができるわけです。

この点は、 UX の第一法則は「ユーザの声聞くべからず」 にも載ってますのでぜひどうぞ。

中盤: UXデザインプロセスに沿って、ストーリーテリングを紹介

5章から10章はユーザーエクスペリエンスデザインプロセスにおいて、ストーリーがどう利用されるか、利用していくかを記載している部分。

「UXって何ですか?」という方にも平易な説明が書いてあります。
特に、第6章にあるノート作成のテクニックが面白いです。ペルソナの元になるインタビュー結果をまとめる方法です。

個人的には、p.71 にある、直接「聞く+観察」できない場合も、ログや顧客デモの反応から発見しましょうという話が、目から鱗でした。

後半: ユーザーエクスペリエンスに携わらない方にもとても重要な話は11章からですよ

11章あたりから、ストーリーを作る話になります。
13〜15章が作って話すまでの構成に関する話。

スティーブ・デニングの"SpringBoard" はまだ日本語訳が出ていない(しかもKindle洋書も高い)ようなので、この部分の価値は高いと思います。

The Springboard (KMCI Press)

The Springboard (KMCI Press)

ストーリーテリングが経営を変える―組織変革の新しい鍵

ストーリーテリングが経営を変える―組織変革の新しい鍵

  • 作者: John Seely Brown,Katalina Groh,Laurence Prusak,Stephen Denning,高橋正泰,高井俊次
  • 出版社/メーカー: 同文舘出版
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 単行本
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私は文章書くの苦手なんですよね。この部分で紹介されているプロセスを使って、やり方を改善してみたいと思っています。

謝辞

UX Tokyoさんから声をかけていただいて、レビュアーの末席に入れていただき、献本をせしめました(すみません)。
大変貴重な機会になりました。ありがとうございます。