「ストーリーテリング」の本が出版されました。この本は昨年の夏あたりにアメリカではブレークしていました。アジャイルとUXを考えてる人はだいたい読んでいるっぽいです(私調べ)。
Agile2010で、共著者のホイットニーさんのセッションに参加した事もあるのですが、英語の練度が高く、ハードル高かったので、これが日本語で読めるのはとてもうれしいです。
ムーブメントの源流は、マネジメントやマーケティングの方面でのストーリーテリング(エレベータピッチ・ステートメントとかTEDとか)なのですが、そっちの本があまり訳されてないっぽいので、そういう意味でもこの本は貴重だし、UX以外の、要件定義やビジネス方面の方にもオススメしたいなー、と思っています。
たぶん、UX Tokyoの人たちが読書会やってくれると思います(無茶ぶり)。
ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング -よりよいデザインを生み出すストーリーの作り方と伝え方 -
- 作者: Whitney Quesenbery,Kevin Brooks,UX TOKYO
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2011/12/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1章:なぜストーリーなのか?
2章:UXストーリーの効果
3章:ストーリーは聞くこと、そして観察することから始まる
4章:ストーリーの倫理
5章:UXプロセスにおけるストーリー
6章:ストーリーを集める
7章:ストーリーを選択する
8章:アイデアを生むストーリーの使い方
9章:ストーリーで評価する
10章:ストーリーを共有する
11章:ストーリーをクラフトする
12章:オーディエンスに配慮する
13章:ストーリーの構成要素を組み合わせる
14章:構造とプロットを作る
15章:ストーリーの伝え方
16章:新しいことに挑戦する
序章: ストーリーテリングはなぜ重要か
2章はストーリーの概論で、スティーブ・デニングの話が参照されます。スティーブ・デニングはマーケティングやナレッジマネジメント方面の方です。ユーザビリティのカンファレンスで話をしていて、このあたりが、UXの方でストーリーテリングが盛り上がってきたきっかけのようです。
3章はストーリーは「聞く+観察」から作られる、という本書の最も重要な知見が述べられます。この点は、UX/UCDとしてもっとも重要な概念です。本書では「リアリーリスニング」(ほんとに聞く) という名前でこの手法を紹介しています。
インタビューの弱点は、利用者にとっての「あたりまえ」の話はわざわざ言葉にならないという事です。ですから、直接現場に行って観察を行う事で、そういう「あたりまえ」の状況を知る事ができるわけです。
この点は、 UX の第一法則は「ユーザの声聞くべからず」 にも載ってますのでぜひどうぞ。
中盤: UXデザインプロセスに沿って、ストーリーテリングを紹介
5章から10章はユーザーエクスペリエンスデザインプロセスにおいて、ストーリーがどう利用されるか、利用していくかを記載している部分。
「UXって何ですか?」という方にも平易な説明が書いてあります。
特に、第6章にあるノート作成のテクニックが面白いです。ペルソナの元になるインタビュー結果をまとめる方法です。
個人的には、p.71 にある、直接「聞く+観察」できない場合も、ログや顧客デモの反応から発見しましょうという話が、目から鱗でした。
後半: ユーザーエクスペリエンスに携わらない方にもとても重要な話は11章からですよ
11章あたりから、ストーリーを作る話になります。
13〜15章が作って話すまでの構成に関する話。
スティーブ・デニングの"SpringBoard" はまだ日本語訳が出ていない(しかもKindle洋書も高い)ようなので、この部分の価値は高いと思います。
- 作者: Stephen Denning
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 2000/10/12
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: John Seely Brown,Katalina Groh,Laurence Prusak,Stephen Denning,高橋正泰,高井俊次
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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私は文章書くの苦手なんですよね。この部分で紹介されているプロセスを使って、やり方を改善してみたいと思っています。
謝辞
UX Tokyoさんから声をかけていただいて、レビュアーの末席に入れていただき、献本をせしめました(すみません)。
大変貴重な機会になりました。ありがとうございます。