Fun! Done! Learn!とスクラムとXP

沖縄でみんなでつくった Fun! Done! Learn! が広がりをみせていて、作った人の一人としてとても嬉しいです。ちなみに私の貢献は寝坊して起きてきた朝に「いいねそれ!」って言ったことと、「Deliverは長いし、汎用性考えるとDoneのほうが使いやすそうだし、なにより英語でも日本語でも語呂がいい」って主張したくらいです。つまりだいたい私のおかげだと思っております(壮大な勘違い)。

yattom.hatenablog.com

大事なポイントは、私たち、全然教えてないのに、これだけ広まって、成果の声が届いていることです。これは、なんかすごいものを、見つけてしまったのではないかと感じています。みなさんの共通の、心のなかにあったものを、見える化できたんじゃないかと。

f:id:wayaguchi:20190223135437j:plain f:id:wayaguchi:20190223141744j:plain f:id:wayaguchi:20190223144437j:plain

このエントリは、私の心の中にあったものを、書き出してみたものです。Fun! Done! Learn! とは一体なんなのだろうか。私なりの捉え方です。(捉え方は人それぞれでよいと思います。)

KPTじゃだめなの?

私としてはKPTを否定したいつもりは1ミリもありません。第一人者である天野勝さんからお話聞いたときに「Keepで現状よかったことをちゃんと認識するのが大事」というのを聞いて、ほんとにそうだなぁ、と思っています。ProblemやTryの前に、ちゃんとKeepがあるのがいいんですよ。課題認識と改善のネタ出しは大事なんですけど、それだけでは、チームにないことばかり話してしまいます。

メンバーが自信を持って前に進むには、ちゃんと、できてることを認識して、増やしていかないといけません。チームにできることがあるから、次の仕事の依頼があるわけですし。チームの価値を、自分たちがわかってないと売れないし、誰かに言わないと勘違いしてた時に直せない。

これだけ! KPT

これだけ! KPT

 

スタート・ストップ・コンティニュー

海外の書籍では、ふりかえり手法としてスタート・ストップ・コンティニューがよく参照されていて、海外ではデファクトスタンダードなのかなと思います。やめること、続けること、始めてみること、ですね。

チームや個人の態度とかではなくて、事実としてコトを認識して、合意するのがよいところなんじゃないかと思います。犯人探しより、「問題対私たち」の状況を作って、ポジティブに対応できそう。

gamestorming.com

XPとプロジェクトファシリテーションが日本のアジャイルコミュニティを牽引してきた

日本では、2000年代前半からXPコミュニティがアジャイルコミュニティを推進してきました。また、フルのXPを入れられなくても、見える化などを進めましょうということで、プロジェクトファシリテーションと銘打って、ふりかえりやタスクかんばんを中心に普及を進めてきた、という流れがあります。

objectclub.jp

まず開発チームで、ふりかえりをやってみましょう、と。ウォーターフォールのままでも、今週やったことをちゃんとふりかえって、課題があれば解決を考えていきましょう。そこからアジャイルは始まるんじゃないでしょうか、という提案でした(と思います)。

もちろんいまでも、XPを中心にしているチームがありますし、プロジェクトファシリテーションやふりかえりを中心に普及活動されている方がいます。

www.ogis-ri.co.jp

スクラムの中で使うことを考える

で、2010年代は日本でもスクラムが普及してきまして、最近はスクラムからアジャイルに入った人たちが多いかなと思います。私がスクラムを教えたりカンファレンス運営をしている都合上、多く耳に入ってくるってだけかもしれませんけれど。

スクラムを前提として考えた時に、ふりかえり(レトロスペクティブの役割はちょっと変わるのかもしれないな、と気づきました。(いやそれは違うぞというご意見もお待ちしてます)

スクラムおさらい

スクラムではPDCAサイクルに似ていて、スプリントと呼ばれる1-4週間のサイクルを、プランニング→ワーク→レビュー→レトロスペクティブ(ふりかえり)で一周します。

  • プランニング : チームとして取り組める範囲を予想し、実施計画を立てる
  • ワーク : 仕事を進め、各プロダクトバックログ項目を完成させ、出荷判断できる状態にする (毎日デイリースクラムをして動的に再計画を行う)
  • レビュー : 成果物を関係者に見せてフィードバックをもらう、状況をアップデートしてプランを見直す
  • レトロスペクティブ : 計画、実施、フィードバックを踏まえ、チーム自身で進め方について見直す

それぞれのミーティングや役割はいろいろ決まっている(ベストプラクティスがある)のですが、目指すところは、

  • ワークの時間をなるべく中断なく、多くとって、
  • チームが自律的に作業を進められるようにし、
  • 進め方の改善もチーム自身で行うことで、
  • 顧客や組織の課題に対応できるチームを作る

ということです。作る人々(チーム)を中心にして、アウトプットを出しながら、ちゃんと育っていくようにする。 

f:id:wayaguchi:20190311044156p:plain

Ping Pong Game ピンポンゲームでスクラム体験ワークショップ - Speaker Deck

 スクラムは経験主義に基づく

スクラムでは、レトロスペクティブをやる前に、まずはプランニングをしているわけです。プランニングの完了時点までに、チームがワークに着手できる状態にします。チームはこのスプリントで自分たちが何をやろうとしていたのかを知っている前提です。

また、デイリースクラムでもやり方を話し合っていたり、レトロスペクティブ以外に、やり方を話し合うチャンスがいくつもあります。チームのコミュニケーションを密に保つのが特徴です。

そして、スクラムは「経験主義(empirical)」に基づきます。チームの実力は、前回までの スプリントの成果をもとに予想します。「チームはどうあるべき」という理想論ではなく、過去の実績値に基づいて天気予報のように先をみていこう、というのが根底にあります。速度=ベロシティの予測で、昨日の天気*1というのを聞いたことがある方も多いと思います。まずちゃんと現実を見ようよ、ということです。誰かが決めた目標値ではなく、自分たちの体温を見て、今日の体調を確認しようということです。

スクラムのレトロスペクティブで陥りがちな罠

一方で、これはスクラムのコミュニティでよく聞くのですが、「レトロスペクティブでKPTをつかっているのだけど、Problemばかりが出る。また、Tryがまったく着手されなくて残る」ということがあるようです。

この問題はチームのマンネリ化を呼んでしまうので、対策として「Tryはアクションアイテムとして必ず次にやるようにする」という話もよく聞きます。よいことと思います。自分たちでそう決めるなら、特に。

でも、なんかルールが増えていっても、あんまり楽しくない感じがします*2。なにか大事なことが言語化できてない気がする、と感じていました。

レトロスペクティブの第一法則

以前、レトロスペクティブの祖であるノーム・カースさんの第一法則を紹介しました。

どんな道をだどったにせよ、当時の知識・技術・能力・利用可能なリソース・状況の中で、みんなができる限り最高の仕事をしたはずです。それを心から信じます。 

kawaguti.hateblo.jp

これを調べた時、「これだ!」って思いました。

まずは、これを言語化したらいいと思うんです。自分たちは、ベスト尽くして、なにをやってきたのか。現状のベストの確認です。

そのあと、沖縄で生み出されたばかりの Fun! Done! Learn! に出会うわけですが、そこでも「これだ!」って思うわけです。みんな同じようなこと考えてたんですね。

自分たちがやったことにフォーカスする

改善案を考える前に、まず、現状をちゃんと見回すべきだと思います。このスプリントでなにをやってきたのか。なにが楽しかったのか (または大変だったのか)。そこからなにが学べたのか。...  シンプルにこれを見直すためのフレームワークがFun! Done! Learn! です。

そこには、感覚的なものも含め、事実しかありません。感情もまた、その時誰かが感じた事実です。実際やってみた人たちから「すごくたくさん事実が集まる!」という反響もいただきます。

そんな事実も、時間がたってしまうと記憶が風化して、あいまいな思い出に変わってしまいます。ですので、スプリントの最後にやって、まだ新鮮な記憶のうちに、共有するとよいのではないかとおもいます。

f:id:wayaguchi:20190310190240p:plain

https://speakerdeck.com/kawaguti/fun-done-learn?slide=34

ProblemもTryも仮説にすぎない 

その事実の上に、課題を見つけ、解決策を考えていくとよいはずです。私の感覚だと、事実を話し合うと、自然と課題や解決策の話も出てきます。やったことがあることには、もっとうまくやる方法のアイデアが出てくるものだと思います。

人は、学び続ける動物である。なぜそういえるかというと、人が問題を解いていたり、新しい問題の解を見極めたりする時どういうことが起きているかを詳細に観察してみると、人は、何かが少し分かってくると、その先にさらに知りたいこと、調べたいことが出てくることが多いからだ。人はなにも知らないから学ぶのではなく、何かが分かり始めてきたからこそ学ぶ、ともいえる。

(第一章 P.13-14)

教育心理学概論 (放送大学教材)

教育心理学概論 (放送大学教材)

 

だってみんな、今後もずっと付き合っていくような、自分たちの仕事なら、もっとよくしたいと考えますよね。もっと効率的で、価値が高い仕事をして、お客さんやユーザーさんに喜んでいただいて、ちゃんとお金をいただきたい、と考える。

そこを信じましょう、というのがスクラムの根底であり、アジャイルでも語られていることです。アジャイルマニフェストの12の法則に、こうあります(下段は私が作った反例です)。 

f:id:wayaguchi:20190311043631p:plain

Flipped Agile Manifest - Speaker Deck

まずは、自分たちの目で、自分たちがやってきたことをちゃんと見る。そのうえで、もっといいやり方を考えていく。この順番が大事だと思います。

ベターベターの積み重ね 

話は飛びますが、トヨタ自動車豊田章男社長が、年頭のメッセージで、トヨタの文化は「ベターベターの積み重ね」だとおっしゃっていました。これを見たとき、まさにそれだ!と思いました。ちゃんと現場をみて、自分で動いて、よりよい方法を一つ一つ試していく。スクラムでもその意識が大事なんじゃないかなと思います。このビデオとても素晴らしいので是非どうぞ。


INSIDE TOYOTA #1 豊田章男からのメッセージ ~”自分”のためにプロになれ!~

 

結論: Fun! Done! Learn! は現状のチームを把握するのにとってもいいよね!

ということで、とっちらかってますが、Fun! Done! Learn! は現状のチームを把握するのにとってもいいよね!っていう思いを書きました。今日よりも明日。今週よりも来週。仕事は続くよどこまでも。いいチームを目指していきましょう。

みなさんが、いい成果を出せることを願ってます!

 

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

 
ユーザーストーリーマッピング

ユーザーストーリーマッピング

 
ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

 

 

 

 

*1:このメタファーはXPコミュニティから来ていると聞きました

*2:そもそもスクラムなので、次にやると決めたなら、プロダクトバックログに載せるべきだとおもうのですが...。

「さよならメインストリーム」に参加した。

昨日は角さんがFacebookで共有してくれたイベントに参加してました。明治大学渡邊恵太研究室が単独で開催しているイベントで、司会も先生本人という。ほんとすごいなと思います。企業のTechConfを手作りでやってきたので共感ビシバシでお手伝いしたくてムズムズしてしまいました。中野に明治大学のキャンパスがあるってことを初めて知りましたし、素晴らしい取り組みだなと思いました。

keita-lab.jp

急に入れた予定のため、というか私が午前中仕事しなかったせいで、最初のトークセッションだけで中座してしまったのですがとても楽しめました。

深津さん「面白いもの作れる人は、鉛筆と紙があれば作れるので、鉛筆と紙を無限に供給すれば良くて、大理石とノミを提供しても...」

深津さん「共同体の箱の中で普遍的に機能するものを考えてる」

深津さん「炎上するものとかスキャンダルが評価されるシステムにすると、そういうものが評価されるんだと学んでそういうものが増える」「運営としては(よいものを)見せることが大事で、チュートリアルは副次的なもの」

深津さん「日本のメーカー言うほど技術好きじゃないよね問題。技術者は技術好きなんだけど、会社総体として技術好きじゃなかったり、技術者を大事にしてなかったり」

深津さん「酒好きかつビジネス感覚のある人がやる酒屋が必要」

 

 

メモが深津さんに寄り過ぎていて、お前どんだけ深津さん好きなんだよと...。

最後に、新聞社とかのアプリと、Noteでの取り組みはどんなところが違うのかをしつもんしたのですが「もちろん全然違います」というご回答でした。もうちょっとちゃんと質問できたら面白くできたかなと思い反省しております。

 

f:id:wayaguchi:20190309073329j:plain

f:id:wayaguchi:20190309073332j:plain

f:id:wayaguchi:20190309073336j:plain

f:id:wayaguchi:20190309073340j:plain

f:id:wayaguchi:20190309073344j:plain

 

Joy, inc. のリチャード・シェリダンさんの基調講演書き起こしが公開されました。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2018で基調講演をしていただいたRechard Sheridanさんの講演の書き起こしが、ログミーTechさんで公開されました。3回にわけて毎日更新だそうです。

logmi.jp

ネガティブイベント、官僚化、そしてシャドーIT

ネガティブイベント、つまり悪い物事が起こると、組織が反応を起こしますよね。ソフトウェア業界であれば、それは分厚い本のようなものです。文書による承認、委員会の招集、ミーティング、誰かが承認しないといけない申請書で埋め尽くされた分厚い本です。ソフトウェア開発のライフサイクルといった書類です。私たちは、カオスから脱却しないといけません。そしてその分厚い本を司るプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を設立します。

そして官僚主義に至ります。全く仕事が終わらない状態(カオス)から脱却しようとしたのに、今度は仕事を始めることすらできなくなるのです(官僚主義)。待つ必要があるからです。サイン(ハンコ)、書類の承認、委員会の会議、誰かが何かを決めることを待たねばなりません。そしてもちろん、そんな状態でも、仕事しないといけないし、終わらせないといけません。

そしてシャドーITが根を張ります。皆、物事を終わらせるために、システムの外側で作業を始めるのです。その結果、私たちはカオスと官僚主義の両方に同時に放り込まれます。

f:id:wayaguchi:20190305002140p:plain

これがまさに私の人生でした。ここでまさに、私は自分の専門分野に対して心が折れてしまったのです。

 

エクストリーム・プログラミング(XP)とデザイン思考(IDEO)との出会い

悲しみについてお話ししましょう。この業界におきるもっとも悲しい物語は、例えば非常に長時間、一生懸命働いていたのに、ある日上司が来て「この案件はキャンセルになった。もうやめだ。この仕事が世に出ることは決してないだろう。新しいプロジェクトがあるからとりかかってくれたまえ」と言われたときなどです。プロジェクトが葬られると同時に、自分の一部も消えてしまいます。

私はそういった経験をしていました。そして探求の旅を始め、この本にたどり着きました。ケント・ベック著『エクストリームプログラミング』です。

エクストリームプログラミング

エクストリームプログラミング

 

そして私は、カリフォルニアにある商業デザイン企業IDEOの動画も視聴しました。まず書面で読んでから、動画を見たのです。するとその瞬間、私の頭の中で何かがカチッとはまりました。すべてのことが突如はっきりと明快になり、私は自分のやりたいことがわかりました。 


ABC Nightline - IDEO Shopping Cart

 

オープンスペースではなく、オープンカルチャー

私たちのやり方を見学するために、世界各地から年間3千から4千人が訪れます。見学者が大きな入り口のドアをくぐると、見えるのはこの光景です。広々としたオープンな環境です。多くの見学者はオープンスペースをあまり好まず、いやがります。オープンスペースは、ソフトウェア開発の環境としては良くないのではないか、と考える人が大勢います。「リッチ、オープンスペースはうまくいかないと説く本を何冊も読んだが、なぜメンローではうまくいったのだろうか」と聞かれます。

私はこう答えます。「私たちが作ったのは、オープンスペースではありません。オープンなカルチャーです。このスペースは、私たちが根底に持つ、風通しの良さ(オープンネス)、透明性、コラボレーションといったカルチャーの価値観を反映しています。私たちの職場は騒音であふれていますが、これは働く時に立てる物音であり、週末に応援するスポーツチームの得点についておしゃべりする声ではありません。働く音なのです。

f:id:wayaguchi:20190305002326p:plain

人間とは何かという概念を拡張する

35年前、ネイスビッツはすでに現代にタイムリーなこの言葉を書いているのです。「21世紀最大の発明は、技術そのものではなく、人間とは何かという概念を拡張するものになるだろう」

この言葉は、技術を軽んじているわけではなく、人間の方がより大切であると訴えています。私たちは時にそれを忘れてしまっているように感じます。

f:id:wayaguchi:20190305002410p:plain

そこで、社内の対話を変革するためには、デジタルに頼らないことにしました。Slackでもメールでもなく、メッセージアプリでもありません。私たちの言うところの「ハイスピード・ボイス・テクノロジー」です。

 デイリースタンドアップ

毎朝10時、アラーム時計が「ボーン、ボーン」と鳴ると、全員が立ち上がり、円陣になります。デイリースタンドアップミーティングには、60人から70人が出席します。(写真を指して)全員が出席します。犬も出席します。

f:id:wayaguchi:20190305002625p:plain

バイキングの兜を持ってペアで発表する

私たちはペアで仕事をしていて、ペアで発表をするために起立します。バイキングの兜が回ってくれば、ペアのパートナーとあなたが、自分たちが今やっていることを話す番なのです。話し終われば次のペアに兜を渡します。話し終われば、さらに次のペアに兜が渡されます。兜は70人の手を渡り、全員が話し終わると、テーブルの上に戻されます。こうしてミーティングは終了します。通常30分くらいの長さです。

f:id:wayaguchi:20190305002654p:plain

 

logmi.jp

ショウ&テルで顧客に報告 (実際は顧客が報告)

メンローでは役割が逆転します。私たちが、顧客に前の週の進捗を報告するのではありません。顧客側にコンピュータとマウスを配置し、進捗中のソフトウェアをスクリーンに投影して、「顧客が」私たちの前週の作業を「メンロー社員たち」に見せ、メンローの担当者がそれを見学するのです。

f:id:wayaguchi:20190305135902j:plain

計画ゲームで顧客と協調的に計画を行う

作業は全て、インデックスカードに手書きで書き込まれます。見積は1時間単位で立てられ、カードは見積の大きさに合わせて折りたたまれます。こちらが16時間のカード、8時間カードはこれ、4時間カードはこれくらいの大きさです。大きさで判別できるようになっています。

f:id:wayaguchi:20190305140055j:plain

 実行するのは開発チーム。すべてをペアで進める

ひとたびプランが完成すれば、全員の目につく場所に貼り出されます。全ての紙片について、縦はそれぞれペアが費やした5日間の作業内容を示し、横に貼り出したひもは5日間のサイクルで現在どのあたりかを示しています。ひもは、工程が進むにつれ、時計のように毎日進みます。

f:id:wayaguchi:20190305140152j:plain

 QAチーム(実際はQAを担当するペア)が完了を評価する

メンローでは、プログラマーたちには「完了したと思う」と表現してもらいます。QAチームがチェックをしその了承を得られれば、緑の評価を得られます。緑の評価をもらえることは、プログラマーたちにとって非常に喜ばしいことです。メンローにおける「緑ドット」は、プログラマーにとって幸せと喜びの象徴です。

f:id:wayaguchi:20190305140257j:plain

 ハイテク人類学者はUXリサーチから要件定義を担う

メンローのハイテク人類学者たちは、世界にでかけて行き、相手が暮らしている環境の中で相手を観察します。トヨタの人たちの言うところの「現場へ行く」ですね。働いている現場に行く理由は、相手のワークフローや習慣、生き方の目標、働き方を表現する言語を把握するためです。

f:id:wayaguchi:20190305140412j:plain

 実験してよう!やってみて学ぼう!

だからこそ、私はみなさんに、このシンプルな言葉を覚えて帰っていただきたいのです。もし誰かがみなさんに「うちの会社ではうまく行かないだろう」と言ったら、みなさんは相手の顔を見て、「そうかもしれない。でも、実験してみよう」と言うのです。「ノーと言う前に試してみよう。何が起こるかを見てみようじゃないか」

logmi.jp

顧客やステークホルダーを巻き込むには

なぜなら、我が社ではプロジェクトを壊すものは2つあると信じています。1つ目は、「恐れ」です。恐れても、悪いニュースは無くなりません。恐れは、悪いニュースを隠してしまいます。私たちは、恐れを克服するには、問題を進行させず、迅速に対処します。

プランが遅れ気味で、顧客がカード(注:プラン作成用の手書きカード)を吟味している時には、顧客はテーブルにカードを並べながら、直に個人的に参加しているのです。カードは壁に貼り出され、5日以内にディスカッションを始めます。すると顧客は、私たちが仕事をするためには、自分たちの仕事がどれだけ大切か理解し始めます。なぜなら、顧客が仕事を終わらせないと、私たちの仕事にも影響が出るからです。

要するに、シンプルに全体を見える化するのです。顧客との新たな関係を築くことができます。言うのは簡単ですが、実際にやるとなると、非常に難しいですよね。ありがとうございました。

自分たちでやり方を変えていく

すると彼らは言いました。「赤ドットには、『停滞』や、『完了したと思う・QA待ち』など、いろいろな意味がありすぎて、赤だけでは成り立たなくなってきたのです。しかもQAで問題が見つかれば、前のカードの指示まで戻ってやり直さなくてはなりません。そこで、チームが『オレンジのドットを使う』という実験をしたのです」今では、オレンジドットが「完了したと思う、QA待ち」という意味を持つようになりました。

委員会も、大きなミーティングもありませんでした。誰かが小さなオレンジドットのシールを持って来て「オレンジドットを使ってみよう」と言ったのです。10年ほど前のことです。以来、私たちはずっとオレンジのドットシールを使い続けています。

講演資料はこちらです。 

speakerdeck.com

  

 

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

 

お試し版もあります。 

 

logmiを見直して

一年たった今見直しても、すばらしいお話だったと思います。2000-2001年ごろにちゃんと走り出している人たちがいて、ずっと工夫しながら続けてきて、当時「うちには難しいな」と思って諦めた多くの人たちにとって、背筋を伸ばさせられるトークになったのではないかと思います。でも、全然今からでもできるんじゃないかと思います。具体例もあるし、十数年分の経験を積み重ねてきたのですから。しかも飛行機に乗ってミシガンに行けば(デトロイトから30分です)、簡単に見せてくれるんです。残念ながら偉い人の北米視察コースには入ってないと思いますが。

RSGT2018では、Microsoftのエンジニア、河野通宗さんの基調講演も行われました。こちらもクラウド時代のエンジニア像として、生々しく話してくれています。LogmiTechでどうぞ!

logmi.jp

Starbucksでのデジタルトランスフォーメーション at Microsoft Build 2018

Microsoftの石坂さんが紹介してたこのビデオ。Starbucksでのデジタルトランスフォーメーションのパネルがよかったです。


Digital Transformation at Starbucks : Build 2018

 

司会はStarbucksクラウドサービスチームのリーダー Scott Bockheim氏。頭出しはこんな感じで始まります。

f:id:wayaguchi:20190302182234p:plain

今日はStarbucksのデジタルトランスフォーメーションを考えて、クラウド化を推進してきたかについて、ちょっと話します。...

技術の話をする前に、Starbucks のミッションの話をします。一杯、一人、一人の隣人に特別な体験を、というもの。...

テクノロジーチームからみると、デジタルトランスフォーメーションはその体験をもっと深めること。特別なデジタル体験を届けて、顧客にStarbucksをもっと伝える。キラキラした新しいものでも、単なる技術が出たから使う、でもない。店舗に寄ってもらったり、モバイルアプリを届けることを通じて、顧客とパートナーを第一に考え、テクノロジーを届ける。

そのあと、各担当を交えた説明が続きます。AIの時代にどう対応するかとか、DevOpsやSREを進めてきたという話。On Boarding (新しい人が参加するときの教育)プログラムをちゃんとしたとか。

f:id:wayaguchi:20190302182343p:plain

最後に聴衆を鼓舞するようなことをいいたい、ということでこう結びました。

私がこの2年で学んだことは、
「あなたのチームを見くびるな」
(Don’t underestimate your team) だ。

開発者、技術者、アナリスト... 話しに行って、どうしたいのかを伝えるんだ。あなたのチームを見くびるな。社員はやりたいんだ。支援や教育の機会があれば、社員は喜ぶ。信じられないほど、みんな走り出す。さっき「どうやったら普及をうまく進められる?」って質問があったけど、うまくいったことについて話せばいい。雪だるまみたいなものだ。あるチームを誘って、うまくいけば隣のチームもやりやすくなる。そしてサイクルを回す。機会と支援を与えて、成功や学びを得たら共有する。 … ベロシティも普及も興奮もびっくりするほど得られるよ。

 Microsoftのチームは直接顧客のところに行って、技術やプロセスの支援をしたっぽいですね。このあたりの組み方も、最近のMicrosoftという感じです。かっこいいプレゼン打ってライセンスを売る、というのではない、実際に使い続けてもらって売り上げにつなげるサブスクリプション時代の普及活動を感じられてよかったです。

ここまでちゃんといろいろやって、発表できる企業が日本でもたくさん出てきたらいいな、と思います。もちろん経営にも説明しているし、経営も理解しているということでした。

 

 

 

スクラムフェス大阪に実行委員として参加してきました

スクラムフェス大阪に実行委員として参加してきました。RSGTの雰囲気を気に入ってくれたスクラム道関西の人たち中心に、立ち上がりから実施までコンパクトに行われたカンファレンスでした。スタッフはたった13人。実行委員会は4-7人くらいで作業を進めてる。燃え上がらず、燃え尽きず、よい場所をちゃんとデリバリーする。そういうのがちょっとできた気がしました。

f:id:wayaguchi:20190225090018j:image

個人的な思いですみませんが、ちゃんとダンプしておこうかな、というのがこのエントリです。

www.scrumosaka.org

東京から実行委員会に参加しながら、なんとなく考えていたこと

第一回のスクラムギャザリング東京でCEDECにご協力いただいた縁がきっかけで田口さんのスクラム事例に感動したり、オージス藤井さんにはいろんなカンファレンスでご支援いただいたり、2011年にCopeのCSPO研修をやったり、2012年以降は楽天の大阪支社に講師として何度も呼んでもらったり、関西からRSGTに多くの人が来てくれたり、仕事面で大阪に育ててもらった部分がたくさんあります。今回は大阪で久しぶりにCopeの研修をするというタイミングもあり、楽天を辞めたばかりでいくばくかの自由な時間もあり、できることはなんでもしよう、と思ったのが今回実行委員をしたきっかけです。

そこにいる人でできない作業はない

カンファレンスの準備や運営の作業って、基本的にはそこにいる人でできないような高度の専門性を求められるものってほとんどないと思っています。カンファレンスのテーマをやりたい実行委員が普通に持っているスキルでなんとかなる。知らなくても調べればよい。時間が足りないと難しいけど、知ってさえいれば最低限は実行可能なものが多くて。かといって、それをやりたい人もいないのですが。だから、お金を支払って業者さんに手助けいただく道もあるし、やることを絞って自分たちで手作りできる範囲に抑えることもできる。大事なことは、ちゃんと選択することかなって思います。

まずは「できる範囲でやる」っていう判断がちゃんとできることが大事かなと。

f:id:wayaguchi:20190225065720p:plain

大阪の人たちが考え、RSGTの知見で補完する

RSGTはイベント業者さんに手伝っていただいたこともあるし、自分たちでやったこともあります。基本は大阪の人たちが考えるベストな方法で進めるとして、RSGTの開催を通じて知っているノウハウがあれば、お渡ししようと思いました。わざわざ大阪に行く必要も、実行委員になる必要もないと思うかもしれません。しかし、仕事でもそうですけど「わからないことは質問もできない」という人間の認知の問題がありますので、「なんでもメールで聞いて!」モデルも「次のミーティングでまとめて聞いて!」モデルもなかなかうまくいきません。初めての時こそ、同席(Sit Together)が有効で、必要と感じたらすぐ手伝える体制で横にいるのが大事かなと思います。

2019.scrumgatheringtokyo.org

自分がいなくても10年使える仕組みをちゃんと考えながら

今回、イベント業者さんは使わなかったのですが、グッズの製作や会場など、多くの関係業者さんと話をしないといけないですし、スポンサーさんや登壇者の方々にも連絡や相談が必要なことがあります。どこかにブラックボックスを作ってしまえば、来年他の誰かがやるときに問題になるかもしれない。どういうタイミングで、何を誰におねがいしないといけないのか、ちゃんと残しながら、かといって重要なコンセプト以外の議論に時間をかけずにすすめていくことを、考えながら参加しました。たぶん、大阪でずっと同じようなカンファレンスが行われることが、みんなにとってよいと思うからこそ、このカンファレンスをやってみるわけで、そこそこ成功するなら、それはたぶん、続けてほしいということになる。そうなったときに続けられないような情熱や仕組みでやってしまうと、寄付金だけ集めて逃げる詐欺業者、とまでは言わないですけど、ちょっと残念な感じがします。実行委員の人たちがやめたくなったらやめればいいんですけど、できるだけ自由な判断ができる状態を作っておきたいと思いました。

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

 
「謎の人」

恩返しの意味はあるにせよ、個人的には特にはっきりとしたメリットがあるわけではないのですが、そうなると、なんで来るの?って感じになりますよね。旅行や出張がそんな好きなわけでもないし、今回はアギレルゴで旅費を出してもらってますけど、アギレルゴがそんなに儲かるわけでもない。

メリットが明確になってから努力を傾けることは誰にでもできるので、そうではないとこに努力を傾けてこそ、世の中にとって価値があることにつながるのではないか?とちょっと思いながら、タガを外す。ただ、思い余って無理をしないこと。誰も見てないとしても、淡々と貢献する。他の人がやりそうなことでもないので、やっておけば学びも多いです。まとめると、さして深く考えてませんでした。

www.jp.agilergo.com

資金がないとしんどい

初回のカンファレンスで一番辛いのは、資金繰りだったりします。今回は東京からの支援とか、Scrum Alliance からのスポンサーとかも確定しないし、参加者も何人来てくれるのかわからないわけで、それで運営に失敗すれば、お金だけがマイナスになる。これはやったことがある人はわかると思いますが、思った以上にしんどいです。

今回はありがたいことに、かなり初期からいくつものスポンサーについていただくことができ、会場も関西大学さんにお借りすることができ、資金の面では安定した運営を行うことができました。黒字分は、法人税等を支払った上で来年の催行に回すことができます。

そのあたり、スクラムギャザリング東京を始めた2011年とはだいぶ状況が変わっているのを実感しました。心強かったです。いつもの関係先に、ちゃんとご支援をお願いするというのもできました。慣れてないと意外と難しいと思います。普段のみなさんの活動がすごくプラスに働いて、無理のないところからご支援をいただくことができたのではないかと思います。 

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

 
はじめて何かをするときに起きがちなこと

 これはScrum Fest 大阪で起きたことではないのですが、初めてアジャイルをやるとか、カンファレンスをやるところに立ち会ってきて、起きがちなことがあると思います。

  • 100対0の雑な議論が起きがち
  • 実現性のないアイデアも話が盛り上がりがち
  • やったことがある人がマウントしがち
  • 途中でも原則論でひっくり返したくなりがち
  • その結果、議論や作業の時間がなくなりがち
  • 持ち帰り作業が増えると一部の人が疲弊しがち
  • 一部の人が疲弊すると、次にやってくれなくなりがち

 作業時間内で、まず実現可能な選択肢を作り、その中からちゃんと選ぶ、というのを心がけました。リーン製品開発でいうセットベース開発に似てるかもしれません。

リーン開発の本質

リーン開発の本質

 
たくさんの笑顔をみることができたので、きっとちゃんと続く

今回は多くの笑顔をみることができました。チケットの販売も好調で席が足りないくらいでしたし、セッションもよかったし、スタッフも大変だけど次にやりたくないほどではない感じがしてます。ほっとしました。すべての関係者のみなさま、本当にありがとうございました。続きそうでよかったです。

f:id:wayaguchi:20190222202719j:plain f:id:wayaguchi:20190223093845j:plain

f:id:wayaguchi:20190223094119j:plain f:id:wayaguchi:20190223112211j:plain

f:id:wayaguchi:20190223163611j:plain f:id:wayaguchi:20190223163614j:plain

f:id:wayaguchi:20190223163628j:plain f:id:wayaguchi:20190223163624j:plain

f:id:wayaguchi:20190223163511j:plain f:id:wayaguchi:20190223181559j:plain

全員の意見が一致してよかった!

割と Fun! Done! Learn! はジェフ・パットンさんに教えてもらったこれに基づいています。

f:id:wayaguchi:20190221161605p:image

長々と説明するより、まず一旦書き出すことで、理解の差異がわかって、議論ができる。一方的な説明では時間がかかりすぎるので、同時並行・即時・インタラクティブ・フラットに質問して確かめて、必要ならアップデートしていく。欲しいのは共有文書ではなく共通理解

協調ワークショップというやり方です。

ユーザーストーリーマッピング

ユーザーストーリーマッピング

 

 



Scrum Fest Osaka 2019 前夜の竹中平蔵先生の講演がすばらしかった

Scrum Fest Osaka 2019 の前夜に同じ会場関西大学梅田キャンパスさんで竹中平蔵先生の講演があるということで、実際に客入れする環境での会場の動作をみるために、大変興味がありまして、参加させていただきました。

www.kansai-u.ac.jp

f:id:wayaguchi:20190221235448j:image

その場でとったメモを転記しておきます。メモなので正確性についてはご容赦ください。

経済には絶対の正解がない。絶対の正解がないことを考えることがすばらしい。

ここ2年の間に世界でただならぬことが起こっている。しかし日本の感度が低い。建設的な危機感を持っていきたい。

世界経済、アベノミクス、どうなるのかを考える。ダボス会議があったので、その話から。世界経済フォーラムが主催する年次総会。スイスのチューリッヒから2時間入ったスキーリゾート。2500人の世界の経済リーダーが集まる。ついていく人も含めると6-7000人の人が集まる。いろんな国が同じようなものを作りたいと言って、中国などもやっているが、Winner Takes All で、一番のところはもっと人が集まるようになる。私はダボス会議の理事をやっている。日本からは二人。私とカルロスゴーンさん。今は一人になった。今回の会議の最大の話題は安倍総理が基調講演を行ったこと。チューリヒプーチン首相と会った後に鉄道でダボス入り。ヘリコプターを断って入った。2001年に森喜朗首相の副官房長官として随行した際のアルプスの風景が忘れられないとのこと。

G20のサミットが始まったのは11年前。今年初めて日本がホスト国になる。Brexitや極右政党の台頭など、世界がどうなるかが大変きになるところだった。ダボス安倍総理は堂々たるスピーチをした。

30分くらいのスピーチで半分くらいは日本の話をした。5年前のスピーチでは岩盤規制を壊すドリルになると話した。かつて0.4まで下がっていた有効求人倍率は1.6になった。GDP世界3位の国の責務を果たしたい。

そのあとはビッグデータの話。

昨年のメルケル首相は「これからの経済競争はビッグデータの競争だ」と言い切った。アメリカにはGAFAがいる。このIT企業がものすごいビッグデータをためている。みなさんスマホで買い物をするとデジタルのデータが溜まっていく。これが第四次産業革命をうむ。安倍総理はデータをもっと利用できるようにしよう、と話した。Free Flow。ちゃんとルールに基づいてビッグデータを使えるような世界的な仕組みを作りたい。GAFAがなぜアメリカにあるか?なぜならアメリカは自由の国。規制がほとんどないのでデータをためて巨大な企業になった。中国はアメリカを締め出して、アリババやテンセントが13億人の市場をバックに大きな企業になった。ヨーロッパは規制をかけた。世界の対応がバラバラ。なので、安倍総理はそこを共通の仕組みを作ろう。格差の拡大を抑える武器になると語った。Ghost Busters ではなく Gap Busters だといった。大阪のG20から始めますよう。Osaka Track と呼びましょう。

非常に高い評価を受けたと考えたい。報道があまり伝えていないが、ホームページに概要が載っている。そのあと、非公式の昼食会があった。私が司会した。総理の横に座ったのは、Apple の Tim Cook社長。その向かいはファーウェイ社長、隣はシーメンスの社長、セールスフォースのベニオフ社長。

ゴーンさんの問題や、国際捕鯨委員会の話題が出た。日本は法の支配が確立しているので、首相といえども口を出せない。コーポレートガバナンスがの問題。私も新聞で初めて内容を知る。国際ほげ委員会(IWC)については、商業捕鯨と自然保護の両立をするために設立されたが、最近は自然保護の話ばかりで、商業捕鯨の話を提案しても受け入れられない。私たちは調査に基づいて、シロナガスクジラの数が減っていること、その原因がミンククジラが増えて餌をとることによって起こっていることをあげた。一国の総理がきちんとその話をしていることが素晴らしい。総理が帰り際に「これ、国会にもっていくと無茶苦茶になるんだよね。」ダボスと国会にギャップがある。

フィナンシャルタイムズのマーティンウルフという名物記者が、主要国の経済担当大臣が五人くらい並ぶセッションがある。私も大臣の時に登壇した。日本からは黒田総裁が最近は出ている。今回このセッションがなかった。

なぜこのセッションがなかったか?これだけアメリカと中国が対立を深めていると、経済の変動がそこに大きな影響を受ける。そのためだと思う。IMFの統計では、昨年3.8%の成長のところ今年は3.7%と見ている。大崩れはしないが減速。内閣府お統計は成長率が上がる。昨年災害があったので戻す。消費税が上がっても成長率が上がると見ている。しかしこれは楽観的にすぎると思っている。経済が大崩れすることはないと思うし、悲観的になっても仕方ないのだけど、慎重に見なければいけない。

第四次産業革命を構成する要素は5つあると思う。AI、ドローン含むロボット、IoT、ビッグデータビッグデータを活用するシェアリングエコノミー。民泊やライドシェア。日本ではタクシー業界の反対でライドシェアができていないが世界ではものすごい発展している。

第四次産業革命でただならぬことが起きていると言いました。例えば、成田の出入国。今年一年ですべてAIで行われるようになった。法務局がハンコを押していた。少し前から指紋の登録で自動化ゲートを作っていたが、現在は顔認証で三秒で確認される。iPhone Xを持っている人?私はiPhone8ですが。国家事業の最前線で顔認証を使うようになった。アリババという名前を聞いたことがないひと?いませんね。アリババはAmazon楽天のような電子市場だけでなく、AliPayという決済システムを持っている。ジャック・マーという青年が創業した企業が、12年前に香港に上場した。現在の時価総額は日本最大のトヨタの2.5倍。本社は杭州。郊外に本社が二棟立っているが一棟は隈研吾さん、一棟はGoogle本社を設計したアメリカ人建築家が設計した。アリババは、ビッグデータ人工知能を組み合わせてできることはなんでもやる、ということにした。交差点のカメラ画像を使って、交通信号の最適化を行なっている。赤信号の時間を変えた。20%混雑率低下。救急車の到達時間は半分に。世界の都市に売り込んでいる。東京には売りに来てる。まだデータを持って行かれないか不安があって買っていない。クアラルンプールは買うことを決定した。人工知能で自動運転に期待していますか?私はちょっと不安がありますが、一つ言わないといけないのは高齢者が運転するより安全なんです。日本はドライバー不足が深刻。地方の交通弱者のおじいさんお婆さんにとって、自動運転が連れて行ってくれたらどれだけいいか。ニーズはあります。日本には技術もあります。自動車、センサー、カメラ ... 技術があるのに、規制があるからできない。実験をしようにも規制があってできない。道路情報が重要だが、国道の情報は国が、県道市道地方自治体を持っている。保育園があるという情報を誰が持つか。GoogleトロントGoogle化すると宣言した。

第四次産業革命に際して、規制を変えて行かなければいけない。霞が関は何もしなかったわけではなくて、少し不幸なタイミングもあった。2011にドイツ、ハノーバー政府がInduustry4.0と行ったのが始まり。当時ドイツの中小企業はお互いにデータを隠すことをやっていた。技術者が持っている技術をデジタル化しよう。2012年にDeep Learning が出てきた。人工知能が自分で自分を賢くすることができるようになった。人間は犬を識別できるのは、親や周りにあれは犬だ犬だとなんとも教えられたからできるようになった。この識別をコンピュータができるようになるのがディープラーニング。人間はご飯も食べなきゃいけないし寝なければいけないけど、実行知能は寝てる間もどんどん学習を進める。今チェスのチャンピオンにAIが勝つ。2011年には不幸なことに東日本大震災があった。2012年からは復興をやろうということになったため、こうしたことの認知が遅れた面はあったと思う。そのあと骨太の方針などを出したが、メディアはあまり取り上げてくれない。

規制があるから難しいと言いました。道路交通法を改正して、人間が載ってなくても大丈夫にするのはちょっと大変。地域を限定したテストベッドを作りましょうということをやっている。こういうことを始めたのはイギリス。イギリスは世界で初めて法の支配を確立した国。規制の砂場、サンドボックスをイギリスは作った。なんとその3ヶ月後にシンガポールが作った。私も見学に行った。なんと日立製作所と東京三菱UFJブロックチェーンの実験をしている。中西頭取に聞いた。なぜ日本でできないんでしょうか?安倍総理に伝えたら、日本でやりましょうということになった。これが昨年採択された。重要な法律を二本出したが一本は通った。その時点でサンドボックスを作った企業は18ヶ国になっていた。遅きに失しているわけではないが。報道は伝えてくれないから知らないですよね。

中国は規制の力でビッグデータを作ったが、日本はスーパーシティという考え方で、特区でやろうということになっている。片山さつき大臣に指示がでて法律を作りなさいということになっている。グリーンフィールドとブラウンフィールド。たぶんグリーンフィールドの方がやりやすい。そこに入ると自動運転もOK。最近引越しした人いますか?とてもめんどくさい。転出届、転入届、銀行、郵便局... Tell us once といって、区役所に届ければ全て終わるということをやらないといけない。その前に個人情報を使ってもいいということを許可を取らないといけない。政府がやっていることを地方の条例が上書きできないといけない。内閣法制局が猛反対をしている。なぜか?前例がない。今度の国会は回帰が短いので通らないかもしれないけど、なんとかこの国会に提出して欲しいと言っている。提出の前には閣議決定がいる。まず政府としてこれをやりましょうという閣議決定をして欲しい。

もう一つ重要なのが働き方革命。若い人今日はいますが、リンダグラットンの Life Shiftによると100歳まで生きる時代がくる。20年間教育を受けて40年間働いて、残りはその間の蓄積で余生を過ごす。しかし90歳まで生きるとなると、途中で学び直しが必要になる。日本ではサイバーセキュリティ人材が大きく不足している。海外の人にもきてもらうんだけど、足りない。なので、学び直しが必要になる。二年間夜間の大学に通っていただいて専門家になってもらう。政府は半分くらい補助金を出す。提案したら麻生財務大臣に反対されたが、総理がやりましょうということで半分は出すことになった。学び直すことによって、給料があがる。所得税額が増えるので半分出しても9年で回収できると試算している。実は政府として効率の良い投資ということになる。また、これまで時間で仕事の評価をしてきたが、アウトカム、成果で図らなければならない。労働基準法の改正は紛糾した。

現在もアナリストや企画の人は成果で図られるべきだ、というのがあたりまえ。しかしこの国はできていない。この法案を出したら「残業代ゼロ法案」と報道された。時間で図らないのだから残業の概念もない。あと兼業を禁止している企業がある。これは誰か裁判を起こせばいいと思うんだけど、憲法違反でないかと思う。もちろん守秘義務利益相反を防ぐ必要がある。でも考えてください。人工知能の専門家が出てきたら、午前中はA株式会社、午後はB銀行、夜はC大学で教えている。というのがあたりまえになってもおかしくない。私は終身雇用を否定はしていない。先輩から後輩への知識の移転も進むし。それが必要な職種でやればよい。そうでないやり方を作っても良い。多様な働き方を認めましょう、その相互の間に制度的不平等が内容にしましょうと言っているわけです。

質問の時間を残したいので、最後に一言だけ大事なことを触れておきます。今アメリカと中国の間にあるのは貿易戦争ではない、ということを言っておきたい。最初は貿易戦争でした。中国は当初国家資本主義によってアメリカを締め出して13億人のビッグデータを作った。当初アメリカは余裕をもって見ていた。なぜなら、自由を制約しても本当のイノベーションがでてこないという余裕があったのだと思う。ここで第四次産業革命が出てきた、ビッグデータを貯めることになった。もう無視できない。NAFTAの見直しが行われた。China Clause 中国条項。中国に利するような取引をしている企業があれば、排除する。慌てたのは日本の企業。とりわけ、ソフトバンク。ファーウェイと5Gをやろうとしていた。しかし、通信三社はアメリカ企業とやると発表した。中国側のサプライテェーンに入るのか、アメリカのサプライチェーンにはいるのかを突きつけられる。これはアメリカの企業にも大きな打撃がある。これまで中国のサプライテェーンを利用してきた。日本はこれまで工夫を凝らして凌いできたが、現在のアメリカと中国の対立は深刻。高官が一言いうだけで大きく相場が動くことになった。

これまでアメリカがルールメーカーだった。日本は遅いぞと批判されながら頑張ってついてきた。しかしアメリカが消えた。日本はルールメーカにはなれないけれどルールシェイパーになろうということになった。TPPを成立させた。日本が地道にやっていることを世界が評価するようになった。

最後に一つ。昨年の感じは「災」でした。菅官房長官に聞いたら「成」だとした。昨年は労働基準法外国人労働者の受け入れ、水道法、難しいと思っていた法律が幾つも成立した。時には強引だと言われながら、昨年のうちに成立させたかった。なぜなら今年は大変な年だから。世界の経済がただでさえ大変なのに、日本の経済も揺れ動く要因がある。まずロシア。今年はプーリン首相と3回会談する予定がある。北方四島の返還。なぜ二頭先行なのか。日本は南千島の領有を返上した。国後、択捉は南千島に含まれるという説もあるので妥当かもしれない。このシナリオは鈴木宗男さんが言っていたことそのまま。

今年は統一地方選がある。衆議院4年と参議院3年の人気が重なるのが12年に一回くる。12年前は自民党が惨敗した。公明党は地方議会から立ち上がっている政党なのでとても重要。さらに今年は新しい元号になる。平成になったのは89年。数字で見たときのバブルのピーク。平成になった途端に崩壊した。7月は大阪でG20。そのあと統一地方選衆議院選挙は政権選択選挙参議院は批判が集まりやすい。自民党は一期三年2気までという規約を変jこうした。中曽根さんも小泉さんも6年でやめている。安倍総理は選挙で勝てば9年までやる可能性がある。桂太郎内閣を超えた市場最長になる。衆参同日選挙をやることで、国民の投票行動は保守的になり、野党が共闘できなくなる。しかし衆議院を解散するためには大義名分がいる。ロシアの北方四島返還の件を使おうとしていたがうまくいかなくなった。まあ理由はなんとでもつけられるものかもしれないが。

カジノ管理委員会というものができた。カジノ業界の人の日本を見つめる目がすごい。G7で日本だけがカジノをもっていない。1兆円プロジェクトなので、血眼になっている。収益の15%は国、地方自治体は15%に渡す。これは地方交付税に影響しない。三社のゲーマーを選択するが、すべてアメリカでいくのか、一つ中国を入れるのか。そのあとラグビーW杯、そして消費税増税元号が変わる今年、様々なことが起きるのでいろんなことを考えていただきたい。

平成の30年はどういう時代だったと思いますか?失われた30年?わたしはまだらな30年だと思います。経済統計は悪くなりましたが、私たちのデジタルライフはものすごくよくなった。東京と大阪の都市開発がよくなった。これだけ開発が進んでいるのに大気汚染がない。

この30年の間にアメリカの人口は30%増えたが日本は横ばい。実は人材の取り合いをしていた。日本だけが背を向けていた。アインシュタインが言っている最強の理論とは、複利計算。1.2の30乗は倍になる。

以上、時折不正確なメモになっていると思いますがご容赦ください。

平成の教訓 改革と愚策の30年 (PHP新書)

平成の教訓 改革と愚策の30年 (PHP新書)

 

 

すばらしかった!明日も頑張ります。

前説の先生のご説明から大変にクオリティが高く、さすが大阪、しゃべくりが素晴らしいな、と思いました。竹中先生も和歌山の高校とのことで、関西の文化おそるべしです。

明日もScrum Fest Osakaで、きっとたくさんの素晴らしいトークが聞けることでしょう。私はワークショップなのでしゃべくりはあまりありません。

confengine.com

confengine.com

というわけで、明日も明後日もよろしくお願いいたします。