100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著 君のために選んだ1冊 〜 イノベーションの達人! / The Ten Faces of Innovation

デブサミ10周年企画ということで、100人の筆者に一冊ずつ紹介してもらうという企画に、なぜがお声かけいただきましたので、申し訳ない気持ちを押し殺しつつ、書きました。ごめんなさい。

100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著 君のために選んだ1冊

100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著 君のために選んだ1冊

自分の分の原稿は公開してよいらしいので、こちらに公開します。

私の原稿

ハーバードビジネススクールクレイトン・クリステンセン教授は 『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)』で、持続的イノベーションと破壊的イノベーションの2つを定義しました。持続的イノベーションとは、小規模な改善の繰り返しです。効率を改善し、コストを下げ、顧客の要望に応え続けることで、企業の競争力を維持します。しかし、長い年月のうちには、根本的な仕組みの変化をもたらす破壊的イノベーションによって、業界を牽引する企業が交替することがあります。昨今では、iPhoneから始まったスマートフォンの普及によって携帯電話の業界は一変しました。AppStoreによって多くのソフトウェア開発者が参入する事で、私たちの生活スタイルにも影響を及ぼすサービスの激変が起きています。

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

The Ten Faces of Innovation: IDEO's Strategies for Defeating the Devil's Advocate and Driving Creativity Throughout Your Organization

The Ten Faces of Innovation: IDEO's Strategies for Defeating the Devil's Advocate and Driving Creativity Throughout Your Organization

サービスを提供する側からすれば、この激変はチャンスであり、ピンチでもあります。既存の組織において、どのようにイノベーションを生み出していくことができるでしょうか? 新しい組織を作る際に、どのような人を集めていけばいいでしょうか? あなた自身は、どのように行動していったらいいでしょうか? 本書では、この問いに答えるべく、イノベーションに必要な10つのキャラクターを紹介しています。

情報を収集するキャラクター

まず、情報を収集する3つのキャラクターがいます。

人類学者」は人間を観察・分析をする適性/スキルを持った人です。現場にあって毎日の細かい変化やイライラに気付いたり、質問を通じて人の喜ぶ点や苦痛になる点を探し出します。彼らはイノベーションにつながるアイデアの源泉を、体験の視点から提供します。

実験者」はどんどん新しいアイデアを試していく人です。アイデアスケッチやプロトタイピングを通じて、アイデアを見える形にし、その成功の可能性を見える化します。

花粉の運び手」は、異なる分野の人々を結びつけ、新しい発見を誘発します。勉強会を開いたり、議論が起きるような場を作ったり。専門性と広範の両方、T字型の知識を持ち、領域を飛び越えてコミュニケーションしていきます。

土台を作るキャラクター

続いて、土台をつくる3つのキャラクターです。

ハードル選手」は障害に打ち勝つ努力を行う人です。社内の圧力や官僚主義、失敗の恐怖に打ち勝って、執念深くかつ柔軟に前進します。

コラボレーター」は、イノベーションを生み出すのに必要な多様な専門性や個性を、チームとしての協調作業に導くよう心を砕きます。時に反対者すら、忍耐強く味方につけます。

監督」はブレインストーミングからプロトタイピングに到るプロセスを駆動し、ゴールの仮説を定義し、成果を促します。

成果を出すキャラクター

最後の4つは成果を出すキャラクターです。

経験デザイナー」は人々の新たな経験を設計します。

舞台装置家」は場作りをします。

介護人」は優れた顧客サービスを設計します。

語り部」はストーリーを用いて価値を伝えられるようにします。

あなた自身の適正を考え、仲間をみつけ、育む

これら10のキャラクターを手がかりに、あなた自身の適性を伸ばし、同僚の隠れた才能を発見していってみてはいかがでしょうか。周りが変化するには3年かかるかもしれませんが、3年後に変わっているためには、今始めなければ間に合いません。

本書では、まず第一に、あいまいな常識に基づく安易な批判をやめることの重要性を説いています。イノベーションが生まれないと嘆く一方で、安易な批判によって大量のアイデアの卵をつぶしていることがあるのです。事前の合意より、アイデアを形にすることが重要です。

許可を求めるな、謝罪せよ