本書はトヨタ生産方式(リーン)の生みの親として世界的に有名な、大野耐一氏の数少ない著書の一つだ。アジャイル開発の文脈では常識になっているし、リーンスタートアップの講演をする際エリック・リースは必ず大野さんの名前を参照する。
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何年か前に図書館で借りて読んだのを記憶しているが、今回購入して読み直した。当時はトヨタウェイとか大野さんとか、あまりソフトウェアに関係ないよなー、と思っていたのだけれど、この本を読んだあたりから雰囲気が変わったと思う。トヨタウェイは未だに買ってません(借りて読んだけど)。
一時間かかってこれを作り出したところに、案に相違してほかのものがいるなんてこられるとジャスト・イン・タイムにならんじゃ困る。したがってロットを小さくして行こう。(中略) だとかということが、やらざるをええんようになってきたというわけだ。 (P.113-114)
このあたりは、テストの自動化やリリースパイプラインの縮小に通じる話だなぁと思う。スプリントの中でできる限りの品質確認までできるようになるべく工夫を凝らすというのが大事だ。
現場で何かやらせようと思っても、その当時は、日産はどうやっておるんだとか、こんなやり方はどこでやっておるんだということを現場の連中は言うんで、これはどこもやっておらんかもしれん、あるいはやっておるかもしれんけれど、私は見てもおらんし、とにかくこれはもう大野方式でやるんだということで、三十年頃まではとにかく大野方式で、一つ間違ったらこっちは腹切らにゃならんなというつもりでやってきた。その間には大分いろいろ、抵抗が多いのはこれは当たり前であるし、とにかく上の人もわからん。実際の作業者はもっとわからん。こんなことをやっておって会社つぶれやせんかという心配がみんなにあった。しかしそいつをやりおおせにゃ日本の自動車産業というのは成り立たんのじゃないかというつもりでやってきた。(P.115)
このあたり、他社の実績を探したがるのは戦後、昭和30年代の日本でも同じだったというところで、勇気がわく。
これは具合のいいことに、トヨタ・ド・ブラジルのほうは、監督者は日本人にやらした。なんかこっちが確信を持って言うとやれるもんだと思っちゃうんだな。日本の会社だと、同じこと言ったって、そんなこと言うけれども、実際できるかというのがあるんだけれども、ブラジルで、日本からヒゲ生やしたやつが威張ったやつが来て、やれって言うとやれると思ってやるのと、日本で、やれんと思ってやらんでおるのとは、これはもうえらい違いになってくる。(P.123)
この点は認定スクラムマスター研修で海外の偉い人が来て話すのと似ているのかもしれない(笑)。
正直、日本語が読めてよかったなー、と思う。大野さんの言葉をそのまま理解できるのは、ありがたいことだ。独特の三河弁的なニュアンスが分かるのも、ラッキーだ。