リサとジャネットの Agile Testing Condensed という短い書籍があるんですけど、これの翻訳をお手伝いしました。権利周りの調整のお手伝いと、翻訳レビューです。
アジャイルテスティングという、日本ではそんなに盛り上がっていない分野がありまして。アジャイル時代にどのように品質を担保するのか、QAやテスターはどのように関わっていくのか、非常に大事なんですけど、なぜか日本ではTDD(テスト駆動開発)やテスト自動化についての注目に比べても、今ひとつ盛り上がっていない感じがします。惜しいことです。
Agile testing is a software testing practice that follows the principles of agile software development. Agile testing involves all members of a cross-functional agile team, with special expertise contributed by testers, to ensure delivering the business value desired by the customer at frequent intervals, working at a sustainable pace. Specification by example is used to capture examples of desired and undesired behavior and guide coding.
アジャイルテストは、アジャイルソフトウェア開発の原則に従ったソフトウェアテストの実践です。アジャイルテストは、顧客が望むビジネス価値を頻繁に提供することを確実にするために、テスターが提供する特別な専門知識を含め、職能横断的なアジャイルチームのすべてのメンバーが関与し、持続的なペースで作業します。例示による仕様(Specification by Example)は、望ましい動作と望ましくない動作の例を捕捉し、コーディングのガイドとするために使用されます。
ジャネットとリサの本は最初が2009年です。これは同年のうちに当時IBMの榊原さん監訳で、IBMのQAの人たちが翻訳されたと聞いています。
日本語訳はこちら。
実践アジャイルテスト テスターとアジャイルチームのための実践ガイド (IT Architects' Archiveソフトウェア開発の実践)
- 作者:Janet Gregory,Lisa Crispin
- 発売日: 2009/11/28
- メディア: 大型本
で、この本の白眉は第5部です。
これは出版後しばらくして、私が個人的にジャネットを知り合って、読書会に参加するようになって知りました。世の中で受け入れられていたのは第4部以前の部分。テスト自動化の方法の分類や、アジャイルテスティング四象限の話でした。
第5部はストーリー仕立てになっていて、どのようにPOと開発者とテスト技術者がイテレーション(反復)を回していくかという部分で、実際にインデックスカードがバンバンでてきて、どのタイミングでどういった粒度で話し合うのかが克明に表現されていました。(ちょっと訳は難しかったようで、ちょいちょい誤訳を見つけましたので正誤表を翔泳社さんに載せていただきました。)
実はこの本のジャネットと、アジャイルサムライのジョナサンにはカナダで深い関わりがあり、双方の本に名前が出てきます。XP/TDDのコーチであったジョナサンがプロジェクトに呼ばれたときに、POがジャネットで、ジャネットはQA出身でした。そこで、ジョナサンがジャネットに言ったのが「XPでやるからQAいらないよ」。いやそんなことはないはず、というジャネットの思いから(リサと一緒に)アジャイルテスティングコミュニティが生まれ、アジャイルテスティングの本につながっていきます。
その後、ジョナサンはSpotifyで初期はアジャイルコーチ、そのあとエンジニアとして働くことになるのですが、その間にWebでのテストについての入門書を書いています。
ジャネット来日に合わせてトークショーも行いました。
その後、続編である More Agile Testing が出版されました。BDDや Specification by Exampleなど、さまざまな技法がコミュニティでは開発されてきたので、そのあたりをフォローアップした本になっています。この本はまた読書会で読み進めています。
で、2冊となると重いので、名刺代わりに配るにはちょっとかさばる。ということで、薄い本を作った、というのが最初に触れた Agile Testing Condenced です。薄いからといって網羅性は落ちてなくて、むしろ具体的なところは別の資料であたるわ、っていう人には必要十分かもしれません。
この本の中で言及されているのですが、BDDの人たちがやっている、カードを使ってテストを洗い出す技法が Example Mapping です。これも風間さんが訳してくれてますので、こちらをご覧ください。この記事のレビューもお手伝いしております。
商業的なソフトウェアではもちろんテストが重要です。価値に直結します。ですので、こうした議論を適切にアップデートしていく必要があると思います。....頑張りましょう。