電子書籍の時代になって、IT専門書についてのあたらしい形態がありうるのでは、というお話を書きます。
電子書籍の特徴
- ページ数が大きくなっても物理的には重くならない
- 購入後にバージョンアップができる(ことがある)
- 価格変動が可能 (再販制でないので)
- 日本の書籍流通でなくても、日本の書籍マーケットにリーチ可能 (ターゲットのリテラシーによる)
日本におけるIT専門書の特徴
- 洋書の和訳が多い (私も欲しい)
- 内容が有効である時間が短い (進歩が速いので)
- ロットが小さいので、洋書で出版可能なニーズのある本でも、和書にできる可能性が少ないものが多い
- 出版不況なので、出版社もリスクを冒せず、一発必中主義になりそうな感じがする
- じゃあ、洋書読もうよ、というほどに英語に自信がない
- しかも、洋書を買って翻訳版が出ると両方買うことになって、なんか損した気がする
- 訳しづらく、英語の方を見た方が早い文章というのも、あるだろう。
- 訳しづらいところをがんばって日本語に訳してくれたのに、「翻訳がだめ」といわれる訳者の人もうかばれない
- 英語の単語(専門用語とか)をGoogleやWikipediaとかで調べたくても、日本語の単語しか載ってなかったりする
実務家による翻訳を引き出し、安いコストで、原著とともに流通させたい
- 原著に日本語メモをつけて流通させる
- 原著の関係者は原著が売れるのと同じ効果を得る
- 日本語の関係者は日本語化部分について対価を得る
- 電子書籍として出版すれば、本が巨大になっても、そんなにデメリットはない
- 翻訳は100%欲しいわけではない気もするので、20%でも出版してしまう
- O'railly の Safari books で執筆中の本が買えるのと同じような感覚
- とにかく早く欲しい、こともありますし。
- 訳したいところだけ訳して出版し、要望にもとづいて訳を追加
- 最初は安く、訳を追加したらその分値段を上げていく
- 最初に買っておけば追加コストなしで追加訳を得られる
- アーリーアダプターには、もしかすると利得がある
- 最初にたくさん売れると、残りを訳す気合いも入る
- 翻訳者のモチベーションを保つためにフィードバックを利用する
- ある程度売れるまでは、続きを訳さない自由がある
- できればほかの人も翻訳に参加できるようなコミュニティを翻訳主体にしたい
- 日本語版の編集者の必要スキル
- 海外の著者や出版社と話す能力
- 日本の翻訳コミュニティを組織する能力
- 電子書籍に関する知識
- うれしいこと
- 技術を勉強している人がどんどん翻訳をするようになる
- 英語も日本語も明白なので、翻訳スキルが明らかになって勉強しやすい(オープン革命)
- 翻訳をした人は小遣いを得られる
- 英語を直接読む人も徐々に増えていくだろう
補足
- 日本語以外でも同じような問題を抱えている言語には適用可能
- 英語以外の言語の書物に英語ノートを付ける形態はかなりニーズがありそう
- この形態は、IT専門書の裾野を広げ、日本語を増やすことを期待している。
- 日本語版の翻訳書を減らすことにはならないと想像している(責任は持てない)。
以上、Unicode/UTF-8普及後のソフトウェアの流通方法から発想しましたので、私以外も何人も思いついていると思われますが、公知にしておいた方が、同じ考えの人が動きやすいだろうということで、公知にしておきます。特許とかについては調べてませんので、実際にやろうとするとそのあたりで問題が起こる可能性はあります。あしからず。
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しばらく温めていたアイデアを、昨日、EMZero AgileUX特集号を共著させていただいた、人机交互論の樽本徹也さんにぶつけてみました。「それはいいね!」という話で盛り上がりました。ありがとうございます。