難しい変革を擁護する / IN DEFENSE OF MAKING HARD CHANGES by マイク・コーン

この文章はMike Cohn さんの原文を、@kawaguti が翻訳したものです。誤訳などありましたら、ご指摘をいただけると助かります。
[原文] IN DEFENSE OF MAKING HARD CHANGES by Mike Cohn*1

難しい変革を擁護する / IN DEFENSE OF MAKING HARD CHANGES by Mike Cohn

このごろ「大変な組織変革(organizational change)を必要としないので、Kanban は Scrum より優れている」という主張を展開する文書をいくつか読んだ。私の知るかぎりでは、デイヴィッド・アンダーソンの書いたいくつかの文書からこの議論がはじまっている。"Kanban: Successful Evolutionary Change For Your Technology Business." もここに含まれる。そのアイデアはこうだ -- 「仕掛中(WIP: work-in-progress) を計測することから始めよう。次に、仕掛中を少なくするように小さな変化を」。これは一見、典型的な Scrum適用よりも、優れているようにみえる。典型的なScrum適用は、組織変革が必要となる点が特徴だからだ。

ふむ、確かに、活動が十分に最適化されていて、一見変化は必要なさそうな組織ならば、その組織のソフトウェア開発の方法を変化させようとは思わないかもしれない。しかし「組織変革をしなくても導入できるような手法の方が優れている」という考え方はちょっと行き過ぎで、マーケティング用の売り文句のような印象をうける。Scrum コミュニティのほとんどの人々のよい点は、みんなオープンに「変化は難しい」と言っていることだ。実際、私のScrumのクラスでは、私が「Scrum の約束」と呼んでいる点を、参加者に注意喚起している。「Scrumを適用しようとする者はいずれ、変化の難しさに涙を浮かべてオフィスに向かう日が来る。」というものだ。なぜなら、Scrumは問題を解決するものではなく、問題を明らかにし、我々の目の前に突きつけるものだからだ。その上で、問題を解決するために頑張っていく。

思い起こされるのは、心臓の4重のバイパス手術を受けた私の父を、手術の数年後に見舞ったときのことだ。医師は低脂肪の食事を心がける必要があると注意していた。父は低脂肪ダイエットをきちんとこなしたのだが、数ヶ月後に医師の診察を受けたところ、驚くほど体重が増えてしまった。

私が父の元を訪れてすぐ、その謎は解明された。父は台所いっぱいに無脂肪のマフィンとケーキを置いて、箱単位で食べていた。さらに、ハーシーズのチョコレートシロップをボトルから直接かけて食べるのを楽しんでいた。父に言わせれば「なにか間違っているか?無脂肪なんだけどな?」 ... 確かに、その通りだった。

そんな父だから、手術をきっかけに食習慣を大きく変えるなんて難しいだろうな、と考えていた。しかし、最終的には食習慣を変えた。バイパス手術の後20年を経ても、父の心臓の状態はよい、と医師が言っているそうだ。

同様に、組織においても、長期的によい結果を生むためには、難しい変革をいくつか行う必要があることが多いだろう。難しい変革なしに、アジャイルになろうとするのは、チョコレートシロップをかけながら、体重を減らそうとする行為に、すごく似ている。

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*1:コメント欄にて翻訳の報告をし Thank you の返事をもらいました。